「Lumia」シリーズに代わって、高スペックなビジネス向けハイエンドスマホ「HP Elite x3」を投入するなど、Microsoftのスマートフォン戦略に変化の兆しが見えている。
Microsoftのスマートフォン戦略が大きく転換しているようだ。現在のMicrosoftにおけるスマートフォンの基本戦略は、もはや「Lumia」シリーズを軸に置いたものではない。
振り返ってみると、米Microsoftは、2013年9月にNokiaの携帯端末事業を買収し、自らスマートフォン事業に参入。NokiaロゴからMicrosoftロゴに変更したLumiaブランドのスマホを開発・販売してきたが、その後、事業が上向くことはなく、リストラの対象となり、事業を縮小してきた。
2016年5月に発表した施策では、フィーチャーフォン事業の売却とともに、スマートフォン事業の合理化を発表。米Microsoft Windows & Devices エグゼクティブ バイスプレジデントのテリー・マイヤーソン氏は、社内に宛てたメールで人員削減などのリストラを実行し、これを2016年末までに実質的に完了。2017年7月までに完全に完了する方針を打ち出していた。
これに加え、モバイル事業に関しては、セキュリティや管理性、Continuum機能を評価する企業に対してフォーカスすると宣言。同時に、スマートフォンのハードウェア事業を合理化していく姿勢も示した。
明言はされていないが、この文脈から読み取れるのは、Lumiaブランドのスマホからの撤退である。
既にLumiaシリーズは、2015年に発売した「Lumia 950」「Lumia 950 XL」以降、フラッグシップとなる製品は登場していない。それどころか、米国やカナダでは、Lumia 950 XLを購入するとLumia 950をプレゼントするという大胆な販売施策を行うなど、事業戦略にも焦りが見られた。
そして現在、Microsoft自身が米国市場で「Windows 10 Mobile」を展開する上で推奨しているのは、Lumiaではなく、HP Inc.の「HP Elite x3」。もはやLumiaを主軸とするWindows Phone戦略は描かれていないのが現状である。
Lumiaをモバイル戦略の主軸に置かなくなったのは、Microsoftの社員が所有するスマートフォンの機種選定に「縛り」がなくなったことからも分かる。
かつては、Microsoftの社員であれば、Windows搭載スマホを持つことは、当然、大前提となっていた。日本マイクロソフトでは、Windows搭載スマホが国内で販売されていなかったため、2015年5月に日本では販売していなかった「Lumia 830」を海外から導入。独自に技適マークを取得して、Windows Phoneの利用を開始した経緯があったほどだ。
だが、現時点で米Microsoftの社員が所有するスマートフォンは、iPhoneでも、Androidでも構わない。日本マイクロソフトでもそれは同じだ。実際、2016年春にこの絞りが消えて以降、全世界的にMicrosoftの社員のiPhone保有率は急増している。
ちなみに、日本マイクロソフトの平野拓也社長は、既に「Lumia 830」から移行し、国内パートナーから発売されているWindows 10 Mobile搭載デバイスを利用している。さすがに社長の立場ではiPhoneは使えないだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.