SAPが「HANA Cloud Platform」に込めた大いなる野望Weekly Memo(1/2 ページ)

SAPがPaaS型クラウドサービス「SAP HANA Cloud Platform」の日本での事業展開を強化すると発表。このサービスには同社の大いなる野望が込められていることが分かる。

» 2016年06月13日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]

「HANA Cloud Platform」データセンターを国内2カ所に開設

 「今回の取り組みによって、デジタル化を推進する多くの日本企業を強力に支援していきたい」

 独SAPの社長でデジタル・エンタープライズ・プラットフォーム事業を担当するスティーブ・ルーカス氏は、SAPジャパンが先頃開いたPaaS型クラウドサービス「SAP HANA Cloud Platform」(以下、HCP)の日本での事業展開に関する記者会見でこう強調した。

Photo 記者会見に臨む独SAP社長のスティーブ・ルーカス氏(右)とSAPジャパン社長の福田譲氏(左)

 SAPが「今回の取り組み」として発表したのは、HCPを提供するデータセンターを国内2カ所(東京と大阪)に新設するというもの。東京データセンターは2016年11月、大阪データセンターは2017年第1四半期(1〜3月)に開設する予定だ。2カ所に設置することで、ディザスタリカバリ(災害時復旧)体制もとれるようにする。

 ルーカス氏とともに会見に臨んだSAPジャパン社長の福田譲氏は、「新設する国内2拠点は、SAPがグローバルで展開しているHCPセンターの6、7カ所になり、日本での事業展開を強化する意欲の表れだ」と強調。「これにより、官公庁や金融機関をはじめ、国外データセンターの利用を制限するなどの厳しいセキュリティポリシーをお持ちの組織でも、HCPを利用していただけるようになる」と説明した。(図1参照)

Photo 図1:グローバルで展開している「HANA Cloud Platform」データセンター(出典:SAPジャパンの資料)

 HCPは「SAP HANA」をベースにアプリケーションの開発・統合やデータベース、データ分析などの機能を装備したPaaS型クラウドサービスである。

 SAPが2010年に市場投入したHANAは「インメモリ型データベース」と呼ばれることが多いが、同社では企業システムにおけるOLTP(オンライントランザクション処理)などの基幹系と、OLAP(オンライン分析処理)などの情報系の業務アプリケーションを単一基盤でリアルタイムに実行できる「次世代プラットフォーム」と位置付けている。そのクラウド版として2013年5月に発表され、改良されてきたのがHCPである。(関連記事参照)

 ルーカス氏によると、HCPは現在、グローバルで2610社に導入され、50万人のユーザーに利用され、400社以上のパートナーがHCP上でアプリケーション開発に取り組んでいるという。ちなみにHANA全体におけるHCPの割合、すなわちHANAのクラウド化率の現状は20%程度だという。この割合が今後どのように増えていくか、注目されるところである。

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