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» 2017年05月01日 12時00分 UPDATE

世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる:企業の働き方改革が“うまくいかない”理由

「働き方改革」で企業と働き手に求められることは何か――日本の労働環境が抱える本質的な問題を考察しつつ、その核心を探ります。

[川瀬太志,ITmedia]

この記事は川瀬太志氏のブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」より転載、編集しています。


 明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張る皆さんに、幸せな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

 今回のテーマは「働き方」です。

働き方改革は「日本の働き方を変える歴史的一歩」

 ブログでも何度か取り上げてきましたが、本当にこれは私たちの仕事に対する考え方を変えないといけないものになると思いますし、そうしなければならないと思います。

働き方改革へ実行計画 残業上限や同一賃金

政府は28日、働き方改革実現会議を首相官邸で開き、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の導入を盛り込んだ実行計画をまとめた。正社員による長時間労働など戦後雇用慣行の見直しに踏み込んだ。政府は今年の国会に関連法の改正案を提出し、2019年度からの実現をめざす。(2017年3月29日付 日本経済新聞)

 政府が推進している「働き方改革」ですね。既に長時間労働の是正や非正規雇用者の待遇の改善などが検討されてきていますが、今回実行計画に盛り込まれたのは次の9項目です。

  1. 非正規の処遇改善(同一労働同一賃金など)
  2. 賃金引上げ(時給1000円への引き上げなど)
  3. 長時間労働の是正(残業時間の上限設定)
  4. 転職・再就職支援
  5. 柔軟な働き方(副業推進、テレワークを拡大)
  6. 女性・若者の活躍
  7. 高齢者の就業促進(65歳以上の雇用促進、定年延長など)
  8. 子育て・介護と仕事の両立(保育士、介護士の賃金待遇改善)
  9. 外国人材受け入れ

 安倍晋三首相は「働き方改革実現会議」にて、「これは日本の働き方を変える歴史的な一歩」と発言しました。そうであってもらいたいですね。

働き方改革に込められたメッセージとは?

 というのも、日本のこの先を考えたときに、これまでと同じような働き方では国も企業も、そして働く私たちももうやっていけないだろうと思うからです。

 背景にある一番の理由は人口減少です。日本には今、1億2700万人が暮らしていますが、それが50年後には8000万人まで減る、という予測があります。50年間で4700万人の減少……。年平均で94万人ずつ減っていくという恐ろしい話です。

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 2016年2月時点の就業者数は6427万人。既に人口のおよそ半分の人しか働いていません。就業者数は4年連続で減り続けていますが、今後もさらに減少していくことが予測されています。

 少子化と高齢化が同時に進行する中で、労働力が減っていくわけです。

 労働力が減るとともに、もし税収も落ちてしまったら、介護や育児のための国家予算は今以上に取れなくなります。つまり、多くの人が働きながら、自分の親の介護や子供の育児をすることになります。長時間労働は当然できません。時短勤務や、長期出張ができないとか、転勤できないというような条件付きで働く人はますます増えていくでしょう。在宅勤務(テレワーク)の人も増えるでしょうし、介護休暇とか育児休暇を取ることは今以上に当たり前になるでしょう。

 今でこそ、残業規制とか育児休暇取得を義務付けとか政策でやっていますが、いずれ現実的にそうせざるを得なくなります。

 そのときに企業や私たち労働者はどうすればよいでしょうか? その準備を今からしよう、というのが「働き方改革」に込められたメッセージだと思います。

日本の労働環境にある本質的な問題とは?

 労働力が減少したとき、増加する負担を誰かにツケ回すようなやり方はすぐに限界が来ます。

 企業に求められることは、全ての人が希望するワークスタイルを実現できるような仕組みにすることです。そして働き手に求められるのは、短くなった就業時間の中でも従前と変わらない成果を出すことです。これは、世の中が完全な成果志向にシフトするということを意味します。

 例えば、在宅勤務制度を採用した企業があるとします。仕事はどこでやってもよくて、必ずしも会社にいる必要はないという制度ですね。当然、評価制度も変わります。

 これまでの人事評価の基準は、「業務能力、勤務態度、意欲、成果」といったところだと思いますが、会社に来なくても良いということになりますと、上司が常に勤務態度や意欲を見るようなことができなくなります。そうなりますと、新しい評価基準は、「成果、納期順守」くらいになります。納期内に求められる成果(アウトプット)を上げられる人が「能力がある」ということになります。

 完全な成果主義ですね。

 この会社の従業員はどうなるかというと、「給料が上がる人」と「給料が下がる人」に二極化するでしょうね。長時間会社にいれば一定の給料がもらえて、勤務年数を重ねれば昇給していくというような人はいなくなります。本当に仕事をして、成果を上げられる人だけ給料が上がっていきます。

 こういう世界で求められるのは「いかにより短時間で求められる成果を最大化していくか」ということ、つまり「仕事の生産性を上げる」ことです。

 「生産性」とは「アウトプット(成果)÷インプット(投入量)」。つまり、「付加価値÷労働量(人数や時間)」です。

 今、どんどん労働量が減少していますし、今後も減少し続けます。「付加価値の総合計」であるGDP(国内総生産)が今のところ、減っていないということは、現時点では日本の労働生産性は上がっているということになります。

 でもこれは喜んでいていい話ではありませんね。もし、企業の内で業務の効率化や従業員の能力向上などがないまま働く人や働く時間が減っていくと、いずれ商品の生産量やサービスの品質は低下します。その後、売上が落ちます。すると給料も下がります。しかも状況を打開するために長時間労働が常態化することになります。誰も幸せにならないですね。

 政府がいくら「長時間労働をなくそう」と言っても、労働生産性が向上しない限り、労働現場での長時間労働がなくなることはありません。政府、企業、働き手が目指すべきことは、「生産性の持続的な向上」です。そして、生産性の持続的な向上による「総付加価値の拡大」と「総負担の削減」です。

 そういう意味では今回の働き方改革の「長時間労働の是正」や「働き手の増加(女性、高齢者、外国人)」などは問題の本質的な改善にはつながらないと思います。本質的な問題は、長時間労働や働き手の不足などではなく生産性が低いことなのですから。

働き方改革とは「生産性向上改革」のこと

 全ての働き手の付加価値生産性をあげること。これは簡単なことではありません。

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 個人だけではなくて、国や企業、みんなが意識を高めて取り組んでいく必要があるでしょう。業務を洗い出して、業務の意義を定義していく中で無駄な業務をやめる。価値ある業務に集中してやり方を改善し続ける。

 日本の製造業がかつて全国の工場でやってきたようなレベルの生産性改善活動を、全ての仕事でやっていくことが必要かもしれません。業務の時間を測って工数分析と作業分析をするような取り組みですね。

 実際、同じ仕事でも2時間かかる人と30分で仕上げられる人がいます。生産性が4倍違うわけですが、そもそも仕事の組み立て方が違っています。その仕事の組み立て方をオープンにして、誰でもできるようすることで全体の生産性が上がっていきます。

 政府がやることも企業を規制することだけではなくて、生産性向上に対する支援に振り向けるべきですね。労働集約型産業の規制緩和とか、企業のIT/AI導入を支援するとか、街づくりにおいて点在する住居を街の中心部に集めて暮らしや生活インフラを効率化するとか。

 そういった施策が切れ目なく打ちだされていくなら、今回の「働き方改革」は確かに安倍首相が言うように「日本の働き方を変える歴史的な一歩」になるかもしれませんね。私たちも覚悟して働き方を見直した方がいいようです。

著者プロフィル:川瀬太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験をもとに、個人の資産形成支援事業を展開中。詳しいプロフィールはこちら


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