企業のIoT活用を阻む“3つの障壁”(1/2 ページ)

富士通がIoT機器向けに、センシングモジュールとデータを分析するミドルウェアのパッケージ「ユビキタスウェア」を発売した。このユビキタスウェアは、企業がIoT活用をためらう「3つの障壁」を解決するソリューションだと同社はアピールしている。

» 2015年05月12日 07時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
photo 富士通が発表した業務用ヘッドマウントディスプレイ「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE ヘッドマウントディスプレイ」。搭載する多種のセンサーで利用者の状態を検知し、転倒などのトラブルがあった場合に管理者へアラートを送る機能も備える

 人、モノ、環境のあらゆる情報がデジタル化され、ネットワークにつながる――そんなIoT(Internet of Things=モノのインターネット)時代が迫ってきている。2020年にはネットワークにつながるデバイスは約500億個、デジタルデータの総量は40ゼタバイトに達する見通しで、ここに大きなビジネスチャンスが潜んでいると言われている。国内ITベンダー大手の富士通も、この“IoT時代”に向けて積極的に事業を推進している。

 「富士通は古くから“人”と“ICT”をつなげるインタフェースである、ユビキタスフロント(デバイス)に重点を置いて技術を磨いてきた。数々のセンサーから得られたデータを、お客様の役立つものにしてきた実績もある。IoTが普及する時代が来るのは歓迎だ。これから、人を中心としたセンシング技術でIoTの価値創造を行っていく」

 こう話すのは富士通 執行役員常務 ユビキタスプロダクトビジネスグループの斎藤邦彰氏だ。同社は5月11日、センシングモジュールとデータを分析するミドルウェアで構成されるソリューション「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE(ユビキタスウェア)」とユビキタスウェアを組み込んだ業務用ヘッドマウントディスプレイ「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE ヘッドマウントディスプレイ」を発表した。

 ユビキタスウェアは、IoT(Internet of Things)機器向けにデバイスやシステムに組み込み可能なパッケージとして提供するものだ。同社がPCやモバイル端末の開発で培った技術をベースにしており、さまざまなデバイスにモジュールを組み込むことで、内蔵する各種センサーから取得したデータをミドルウェア上で解析し、すぐに活用できる形でアウトプットできる。

富士通が考える、企業のIoT活用を阻む“3つの障壁”

photo 富士通 執行役員常務 ユビキタスプロダクトビジネスグループの斎藤邦彰氏

 富士通がこうしたプラットフォームを提供するのは、IoT関連のシステム構築を簡素化したいという狙いがある。「IoTをビジネスに活用しようと機運は高まっているが、実際のところはまだまだ導入が進んでいない。導入への障害となる課題があるためだ」(斎藤氏)

 斎藤氏によると、課題は大きく分けて3つに分かれるという。

 まずは、多種多様なセンサーから得られる膨大な生データを取り扱うのは難しいという技術的な難しさ。2つ目はさまざまな業種や用途に使えるため、開発規模が大きくなり、設計の共通化や横展開がしにくくなるというシステム構築の難しさだ。そして最後に、データの取り扱いにより一層の高い安全性が求められるという運用面の難しさもある。

 今回発表したユビキタスウェアは、加速度、気圧、地磁気、ジャイロ、マイクといったセンサーを搭載(オプションで心拍数、GPSセンサーも用意)するコアモジュールから送られたデータを、人の行動パターンを分析し、転倒などの異常状態を検出する「センシングミドルウェア」や、高精度な位置情報が取得できる「ロケーションミドルウェア」などで加工する仕組みを提供する。

 「一般的なセンサーは生のデータをアップロードするので、データを活用するには別途専門の解析技術が必要だった。富士通のユビキタスIoTセンサーコアは、独自のアルゴリズムで生のセンサーデータをクラウド上で分析し、“人が倒れた”“熱中症のリスクがある”といったお客様やサービスにとって意味のあるものに加工するため、すぐに行動へと移れる」(斎藤氏)

photo 富士通のユビキタスセンサーの特長

 このように技術的な難しさを取り払った上で、さらに富士通の統合型プラットフォームとの連携機能を備えることで、システム構築も容易にする。セキュリティについても、同社の「手のひら静脈認証」や「虹彩認証」をはじめとする技術群で、ユーザーの利便性を損なわずにパスワード漏えいといったリスクを防げるとしている。発表会で斎藤氏は「IoTが扱えるビジネス領域は広い。富士通はお客様のSIとしてIoT関連事業をトータルコーディネイトし、ヒューマンセントリックIoTを推進していく」とアピールした。

photo ユビキタスウェアと富士通の垂直統合型プラットフォームを連携させることで、システム構築を容易にする
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