IoTやクラウドなど、ITの進化でビジネスが急速に変容しつつある今、SIerはどうあるべきか? 取り組むべき戦略について考察します。
この記事は寺田雄一氏のブログ「オープンソースビジネス勉強会」より転載、編集しています。
最近、「SIはオワコン」といった記事をよく目にします。
IT業界は今、大きな構造改革の真っ只中にあります。クラウドはもちろん、APIエコノミー、情報システム部門から事業部門へのシフト、ユーザー企業によるシステム開発の内製化、プロジェクトの小型化、など、大きな変化が起きています。
SIer(システムインテグレーター)はその名の通り、「インテグレーション」という価値を提供します。さまざまなハードウェアやソフトウェアを組み合せ、不足している部分は自分たちで開発することによって、ユーザー企業が求める情報システムを構築します。
システムの障害の多くは「組み合せ」の部分に原因があります。「仕様上は連携できるはずなのに、この製品とこの製品とがうまくつながらない」といった話はよくあることです。
筆者も前職では、「仕様は信じるな! 必ず自分で検証せよ!」というのが「常識」でした。他の多くのSIerでも同様だと思います。ここに、「インテグレーション」の価値がありました。「つなげる」というところに、SIerの独自のノウハウがあり、それをユーザー企業に提供していました。
しかし今、AWSなどのクラウドサービスによって、ハードウェア、OSはもちろん、DBMSなどのミドルウェアまでもが、既に完成された状態で提供されます。これまでどちらかといえば花形だった「インフラエンジニア」は、一般のユーザー企業やSIerではもう必要なくなるかもしれません。
さらにAPIエコノミーが普及すると、「アプリケーション」や「サービス」の単位で、既に存在するものを簡単に自社のシステムに取り込めるようになります。UberのAPIを使えば配車サービスを簡単に自社システムに組み込める、というのが代表的な例です。
このように、「インテグレーション」が簡単になることで、従来のSIerの価値はなくなっていきます。
クラウドサービスやAPIエコノミーは、システム開発の生産性を飛躍的に向上させます。これによって、工数は大幅に削減されることになり、SIerの従来の人月ビジネスも(一部の大型プロジェクトを除き)崩壊するでしょう。また、多段階請負構造も同様に崩壊していきます。
このとき、SIerが生き残るためにはどうするべきでしょうか?
もはや「優秀なエンジニアがいます」というだけでは、SIerのビジネスは成り立ちません。それだけであれば、中国やベトナムのIT企業にオフショア開発するのと変わりません。
ユーザー企業に選んでもらうには、「差別化」が必要です。あなたの会社にしかない、独自の「強み」が必要です。
次回は、SIerの差別化手段として、オープンソースを活用する方法を紹介する予定です。
(株)オープンソース活用研究所 所長。 IT業界の多段階請負構造の改革を進めるため、30社以上のIT企業に対してマーケティング支援「マジセミ」、採用支援「マジキャリ」を行っている。マーケティング支援はセミナーを中心に行っており、年間200回を目標に開催。詳しいプロフィールはこちら。
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