MSがクラウドERPをリリース、“使いやすさ”訴求でシェア拡大を狙う

ERP製品「Dynamics AX」の最新版の提供を開始した。Windows Azureベースとなったことで、柔軟性の高いシステムの構築や変更、BI連携やモバイルフレンドリーなUIなどの特徴を訴求する。

» 2016年03月22日 14時27分 公開
[ITmedia]

 日本マイクロソフトは3月22日、ERP製品の最新版となる「Microsoft Dynamics AXクラウド」のサービス提供を始めた。稼働環境が同社のクラウドサービス「Windows Azure」ベースとなり、システムの構築や変更、システム間でのデータ連携の容易さとマルチデバイスからの使いやすさなどを企業ユーザーに訴求していくという。

最新版Dynamics AXの概要

 記者会見した執行役 Dynamicsビジネス統括本部長の岩下充志氏は、Dynamics AXの事業動向について137カ国・地域の法制度や40言語、各国通貨への対応を特徴に、グローバル展開する中堅・大企業での採用が広がっていると説明した。最新版は、同社が掲げるビジネスの生産性向上やクラウドの高度利用を実現する“ビジネスソリューション”になると述べている。

Dynamics AXの主要機能。業種共通と業種別の機能で構成される

 Dynamics AXクラウドの特徴について同社は、システム運用管理機能「Dynamics Lifecycle Services」を利用したシステムの容易な構築、展開、変更が可能になったほか、データ分析ツール「Microsoft Power BI」と連携したビジネスデータの可視化、マルチデバイスからグラフィカルなダッシュボードを通じて経営情報が迅速に把握できる使い勝手の良さを挙げる。

 また、ライセンスを従来の永続型から最新版から3種類の月額課金を基本とするモデルに変更し、ユーザー数の増減などに柔軟に対応できるようにした。種類と料金は、経費申請など一般従業員が使う基本機能中心の「セルフサービス」が1ユーザーあたり月額8ドル、承認や編集などの機能が使える「タスク」が同190ドル、ほぼ全ての機能が使える「エンタープライズ」が同190ドル。この他に、ストレージやテスト環境向けの有償オプションも用意している。

Dynamics AXでのコスト分析によるレポート画面の一例

 同社は2016年後半に予定するアップデートで、オンプレミスやプライベートクラウド環境でも稼働できるようにするほか、利用可能な同社データセンターの地域を拡大する。なお、今回のバージョンは既に日本のデータセンターでも利用できるという。

 Dynamics AXクラウドの最初のユーザーは世界で9社あり、うち1社が「Soup Stock Tokyo」などを展開するスマイルズだった。同社経営企画本部 情報システム部 副部長の佐藤一志氏によれば、当初はオンプレミス版の「Dynamics AX 2012」の採用を検討していたものの、マイクロソフト側からDynamics AXクラウドの早期導入プログラムの提案を受けて、同プログラムに参加。パートナー企業とともに開発段階からDynamics AXクラウドの評価などを行ってきたという。

 スマイルズでは経営情報の可視化に取り組み、佐藤氏は特に、APIを活用してシステム間での各種データの連携に必要な作業に集中できる点をDynamics AXクラウドのメリットを挙げた。今後は販売関連などのデータや、店舗機器のセンサデータ、気象データ、ソーシャルメディアなどの各種データをDynamics AXやPower BIで活用しながら、経営情報の可視化を推進していくとしている。

スマイルズが取り組むデータ連携のイメージ

 米Microsoft Dynamics製品マーケティングディレクターのパパイン・リッチャー氏は、「ERPシステムは大企業を中心に広く導入されているため、まずはERPを新規導入する企業や拠点向けに整備する企業へDynamics AXクラウドのメリットを訴求しつつ、基幹領域での採用拡大につなげていきたい」と述べた。

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