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» 2016年12月26日 08時30分 UPDATE

ハギーのデジタル道しるべ:情報セキュリティの基本も揺るがした問題――2016年の総括・後編 (1/2)

2016年の情報セキュリティを振り返りたいが、それ以前に「情報セキュリティ」の「情報」そのものが脅かされる状況だ。この出来事に筆者なりの考えを述べたい。

[萩原栄幸,ITmedia]

 2016年も残すところ1週間を切った。前回に続いて2016年の情報セキュリティの様子を振り返ってみたいが、今回はそれよりも「情報セキュリティ」以前の問題となった事件について筆者なりの考えを述べたい。


 筆者は日本セキュリティ・マネジメント学会の常任理事時代に、学会で論文の査読をしたことがある。通常の論文は、記載内容についての出典元を必ず数ページにもわたり注釈を入れるのが慣例だ。そして査読をする側にとっても、その注釈の出典元が信頼できるものか、引用に誤りはないかなどのチェックが重要な作業になっている。

 しかし現在、欲望のままに膨れ上がった「インターネット」の情報はどうだろうか。筆者もたくさんの失敗を経験しているがその内容は玉石混交である。基本的には信頼できるWebサイトや記事からの出典かどうかを確認するが、あまりにも多くの情報が散乱しているので、どうしても十分にチェックができないのが実情だ。こうした中、実際に大手の(信頼できそうな)いわゆる「まとめサイト」が次々と閉鎖されることとなった。

 詳細はITmediaだけでも解説記事が多々掲載されているのでそこを参照されたいが、ここではまとめサイトの不正やSEO(検索エンジン最適化)対策について言及するつもりはない。ただ、ネットを含めた「文字情報」に対して疑問をあまり抱くことなく信じてしまうという昔からの習慣をそろそろ捨てる時期にきていると思う。

人間は文字情報を信じきっていた?

 昔は印刷物自体が極めて貴重で希少価値があり、印刷する側も一生を賭してこの世に出していた。それから印刷物自体が安価に、大量に出回るようになり、そしてインターネットが登場した。インターネットはまだ本格運用して20、30年しか経過していない。ちなみに筆者が銀行の第三次オンラインシステムを構築したのが1987年であり、この当時に金融機関でPCを業務に使用していた銀行は、試験的な導入や試行を除けば1つも無い。やっと手書き文書がワープロと呼ばれる機器でデジタル情報になり、印字が職場で簡単にできるようになった程度である。

 だから多くの人は、新聞や雑誌を含め印刷された文書やネット記事などについて「事実」もしくは「事実に近い」文書として認識してしまいがちだ。最近ではネットや新聞、書籍などに疑問を抱く人も増えてはいるが、信頼できる「出典元」からの情報に対してはフィルタが薄くなり、例えば「○○ではA氏は××したと記載している」ということがあたかも「A氏は××した」となってしまい、この情報が独り歩きしてあたかも真実、あたかも自分自身が見聞きしたという錯覚に陥ってしまうのである。

 筆者もこれまで多数の本を出させていただき、セミナーや講演会は月平均3回程実施している。多くの有料セミナーでは講演内容を製本しているので、たぶん今まで数百冊以上もの書籍本がこの世に出回っていることになる。ただ、お恥ずかしいことに出版当時は確信を持って記載した内容でも、その後に新たな事実や誤解が判明した結果、現状では「正しくない」と思われるものもある。

 論文すら小保方晴子氏の事案をきっかけにその信頼性が危うくなっている時代だが、一般の人々が容易に入手する情報は、やはり新聞やネット情報が圧倒的に多い。それなのに大手のまとめサイトの多くがSEO対策を優先し、閲覧だけを目的にライターの内職として極めて安い原価で大量に記事情報をネットに放出したのである。

 せめて内容が本当に出典元サイトから許可を得た引用で、内容もある程度チェックされていたならまだ良かったが、この時代にそんなことをしていたのでは、ライターの安価なバイト代が本当に「無料よりはマシ」レベルになってしまう。そしてヒット数で評価されるために、ライターも悪いこととは知りながら「本体の情報」を改ざんして人の注目を引く記事に加工し、まとめサイトで掲載されたという。いったい、何ということだろうか。

 こうした事態にいつも思うが、当事者たちの中にはあまりに「想像力」が無さ過ぎる人が多い。医療系の記事で本体の記事をチェックせず、なおかつSEO対策して検索ヒット数が多くなるように改ざんし、その結果、閲覧者がその情報を信じて被害に遭うという、あまりにも単純な影響を考えなかったのだろうか。運営企業はどうやってこのようなサイトをいくつも立ち上げたのか。営利を最優先したにしても、その考えはあまりにもお粗末というしかない。

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