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» 2015年01月24日 09時00分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:宇宙ビジネス先進国の法整備はいかに進んでいるか

2015年初に政府が決定した「宇宙基本計画」では、今後10年間の宇宙関連産業の政策方針が定められた。この分野で日本の先を行く米国では、どのような政策や法整備がなされているのだろうか。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 1月9日に政府の宇宙開発戦略本部が決定した「宇宙基本計画」では、2015年から10年間の政策方針が定められ、宇宙関連産業を今後10年間で計5兆円規模に育成していくことが盛り込まれた。また、2016年をめどに民間事業者による宇宙活動を支えるための宇宙活動法案を通常国会に提出することも目指されている。

 今回は宇宙ビジネスの背景にある法律や政策に関して紹介する。なお、紹介するのはあくまで全体の一部であることをご了承いただきたい。

 これまでの連載でも述べてきたように、宇宙ビジネスが最も活況を呈しているのは米国だ。米国で宇宙の商業化が進んできた背景には、民間資金流入や関連技術進化がある。しかし、最大の要因は1980年代以降から段階的に進められてきた民間事業者による商業宇宙活動のための国内法整備であり、過去10年間で急速に進んできたNASA(National Aeronautics and Space Administration)による地球低軌道を中心とした商業化政策なのだ。

 米国の商業宇宙に関する法整備の歴史は古く、特に打ち上げに関しては、1984年の商業宇宙打ち上げ法「Commercial Space Launch Act of 1984」までさかのぼる。その後、1998年には対象を地球への再突入まで広げるなど、商業打ち上げ市場の成長に伴い、何回かの改正が行われてきた。直近の改正では、2004年に、当時開催された民間による最初の有人弾道宇宙飛行を競うコンテスト「Ansari XPRIZE」と呼応する形で、世界で初めて宇宙旅行産業を本格的に促進させる「Commercial Space Launch Amendments Act of 2004」が承認された。

 並行して、NASAはスペースシャトル退役後の国際宇宙ステーションへの打ち上げにおいて、「COTS(Commercial Orbital Transportation Services)」(2006年〜)、「CRS(Commercial Resupply Services)」(2008年〜)というプログラムで民間企業を募り、契約を交わしてきた。こうした流れの中でNASAと数十億ドルにおよぶ大型契約を勝ち取り、打ち上げ市場で一躍主役に躍り出たのが、イーロン・マスクが設立した米SpaceXである。

NASAがベンチャーを技術支援

 また、ベンチャー企業の参入が活発な衛星市場も、法整備などの歴史は古い。1984年から陸域リモートセンシングの商用化に向けた法整備が始まり、1992年に関連する政策法「Land Remote Sensing Policy Act of 1992」が制定された。1994年の大統領令で偵察衛星技術の一部民生転用を許可し、2000年代以降は、政府による民間企業からの画像長期購入契約(アンカーテナンシー)や開発支援を行うことで米Digital Globeなどの民間企業が育ってきた。

 昨今は、打ち上げコストの低下や、ITや民生電子品の進化があいまって、超小型衛星分野には米Skybox imaging、米Spire、米Planet labsなどのベンチャー企業や米GoogleなどのIT企業が参入、新旧企業の攻防が始まっている。さらに、現在では他大型衛星との相乗りが多く、打ち上げの軌道・時期などが選びにくい小型衛星のために特化した打ち上げサービス企業が多数創業しつつあるなど、ホットな市場に成長してきた。

 惑星・小惑星探査においても取り組みが進んでいる。2007年にスタートした民間による最初の月面無人探査を目指すコンテスト「Google Lunar XPRIZE」によって、米国では惑星探査を目指すベンチャーが次々と登場している。こうした中、NASAは2010年に「Innovative Lunar Demonstration Data(ILDD)」と呼ばれる月面探査にかかわるデータ購入契約を米Astrobotic Technologyや米Moon Expressなど計6社と約10億円/社結び、各社の技術開発や資金調達を支援している。

 また、将来的な資源開発を見越した小惑星探査も、活動が活発化しつつある領域である。本分野の根拠法として通称Asteroid法と呼ばれる「American Space Technology for Exploring Resource Opportunities in Deep Space Act of 2014」の議論が始まっている。具体的には、国際的義務に対応したフレームワークの作成、国の目的と整合した民間事業者による資源探査・利活用、民間事業者が採掘した資源の所有権などが検討されている。

2000年以降に創業が相次ぐ

 こうした法整備や商業化政策は、紆余曲折を経ながらも民間の投資を呼び込むことに大きく成功してきた。図1は連載第1回で紹介した米国宇宙ビジネス・プロジェクトの一覧を詳細化したものだが、打ち上げ・輸送、宇宙旅行、衛星、ISS・軌道、惑星・小惑星探査などあらゆる市場セグメントに多数の企業が存在し、2000年以降に創業した企業の数だけでも20を超えることが分かる。

 他方、日本では、民間事業者による宇宙活動を支えるための宇宙活動法がないのが現状だ。今後の技術開発や民間投資の促進、さらには将来的な日本の宇宙ビジネス発展のためにも、法整備や政策的議論がさらに前進していくことを期待したい。

<strong>図1</strong> 米国民間宇宙ビジネス・プロジェクトの広がり 図1 米国民間宇宙ビジネス・プロジェクトの広がり

著者プロフィール

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石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、全社戦略(中計策定支援、ポートフォリオ戦略、シナリオプランニング)、事業戦略、R&D戦略、オペレーション改革等を支援。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバーでもある。

東京大学工学部卒。主要メディアへの執筆のほか、自動車・機械・電機メーカーを対象とした講演・セミナー多数。政府系機関のワーキンググループ委員等。著書に「電気自動車が革新する企業戦略」(日経BP社09年刊、共著)

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