富士通研究所、スライド式手のひら静脈認証技術を開発 小型モバイル端末に搭載も

手をスライドさせながら手のひらの静脈パターンを読み取る“スライド式”の静脈認証技術を開発。静脈認証の適用範囲と安全性の高いモバイルサービスの拡大が期待されるという。

» 2017年01月11日 08時20分 公開
[ITmedia]

 富士通研究所は1月10日、手のひら静脈を使った世界初のスライド式静脈認証技術を開発したと発表した。手のひら静脈認証の光学ユニットをモバイル端末のフレーム部分へ搭載可能な8ミリ幅に小型化し、タッチパネルをなぞるだけで認証が行えるという。

 手のひら静脈による認証は、生体を透過しやすく安全な近赤外帯域の波長の照明を用いて撮像し、体内にある静脈のパターンを読み取って認証する。手のひら静脈認証の光学ユニットは、照明部と撮像部から構成され、手のひら全体に対して均一の明るさで光を照射するため、照明部は撮像部の周囲を取り囲むように配置されている。照明部の幅は光学ユニットの中で最も広く、小型化における課題となっていたという。さらに、撮像部については、小型化すると手のひらの静脈パターンを読み取れる範囲が狭くなるため、登録時と照合時で読み取る範囲が大きくずれてしまうなど、認証されにくくなるといった難点があった。

 今回、光の回折現象を応用した拡散機能と集光機能を持つ複合光学素子を新たに開発。LED光源からの光を回折させて斜め上空に照射し、照明部よりも広く四角い形状の領域を均一の明るさで照明できるという。撮像する四角い範囲を光を均一の明るさで照射することで、LEDの使用数を減らしたことに加え、照明部と撮像部を一列に配置した構造にし、幅の狭いモバイル端末のフレーム部に搭載可能な8ミリ幅へと小型化を実現したとのこと。

Photo 試作した光学ユニット(左:写真枠内、右:原理図)

 また、スライド式の入力操作と照合アルゴリズムも開発。小型化によって一度に読み取れる範囲が狭くなるが、手をスライドさせることで静脈パターンを分割して読み取り、手のひら全体の静脈パターンを照合に用いることができるという。分割して読み取った静脈パターンを照合するアルゴリズムの精度は、他人受入率0.001%、本人拒否率0.01%(リトライ1回)だという。

Photo 操作方法および処理の流れ。タッチパネルを指でタッチし、表示されるガイドに沿って手をスライドすることで、光学ユニット上を通過する手のひらが連続して撮像され、同時にタッチパネルから得られる座標情報を記録。さらに照合アルゴリズムによって座標情報を利用して照合に適した画像選択する

 今後同社は、継続して光学ユニットと照合アルゴリズムの開発を進め、スライド式静脈認証技術の2017年度中の実用化を目指すという。


 パスワード認証の脆弱性が問題化される中、システムへアクセスする度に静脈パターンを認識して本人確認を行う手のひら静脈認証は、情報漏えいやなりすましなどの被害を防止するためのセキュリティ技術として注目され、モバイル端末でも利用できるようになることでパスワードに頼らないセキュリティの強化が期待される。

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