月面無人探査レースに挑戦中の日本チーム、次なる計画とは?宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)

Googleがスポンサーとなる民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」の中間賞が発表された。日本から唯一参戦しているチーム「ハクト」も受賞。2016年後半の打ち上げ計画に向けたハクトの取り組みとは――。

» 2015年02月28日 09時00分 公開
[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 この連載で以前取り上げた民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」が、2015年に入ってから大きな動きが続いている。1月26日にXPRIZE財団が計600万ドルに及ぶMilestone Prize(中間賞)の結果発表を行い、世界18チームから5チームが選定された。日本から唯一参戦しているチーム「ハクト」も受賞した。同チームは2月23日、その受賞報告と今後の打ち上げ計画に関する記者発表を日本科学未来館(江東区青海)で実施した。

 Milestone Prizeというのは、最終的な月面ミッションを成功させるための要素技術を、地上で立証することを目標に設定された。具体的にはLanding(月面着陸のための飛行制御技術)、Mobility(月面でのロボット走行技術)、Imaging(月面での映像撮影技術)の3部門があり、XPRIZE財団が組織した審判団による書類審査、各種環境試験、フィールド試験などで評価される。審判団は欧米の宇宙関連企業、宇宙研究分野の専門家、宇宙飛行システムやロボットシステムの専門家など8人で構成されている。

 議長を務めるデビッド・スワンソン氏は、米空軍に25年勤めた後に、現在は打ち上げサービス企業の米Orbital Sciencesで安全とミッション保証のシニアディレクターを務める。副議長のアラン・ウェルズ教授は英国レスター大学の名誉教授であり、同大学の宇宙研究センターの創設者だ。過去にNASA(米航空宇宙局)を始めとする宇宙ミッションに10以上かかわっており、その功績でNASAやESA(欧州宇宙機関)からも複数回表彰を受けている宇宙研究分野の先駆者だ。

 こうした専門家により選出された5チームは、ハクト以外は、米国から2チーム、ドイツとインドから1チームずつだ。米国からは米Astrobotic と米Moon Expressが選出された。Astroboticはカネーギーメロン大学発のベンチャーで、フィールドロボティクス分野の権威が技術開発を主導しており、今回3部門すべてで受賞となった。

 残りの2チームは、独Part Time Scientistsと印Team Indusだ。特にTeam Indusは全18チーム中唯一インドから参加しているチームだ。リーダーのラウル・ナラヤン氏を中心に20人強で構成されており、事業&技術アドバイザーには米Lockheed Martin、米Alcatel-Lucent、ISRO(インド宇宙研究機構)などの元シニアメンバーが名を連ねる。ランダー(月面着陸船)とローバー(月面走行車)を開発しており、打ち上げロケットは、ISROのPSLVロケットを活用する予定だ。

 インドの宇宙開発自体の歴史は1960年代にさかのぼる。ISROが1969年に設立されてから旧ソ連、欧州、米国などから積極的な技術導入を行い、近年は2008年に月探査衛星「チャンドラヤーン」の打ち上げに成功し、2014年にはアジア勢として初めて火星探査衛星「マンガルヤーン」を火星周回軌道に投入するなど、実力をつけてきた。Team Indusも「月探査にとどまらず、次世代の宇宙探査と航空技術において世界をリードするのがミッション」と掲げている。

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