IBMのスタートアップ支援プログラム「BlueHub」の第1期が終了。農業ERPや遺伝子解析など、新進気鋭の5チームが自身が展開するサービスの概要を説明した。
日本発、世界で活躍するスタートアップ企業を――。国内スタートアップ企業の支援は、経済成長のキーとして今や国を挙げて取り組む課題となった。起業に挑戦する人が増えるよう、政府は先進的な研究活動を対象とした支援プログラム「異能vation」など、さまざまな施策を実施している一方、通信キャリアをはじめとして、さまざまな民間企業もスタートアップ支援に取り組んでいる。
日本IBMが主宰する「BlueHub」もそんな支援プログラムの1つだ。同社が提供するのは資金ではなく技術面での支援だ。サムライインキュベートと協力し、個々のプロジェクトにメンターをつけ、事業化への相談やユーザーインタフェースのブラッシュアップなどを行う。
起業家が持つさまざまなアイデアやアプリに、IBMの技術を組み合わせて新たなビジネスを生み出せるか――。2015年4月、第1期として選ばれた5チームの経過を発表するイベント「IBM BlueHub DemoDay」が開催され、メンタリングの成果を発表した。では、IBMが注目するこれらのサービスを紹介しよう。
少し前までは未来的な響きを持っていた“遺伝子検査”が、急速に身近になりつつある。検査機器や解析技術の進化により、困難だった遺伝子情報の入手が、短期かつ低コストで行えるようになっているのだ。
GeneQuestは消費者向けの大規模遺伝子解析サービスを展開する。送られてきた遺伝子解析キットに唾液を入れて返送するだけで、Webページ上で体質や疫病リスクなどの遺伝的リスクを把握できる。解析できる項目は約200種類と豊富で、疾病予防やオーダーメイド医療、副作用のある薬の処方防止などに応用可能という。
MYCODEを展開するDeNAなど、国内外に競合は存在するが、サービスを他社にOEM提供し、ユーザー数を増やすことで差別化を図る構えだ。2014年11月にヤフーの「HealthData Lab」と協業するなど提供実績もある。匿名化した解析データを製薬会社や研究機関などに提供して利益を得るビジネスモデルも計画しているという。
「現在は技術的に参入障壁が高いが、今後はゲノムビジネスは確実に拡大するはず。ビジネス化することで、疑似科学ビジネスが横行するリスクもある。今正しいサービスを出すことで疑似科学サービスを止められる。利益の追求よりも、医学研究へのフィードバックで社会に貢献してきたい」(ジーンクエスト代表取締役 高橋祥子氏)
ビッグデータを分析して、マーケティングに生かそうとする動きは数年前から出ているが、近年では画像やテキストといった非構造化データの分析に注目が集まっている。特に画像にはテキストよりもはるかに豊富な情報が詰まっているが、分析ができていないと話すのはブランドピットCEOのT.T.Chu氏だ。
「ソーシャルメディアには毎日約18億の写真が投稿されているが、現状では基本的にハッシュタグぐらいしか情報を得る手段がなく、約8割の写真にはハッシュタグなどのテキスト情報も付加されていない」(T.T.Chu氏)
ブランドピットが提供するツール「Brand Pit」は、さまざま写真から商品のマーケティングにつながる知見を導き出す。例えばビールであれば、ユーザーの表情や場所、時間、性別、年齢といった情報のほか、どういった感情で飲んでいるか、何と一緒に食べているかといった情報が得られる。製品のブランドマネージャーが消費者行動を把握したり、市場拡大時の調査に利用できたりするという。
すでにヘルスケア商品を販売するユニリーバや世界的なマーケティング会社であるオグルヴィなどと契約しており、今後1年間で新たに12社と契約を結ぶことを目標にしている。一般ユーザーが撮影した写真の分析に特化しているため、撮影対象が暗かったり、小さかったり、曲がっている場合でも解析できる点を強みにしている。今後は解析の精度を上げつつ、動画の解析についても視野に入れていくとのことだ。
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