これからのSIerが取り組むべき「差別化」戦略の有効な手段となるオープンソースの活用について、今回から考察していきます。今回は、オープンソースビジネスの特徴を5つに分類して整理ます。
この記事は寺田雄一氏のブログ「オープンソースビジネス勉強会」より転載、編集しています。
「オープンソースは無料なのだから、ビジネスになるわけがない」。よく言われることです。しかし、現実にオープンソースビジネスは存在しているし、多くのIT企業が成功しています。
IT業界が変わろうとしている今、個々のIT企業も変わっていく必要があります。そのときに最も取り組みやすい手段の1つがオープンソースビジネスです。
筆者は、今後、日本の情報サービス産業が発展するためには、大手だけでなく中堅中小IT企業を含めたシステムインテグレーターやソフトハウスの活躍が不可欠だと考えています。単なる下請けのソフトウェア開発ではなく、それぞれのIT企業がそれぞれの「強み」を持ち、ユーザー企業から直接仕事を依頼されるように変わらなければなりません。
「システムインテグレーターの生き残り戦略」については先に述べました。豊富な資金があれば、SaaSやパッケージなどを開発し、グローバルIT企業と勝負するのもありでしょう。また、業界に特化した業務ノウハウを持っていれば、その業界向けにITを活用したイノベーションを提案することもできるでしょう。
しかし現実的には、これまで受託開発が中心だったIT企業には、どちらも厳しい選択のはずです。いきなりVCから資金を得られるわけでもありませんし、これまでの仕様書に基づいたコーディングをやってきたエンジニアに、「明日から会計の専門家になれ!」といっても難しい話です。
多くのIT企業にとって、現実的には「ユーザー企業に対して技術や開発リソースで支援する」ビジネスを模索することになります。
この場合「差別化」が必須で、オープンソースはその1つになります。そのような観点から、オープンソースビジネスについて解説していきます。
筆者はオープンソースビジネスを5つに分類しました。まずはそれぞれの概要について説明していきます。
1つ目は、ユーザー企業やシステムインテグレーターが行うシステム開発においてオープンソースを活用するビジネスモデルです。これは生産性向上のためのオープンソースの活用であり、厳密にはオープンソースビジネスではありません。
2つ目は、オープンソースをサポートするビジネスです。公開されているオープンソースについて、導入支援やサポートサービスを提供します。
3つ目は、オープンソースそのものをソフトウェアとして販売するビジネスモデルです。自社で開発したソフトウェアをオープンソースとして公開していきます。
4つ目は、既存エコシステムを活用していくビジネスモデルです。自社のソフトウェアやサービスをエコシステムの中に位置付けることで、認知を拡大していきます。
5つ目は、エコシステムそのものを作っていくビジネスモデルです。自社で開発したソフトウェアをオープンソースとして公開し、デファクトスタンダードを狙っていきます。
1つ目と2つ目のビジネスモデルは既存のオープンソースを利用し、3〜5つ目のビジネスモデルは独自のオープンソースを開発するものです。
次回以降、それぞれについて解説していきます!
(株)オープンソース活用研究所 所長。 IT業界の多段階請負構造の改革を進めるため、30社以上のIT企業に対してマーケティング支援「マジセミ」、採用支援「マジキャリ」を行っている。マーケティング支援はセミナーを中心に行っており、年間200回を目標に開催。詳しいプロフィールはこちら。
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