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» 2016年02月08日 07時00分 UPDATE

今さら聞けない「FinTech」の基礎知識:第3回:日本におけるFinTech

国内外で大きな注目を集めているFinTech。日本ではどんなサービスが登場しているのか、なぜ主役がベンチャーなのかを考える。

[吉岡優,ITmedia]
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 海外では既に人々の暮らしの中にも浸透しはじめているFintechサービスであるが、日本ではどのような状況なのだろうか。

 実は、“Fintech”という言葉は日本では2014年まではほとんど注目されず、2015年に入ってから急速に使われるようになってきた。背景としては、2014年度後半に実施された金融庁の「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」における議論の影響も大きかったと考えられる。

 このスタディ・グループにおいて、銀行による金融関連ITベンチャー企業への出資規制緩和の議論が行われる中、投資候補先としてのFinTechベンチャー企業への注目度が一気に高まる一方、金融機関向けITサービスの担い手である大手SIerも、Fintech関連サービスの提供に向けたベンチャー企業との連携やベンチャー企業発掘のための取り組みを始めている。

Photo 日本市場におけるFinTech関連のハイライト

日本のFinTech

 日本のFintechサービスというと、「マネーフォワード」や「freee」が提供するクラウド会計、同じく「マネーフォワード」や「Zaim」が提供する家計簿ツールを思い浮かべる人も多いのではないだろうか?

 こうしたサービスの基礎となっている基本的な機能の一つにアグリゲーション、すなわちインターネットバンキングを使って複数の金融機関の口座情報を集約するサービスがある。アグリゲーションサービス自体は、既に10年以上前から展開されているが、クラウドコンピューティングを利用することで手の届きやすいサービスとなり、一気に普及が進んだ感がある。

 一方で、前回紹介した融資や送金といった領域では、国内の既存サービス(すなわち銀行サービス)の充実や、金融商品取引法、資金決済法といった法律上の制約もあり、事業展開を行っている企業も出てきてはいるものの、まだまだ身近なサービスの域には達していないといったところである。

FinTechでベンチャーが台頭する理由

 ところで、FinTechというと「ベンチャー企業、スタートアップ企業によるサービス」のことを指していると感じておられる方も多いのではないかと思うが、なぜ金融系企業ではなくベンチャー企業がその担い手となってきたのであろうか?

 もともと金融業、特に銀行はコンピュータ処理が必須の業務であり、ITとの関連が非常に深く、最大のIT利用産業といっても過言ではない。しかしながら、そのIT投資、IT開発人員の大半は、ホストコンピュータを利用したいわゆる「勘定系」システム向けであり、FinTechサービスが利用の前提としているインターネットの活用はかなり限定的だったともいえる。

 その中で、相次ぐ合併によるシステム統合への対応や、規制等の制度対応など、「守りの投資」を行いつつ実施する「攻めの投資」の内容は、マーケティング機会の効率化、事務省力化など、「投資対効果」が極めて分かりやすい案件が優先となり、成功するかどうか良く分からない新たなビジネスモデル作りや、「ユーザーの使い勝手の向上」といった戦略的意義は高いが投資効果が分かりにくい案件への投資が後手にまわってきたと推測される。

 一方、Webサービスにおける事業立ち上げには、いわゆるフリーミアムモデル、すなわち基本的なサービスは無料提供し、特別な機能を利用する場合には課金を行う仕組みが一般的であり、「ものになるかどうか分からない」FinTechサービスの立上げにあたっては、「課金による収益化が先か、資本調達した資金が尽きるのが先か」というベンチャー企業が、その担い手として最もフィットしてきたのも事実であろう。

 ベンチャー投資のエコシステムがまだまだ発展途上の日本がFinTech企業の出現が限られている間に、海外ではスマートフォンの普及やコンピュータ技術の発展にあわせ、破壊的ビジネスモデルを持ったFinTech企業が出現し、金融機関のサービスを代替するようになり、銀行側でもFinTech企業と共存関係を築いていくようなフェーズに入ってきた。

 日本においても、既に海外で成功しているビジネスモデルを参考にして多くのベンチャー企業がFinTechサービスを開始し始めており、金融界の関心が急速に高まってきているのが現状である。

 2015年はこうした背景を受け、メガバンクや地方銀行を中心に、FinTech研究の専門部署の設立、ベンチャー企業の発掘を狙ったFintechイベントの開催、及び自社サービスへの活用を狙ったベンチャー企業への出資/業務提携などの取り組みが加速した1年であった。

著者プロフィル:吉岡優

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 GMOペイメントゲートウェイ上席執行役員。1988年東京大学法学部を卒業後、三菱銀行に入行。1997年ノースウェスタン大学経営大学院卒業。その後、ニューヨーク支店、システム部、マーケティング部等を経て、2009年にイーネット取締役企画部長就任、2013年よりGMOペイメントゲートウェイに入社し、決済・金融分野での製品戦略、新規事業企画を担当。


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