ニュース
» 2015年03月21日 09時00分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:シリコンバレーVCが宇宙に巨額投資する狙いは? (1/2)

GoogleやVirgin Group、あるいはイーロン・マスクといった米国ビジネス界の著名人たち、さらにはシリコンバレーのベンチャーキャピタルがこぞって宇宙分野に投資している。その背景にあるのは――。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 米国では“宇宙ビジネスビッグバン”とも言える活況の中、ラリー・ペイジ氏、イーロン・マスク氏、ジョフ・ベゾス氏などのテクノロジー&ビジネス界の著名人や、米Google、米Qualcomm、英Virgin Groupなどの巨大企業が宇宙分野に積極投資を行っていることをこれまでの連載で紹介してきた。今回は、宇宙ビジネスに対する投資の担い手の1つである、シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)の動向を紹介したい。

 米国ではVCによる年間投資額が約2兆円以上と言われている。さらに、それと同額程度のエンジェル投資家による投資額も存在しており、日本との間には数十倍以上の差があるという。こうしたVCやエンジェル投資家の動きは宇宙分野でも目立ってきており、公開情報で分かる範囲でも過去5〜6年で累計約500億円規模の投資が宇宙ベンチャーに対してなされているのだ。

 例えば、米Space Angels Networkは、宇宙分野に特化してエンジェル投資家と起業家の橋渡しをしているネットワークだ。同社自体が直接投資を行うことはないが、宇宙ベンチャーに興味のある50人以上の投資家がネットワークに所属しており、これまでにも多数の投資案件が成立している。月面輸送サービス企業の米Astrobotic Technology、小惑星資源探査の米Planetary Resouces、小型衛星特化型ロケット製造企業の米Firefly Space Systemsなどだ。また、シードステージ、アーリーステージ、エクスパンションステージの投資段階が多いことも特徴的である。

宇宙産業の変革に期待して投資

 こうした宇宙分野への特化型ではなく、ソフトウェア、ロボット、ヘルスケア、バイオなど多数の投資ポートフォリオを持つ、いわゆるシリコンバレーのVCが宇宙ベンチャーを有望なポートフォリオの1つとして投資するケースも増えてきている。具体的な事例としては、米Khosla Ventures、米DFJ Venture、米Founders Fund、米Bessemer Venture Partnersなどによる投資実績が有名だ。

 Khosla Venturesは、米Sun Microsystemsの共同創業者であるビノッド・コースラ氏が、2004年にシリコンバレーを代表するVCの米Kleiner Perkins Caufield Byersから独立して創設したVCだ。これまで投資をしてきたポートフォリオはヘルスケア、エンタープライズ、ロボット、農業など150社以上に上る。宇宙分野では超小型衛星ベンチャーの米Skybox Imagingに投資してきたが、同社は2014年にGoogleに5億ドルで買収された。

 また、近年は小型衛星・ペイロード特化ロケット製造企業の米Rocket Labに投資している。同社への投資に関してコースラ氏は「Rocket Labの技術イノベーションにより、打ち上げコストが下がり、宇宙へのアクセスが拡大することで、宇宙産業の変革が起きる」と期待を寄せる。宇宙ベンチャーへの投資案件の数自体は限られているが、高い期待をもって投資してきたことが分かる。

宇宙開発の課題解決に向けて

 DFJ Ventureは、米Skype、米Twitter、中BaiduなどIT企業に投資してきたVCである。米フォーブス誌の認定する「Tech’s Top Investors」を過去3年受賞している同社取締役のスティーブ・ジャーベソン氏が宇宙関連投資を進めてきており、これまでにロケット製造・打ち上げ企業の米SpaceX、超小型衛星ベンチャーの米Planet Labsに多額の投資を行っている。

 ジャーベソン氏は、Planet Labsへの投資に関しては、「ソフトウェア産業として投資している。衛星事業は今後データインテグレーションとアプリケーションの勝負になると見ている。さらに、衛星によるブロードバンド環境構築も有望な投資対象だ」と語っており、宇宙ビジネスにおけるテクノロジーの転換期を見定めて積極投資をしていることがうかがえる。

 Founders Fundも宇宙ベンチャーへの投資を行っている。同社の投資ポリシーは明確であり、「科学的、技術的に、圧倒的に難易度の高い問題を解決しようとしている優秀な起業家に投資」することだ。その1つが宇宙&輸送分野である。現状の宇宙開発の課題は「巨大な輸送コスト」にあると考えており、その価格を大幅に下げることで、通信や発電などあらゆる領域で破壊的イノベーションが期待できると語る。実際、これまで投資してきたのはSpaceXおよび月面輸送サービス提供企業の米Moon Expressであるのだ。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ