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» 2014年12月13日 09時00分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:「はやぶさ」に続け! 今日本の民間宇宙ビジネスが熱い

小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げ成功に日本が沸いた。これまで日本ではこうした国家主導の宇宙開発プロジェクトが中心だったが、今や民間企業ベンチャーの参入が始まっているのだ。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 2014年12月3日午後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ2」が打ち上げられた。目標の小惑星「1999 JU3」には2018年半ばに到着し、探査、サンプルを採集して2020年末ごろに地球に帰還予定だ。はやぶさは国家主導による宇宙開発プロジェクトの象徴と言えるが、日本では今、民間宇宙ビジネスも大きく盛り上がろうとしているのだ。

 今年前半には、当時の山本一太内閣府特命担当大臣(宇宙政策)の下、「新宇宙産業創造のための意見交換会」が実施された。会合にはJAXA理事長や宇宙政策委員会の部会長に加え、本分野の新規参入企業や民間宇宙ベンチャーの経営者が集まり、産業活性化に向けて議論を交わした。

 従来、日本の宇宙産業は、国と特定の大企業が推進してきた。しかし、ここ5〜6年の間に、民間企業の新規参入やベンチャーの創業が相次いでいる。彼らは小型化や量産化による宇宙システムの低コスト化、あるいはロボット技術やエレクトロニクス技術の利活用で宇宙産業におけるイノベーションを狙っている。今回の連載ではいくつかのベンチャー企業の取り組みを紹介したい。

はやぶさ開発の経験を生かす

 アクセルスペース(代表取締役:中村友哉氏)は東京大学発の超小型衛星ベンチャーだ。以前も紹介したが、気象会社「ウェザーニューズ」と共同で北極海域の海氷観測を目的としたシステム「WNISAT-1」を製作し、来年は最新機の「WNISAT-1R」を打ち上げ予定だ。今年11月には地球観測衛星「ほどよし1号機」も打ち上げており、実績を重ねている。

 ほどよし1号機は、内閣府の最先端研究開発支援プログラム「ほどよし信頼性工学」を適用した衛星であり、低コストと短期開発が特徴だ。同社の野尻悠太取締役も「大学発で小さく低コストなものから始めてきた」と語る。今後は「GRUS」と呼ばれる複数衛星による地球観測網構築を計画しており、安価で即応性の高い地球観測画像の利活用を目指すとともに、画像解析分野にも投資していくという。

 ispace(代表取締役:袴田武史氏)は、民間月面無人探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参加するチーム「ハクト」の運営母体会社だ。航空宇宙工学で有名な米ジョージア工科大学院卒の袴田氏が経営面を、「はやぶさ」の開発にもかかわる東北大学の吉田和哉教授が技術面をリードしており、開発中のローバーはレーザーレンジファインダーなどを活用した自律走行および小型化の技術が満載だ。

 XPRIZEの先に、長期的に目指すのは惑星探査ビジネスだ。袴田氏は「ハクトで実証する技術を活用し、将来的には何百台規模の超小型宇宙ロボットを惑星に展開して、人類が宇宙生活圏を作るための探査や資源の利活用を目指したい」と語る。米国では通称Asteroids法と呼ばれる、資源探査の法的根拠の整備も始まり、多数のベンチャーが“現代のゴールドラッシュ”を狙うなど惑星探査が活況を呈している。

宇宙のゴミ掃除するベンチャーも

 インターステラテクノロジズ(代表取締役:稲川貴大氏)は、堀江貴文氏が創業者として有名な企業で、超小型衛星を低軌道に投入するための専用ロケットを開発中だ。稲川氏は「現在、これらの衛星の打ち上げは相乗りがほとんどのため、打ち上げの時期も軌道も融通が効かず、コストも高い。解消できれば潜在需要は大きい」と語る。目標は打ち上げコストを一桁下げることだ。

 開発の肝は、枯れた安定技術を活用し、可動部の少ないシンプルな構成とすることで、量産してコストダウンを実現することだ。参考にする技術論文は1960〜70年代のサターンロケット時代のものも多い。一方で、アビオニクス(飛行のための電子機器)には技術進化の早い民生電子品を積極活用しており、例えば、姿勢制御にはMEMSジャイロセンサーを使っている。稲川氏は「15年度には準軌道に投入する1号機を打ち上げたい」と語る。

 ASTROSCALE(代表取締役:岡田光信氏)は、2014年5月に大塚製薬と「Lunar Dream Capsule Project」を発表して注目を集めた企業だ。同プロジェクトでは2015年末までに「ポカリスエット」の缶をかたどった総重量1キログラムのチタン製のカプセルを月面輸送する計画を推進しているが、同社のコア事業はスペースデブリ(ゴミ)の除去だ。

 映画「ゼロ・グラビティ」にも出てきたが、現在、地球軌道上には半径10センチ以上のデブリが約3万個(半径1センチ以下まで含めると数千万個以上)存在する。これらは弾丸の20倍のスピードで周回し、人工衛星などへの衝突の危険性が高まっている。欧州ではEUが予算をつけるなど対策が進んでいる。ASTROSCALEは独自システムによるデブリの除去を目指している。


 このように、日本でも熱を帯びつつある民間宇宙ビジネス。しかし、主だったベンチャーの数(従来からの大企業や中小企業は除く)は10社弱とまだ少ない。米国宇宙業界で過去10年に起きたNASAの商業化政策、民間投資拡大、異業種参入などのパラダイムシフトと比較すると小さい動きにとどまっている。

 ベンチャー育成は産業横断の課題ではあるが、宇宙特有の事情もある。宇宙開発における国と民間の役割分担、宇宙の商業活動を促進する法的制度の整備、打ち上げのコストおよび頻度、時期の安定性などが課題だ。こうした課題を乗り越え、民間宇宙ビジネスが次なるステージへと発展することを期待したい。

著者プロフィール

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石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、全社戦略(中計策定支援、ポートフォリオ戦略、シナリオプランニング)、事業戦略、R&D戦略、オペレーション改革等を支援。

東京大学工学部卒。主要メディアへの執筆のほか、自動車・機械・電機メーカーを対象とした講演・セミナー多数。政府系機関のワーキンググループ委員等。著書に「電気自動車が革新する企業戦略」(日経BP社09年刊、共著)

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