国内外で大きな注目を集めているFinTechだが、一体、どんなサービスが登場しているのか。海外の例を見ていこう。
日本では、2015年頃から注目され始めたFinTechだが、海外では、2000年代中盤頃から注目されていたのをご存じだろうか。
通常、新しいITサービスは、アメリカのシリコンバレーで誕生し、米国内、そして英語圏の国々へと広がった後、日本に上陸するのが定石である。FinTechも同じ変遷で、2000年代中盤頃に米国・海外から拡がり、日本には2014年頃にようやくその“概念”が上陸した状態である。
その間に、海外におけるFinTechの担い手であるベンチャーの中には、既にスタートアップのステージを超える企業も現れている。例えば、融資分野のサービスで注目を集める「Lending Club」は、2007年の創業から7年後の2014年に上場し、現在の時価総額は約3000億円(2016年1月20日現在)である。これは日本でいえば、地銀中位行くらいの企業規模だ。EC決済・送金分野の老舗であるPayPalに至っては、今や、時価総額5兆円規模の巨大企業に成長している。
さまざまなFinTechサービスが相次いで登場する中、海外では今、どんなサービスが注目されているのか。海外の事例を見ていこう。
さきに登場した米FinTechサービスのLending Clubは、融資領域サービスの注目株。次のような仕組みで個人間のお金の貸し借りをサポートする融資プラットフォームだ。
サービスのベースとなっているのは、インターネットの登場によって一般的になった“C2C”、”P2P”を、お金の分野にも応用するというアイデア。IT主体の運営でコストを削減することにより、従来の金融機関より有利な金利を提供することを可能とした「お金のマーケットプレース」のビジネスモデルである。
クレジットカードの債務の借り換えニーズが多い一方、積極的な個人投資が浸透し、借り手/貸し手のニーズがあった米国において、リーマンショックで金融機関が個人融資に傾倒できないという時代環境にもマッチしたサービスとして成長してきた。
さらに、日本で代表的な“C2C”であるヤフオクに、今や多くの事業者が出店して販売しているように、Lending Clubにおいても機関投資家や金融機関が新たな資金運用手段として注目しており、それが一段の成長ドライバーとなっている。
次に紹介するのは、英送金領域サービスの「WorldRemit」。送金というと、日本では銀行で行うイメージが強いが、出稼ぎ労働者など銀行口座を持てない層が多い海外では、母国への送金用途でFintechサービスを利用する人も増えている。
WorldRemitも、こうしたユーザーを対象とするサービスの一種で、スマートフォンだけで完結する個人向けの国際送金サービスを提供。これまでの調達額は約147百万米ドル(約175億円)にのぼっている。
このサービスのポイントは次の4点だ。
WorldRemitは、銀行口座を持たなくてもスマートフォンさえあれば送金できるため、交通機関などのインフラが整備されておらず、また、銀行口座を持てない人も多い新興国では貴重で手軽な送金インフラとなっている。
このように海外においては、各国の生活インフラや社会構造、時代背景に対応したさまざまなFinTechサービスが登場し、既に人々の暮らしの中に浸透し始めている。
なお、日本においては、大手送金ベンチャーは登場しておらず、ベンチャーの先手を打って、銀行が新たな送金サービスに取り組む気配をみせている。
GMOペイメントゲートウェイ上席執行役員。1988年東京大学法学部を卒業後、三菱銀行に入行。1997年ノースウェスタン大学経営大学院卒業。その後、ニューヨーク支店、システム部、マーケティング部等を経て、2009年にイーネット取締役企画部長就任、2013年よりGMOペイメントゲートウェイに入社し、決済・金融分野での製品戦略、新規事業企画を担当。
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