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» 2014年11月13日 08時00分 UPDATE

2015年問題の本質を探る(4):エンジニアの大量雇用とリストラの繰り返し、その解決策はあるのか (1/3)

IT業界の人材不足、「2015年問題」を解説する本連載。今回はIT企業側の事情を見ていく。開発者人材の需給に合わせ、大量雇用とリストラを繰り返してしまう構造が問題となっているが、これを解決する方法はあるのだろうか。

[井上実,M&Iコンサルティング]

連載:2015年問題の本質を探る


 本連載ではここまで、IT人材の不足を引き起こすユーザー企業側の原因とWebビジネス企業の台頭による人材への影響を見てきた。第4回となる今回は、人材を派遣するIT企業側の事情を見ていこう。

IT業界は“大量促成栽培、大量解雇”の繰り返し

 IT業界の“人材不足”というのは、今回が初めてというわけではない。

 1980年代後半から1992年までのバブル時代に、銀行の第2次オンラインシステム構築を中心とした大型開発プロジェクトが集中し、人材不足を引き起こしたこともあれば、1997年から1999年にかけ、いわゆる「2000年問題」への対応で同様の現象が発生したこともある。

 こうした人材不足に対応するため、IT企業は毎回大量に未経験人材を採用し、短期間でプログラミングができる人材に育ててユーザー企業に提供している。その結果、1989年から1991年、1997年から1998年にかけてIT開発者の数は一気に増大した。

photo 日本におけるソフトウェア業の従業員数推移。大型プロジェクト集中した1989年から1991年、1997年から1998年にかけてIT開発者の数は一気に増大したが、プロジェクトの終了とともにリストラで従業員の削減を図る企業が多かった(経済産業省「特定サービス産業実態調査」より作成)

 しかし、IT人材の需要は大型プロジェクトが終了すると急速に減少する。1992年にバブル景気が崩壊した際には、IT企業は新規採用の抑制だけでは対応できず、IT技術者のリストラに踏み切った。上図の1992年から1995年がその時期にあたる。2000年問題への対応で、1997年から1998年に大量に採用された人々も、対応の目途が立った1999年から2000年には余りだし、再びリストラが実施されたのである。

 このように、IT企業は技術者の需要に振り回され、“大量促成栽培”から“大量解雇”という流れを繰り返しているのが現状だ。これを繰り返していては、IT技術者のスキルアップが図れるはずもなく、1人で仕事ができないレベルの人が50%近くも占めるという状態にあるという。

photo 日本におけるIT技術者のスキルレベル。ITスキル研究フォーラムが定めるスキルレベルで「レベル2」以下、つまり1人で仕事ができないレベルの人が50%以上を占めている

海外需要には対応できない常駐受託開発

 IT企業が日本国内のIT需要に振り回されないようにするためには、海外へ市場を拡大するのが有効な手段となる。日本と海外のIT需要期の重なりが少なければ、業務量の平準化が図れ、従業員を安定的に維持できるためだ。

 しかし、日本のIT企業のうち約4割は海外展開をしておらず、海外売上比率が「10%未満」という企業が約6割を占める状態にある。海外のIT企業が自国以外の市場に積極的に進出している中で、なぜ日本のIT企業は海外へと進出できないのだろうか?

photo IT企業の海外展開実績。海外展開をしていないと答えた企業は全体の約4割を占めた(出典:IT人材白書2013)
photo IT企業の海外売上比率。海外売上比率が10%未満と答えた企業は58%となっている(出典:IT人材白書2013)

 その原因は「常駐型受託開発」にある。日本では、多くのIT企業のビジネスはユーザー企業に常駐して開発作業を行う、常駐型受託開発が中心だ。これを海外のクライアントで行おうとすれば、海外の顧客オフィスへ従業員を派遣することになり、出張のコストで採算が取れない可能性が高まる。

 また、派遣される従業員も高度な語学スキルが求められる。要求定義書などのドキュメントベースで開発を行う“持ち帰り型受託開発”よりも、常駐型受託開発は、現地の顧客と対面でコミュニケーションをとる機会が多くなるためだ。普段の行動や態度も顧客に見られるため、現地顧客にとって不愉快な行動をとってしまうことがないように、現地の文化や慣習を十分に理解しておくことも必要となる。

 こうした状況から、海外での常駐型受託開発ビジネスの実施は難しく、日本のIT企業の海外進出を阻害していると考えられる。

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