オープンソースをサポートする「OpenStandiaモデル」オープンソースビジネス勉強会

これからのSIerが取り組むべき「差別化」戦略の有効な手段であるオープンソースの活用について、オープンソースビジネスを5つに分類して考察。今回は、既存のOSS(オープンソースソフトウェア)をサポートするビジネス「OpenStandiaモデル」について解説します。

» 2017年01月12日 08時00分 公開
[寺田雄一ITmedia]

この記事は寺田雄一氏のブログ「オープンソースビジネス勉強会」より転載、編集しています。


 以前紹介した5つのオープンソースビジネスのモデルのうち、今回はオープンソースをサポートする「OpenStandiaモデル」について紹介します。

 OpenStandiaモデルとは、オープンソースを活用したシステム開発やオープンソースのサポートサービスを、ユーザー企業やシステムインテグレーター向けに展開するビジネスモデルです。このビジネスモデルは、筆者が野村総合研究所で行っていたものです。

オープンソースに関する技術力を提供

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 オープンソースは、ソースコードが公開されていて誰でも利用することができますが、多くの場合、ある程度の技術力やノウハウが必要になります。ソフトウェア自体を販売するのではなく、オープンソースに対する技術力やノウハウを背景に、それを活用したシステムの構築や保守サポートサービスを提供するのがこのビジネスモデルです。自社開発したオープンソースに対するサポートサービスを提供する場合もありますが、多くは既存のオープンソースに対するサービスが中心となります。

 例えば、筆者が野村総合研究所で立ち上げたオープンソース・サポートサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」では、以下のようなサービスを行っていました。

  • Apache、Tomcat、PostgreSQLなどを組み合わせ、冗長構成と安定したシステム基盤を構築し、かつ保守サポートサービスも提供する(組合せのノウハウ、冗長化のノウハウ、保守サポートの体制などがビジネスの源泉)
  • Strutsのセキュリティホールに対して、独自のパッチを開発、提供する(ソースコードを調査し、不具合を解消する技術力がビジネスの源泉)
  • JBossASという、開発元がサポートしていないコミュニティー版のサポートを提供する(ソースコードを調査し、問い合わせ対応を行うなどの技術力がビジネスの源泉)
  • OpenAMやLiferayを組み合わせ、顧客向けにカスタマイズやアドオン開発を行い、統合認証基盤を開発、提供する。保守サポートサービスも提供する(組合せのノウハウ、顧客課題の理解とそれに基づく独自実装部分の蓄積などがビジネスの源泉)

 なお、OpenStandiaは「オープンソース・ワンストップサポート」を掲げていました。しかし現在では、オープンソースの利用は一般的になってきており、ワンストップサービス(当時は“百貨店型”と呼んでいた)はそれほど訴求しなくなっています。

 新たにOpenStandiaモデルでオープンソースビジネスを始めるのであれば、特定のオープンソースに特化する“専門店型”の方がお勧めです。

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 次回は、OpenStandiaモデルの収益モデルなどについてお話ししていきたいと思います。

著者プロフィル:寺田雄一

(株)オープンソース活用研究所 所長。 IT業界の多段階請負構造の改革を進めるため、30社以上のIT企業に対してマーケティング支援「マジセミ」、採用支援「マジキャリ」を行っている。マーケティング支援はセミナーを中心に行っており、年間200回を目標に開催。詳しいプロフィールはこちら


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