多くのITのトレンドは米国で生まれ、数年のタイムラグを置いて日本でも広まります。データ管理の手法やツールも同様ですが、なぜこのタイムラグが生まれているでしょうか。将来を見越した仕組みを選定する際の参考として、今回は似ているようで異なる米国と欧州のアプローチを紹介します。
ITのトレンドやそれを生み出すベンダーの多くは米国に源流を持ち、日本では米国からおよそ3年のタイムラグで普及することが一般的です。この差は「ただベンダーが米国企業だから」という理由だけではなく、各国で異なる企業体制やITに対するアプローチによってもたらされます。今回からは、将来のITのインフラや運用の改善に向けて有意義な検討を行っていくときの参考になるよう、それぞれの国のITに対するアプローチを紹介したいと思います。
米国は、日本のように職能(能力)ではなく職務(タスク)に応じた人事・組織制度のため、IT担当者はできるだけ専門知識を持ち、日々の対応の他、継続して改善策が提示できることが求められます。また、「自社のシステムを自社がコントロールする、できる」という考え方で製品を選定することが多く、この選定ではベストブリードの構成を取ることが多々ありますが、最初からマルチベンダーありきで検討することは通常ありません。
単一ベンダーで構築できるならそれに越したことはないのは日本と変わりませんが、上記の「コントロールする(主体性を維持する)」という点が重要です。運用性やコスト、将来性などが合致すればマルチベンダー構成となることや、クラウドの活用に懸念やためらいが無い、という位置づけがより実態に近い説明といえるでしょう。
また、IT部門も含めて職務に応じた体制を構築しており、転職も一般的であることから、同等のスキルレベルであれば人が変わっても影響が出ないよう、とにかく効率化、標準化への意欲が強く、パッケージとベストプラクティストをそのまま適用して運用することが多いのも一つの特徴です。
ただ、ベストプラクティスが現場側での操作・運用にまで一貫してベストであることは少なく、不便になることもあります。そのため、シャドーITが発生する素地は日本より大きく、日本よりも根深い課題になっています。米国では国を挙げてコンピューティング、プログラミングを推進している関係や、言語構造からも論理的思考が一般的です。「ノウハウを持っている」ことが人材としての価値を上げることも後押しするので、シャドーITに手を染める(手を出せる)現場担当者が比較的多く、日本よりも危機感があります。このことは、さまざまな調査会社の調査でも、パブリッククラウドが普及期となった2013年以後、CIOの課題として継続的に挙げられています。
それを避けるべくCIOの立場では、「現状維持」や「過去の方式の踏襲」は選択肢の第一位にはならず、「サービス化できる」基盤を自社で持つことでシャドーITを抑止し、ガバナンスを維持するため、リスクの検討を踏まえて新しい技術や方式を積極的に導入する傾向が強くあります。
シャドーIT=企業内のITシステム標準を策定し運用管理するIT部門が把握していない(把握できない)ITシステム利用を指す
例外としてIT関連企業の場合は、先端技術について現場エンジニアがCIOやIT部門の担当者と同等以上の知識を持っており、その手のエンジニアの方が最新技術の採用に意欲的であったりすることも多いため、IT担当者の役割としては標準化や社内統制といった点に重きが置かれる傾向にあります。この点は日本企業におけるIT部門の位置づけに近いかもしれません。
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