コレ1枚で分かる「第3次AIブームとデータ流通量」即席!3分で分かるITトレンド

黎明(れいめい)期からおよそ60年、コンピュータの性能の加速度的向上に支えられ、飛躍的な成長を遂げてきた人工知能がいま迎えつつある「第3次AIブーム」とは?

» 2017年05月02日 11時20分 公開

この連載は

 カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! いまさら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。


われわれは、1956年の夏の2カ月間、10人の人工知能研究者がニューハンプシャー州ハノーバーのダートマス大学に集まることを提案する。そこで、学習のあらゆる観点や知能の他の機能を正確に説明することで機械がそれらをシミュレートできるようにするための基本的研究を進める。機械が言語を使うことができるようにする方法の探究、機械上での抽象化と概念の形成、いまは人間にしか解けない問題を機械で解くこと、機械が自分自身を改善する方法などの探究の試みがなされるだろう。われわれは、注意深く選ばれた科学者のグループがひと夏集まれば、それらの問題のうちいくつかで大きな進展が得られると考えている。

(McCarthy et al 1955)

 1956年7月から8月にかけて、人工知能という学術研究分野を確立した「ダートマス会議」が開催され、その開催提案書の序文に書かれていた言葉です。この提案書で、人類史上初めて「人工知能(Artificial Intelligence)」という用語が使われたとされています。

 それからおよそ60年の歳月を経て、機械学習の進展やディープラーニングの登場とともに人工知能の実用化が急速に進み、いま「第3次AIブーム」が到来しています。

Photo 【図解】コレ1枚で分かる「第3次AIブームとデータ流通量」

 振り返れば、1956年のダートマス会議をきっかけとして、「第1次AIブーム」が到来し、「人間の知能を機械でシミュレーションできる」ようにするためのさまざまな研究が行われました。

 1957年には、いま話題のディープラーニングの原型ともいわれるニューラルネットワークが考案され、翌1958年にはそれを機械に実装したパーセプトロンが登場しています。

 しかし、単純なゲームや迷路の探索程度以上の成果を上げることができず、このブームは終息を迎えます。

 その後、コンピュータは急速な発展を遂げます。ビジネス分野では、1951年、米Remington Randがビジネスコンピュータの先駆けとなる「UNIVAC-I」を販売したのをきっかけに、1964年に米IBMがビジネスコンピュータの普及の原動力となった「System/360」を発表。同年、米DECは商業的に初めて成功したといわれるミニコンピュータ「PDP-8」を発売しています。

 1981年、米IBMが当時需要を拡大していたパーソナルコンピュータ分野に「Personal Computer 5150」を投入、ビジネス分野での圧倒的地位を確立することになります。

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 コンピュータの性能の向上とその普及を背景に、人工知能研究に新たなブームが登場します。「第2次AIブーム」と呼ばれるこの時代に行われたのは、知識をルールや辞書として人間が記述し、それに基づいて知的処理と同等の結果を得ようという取り組みです。「ルールベース」といわれるこのやり方は、やがて特定分野の専門家の知識を記述する「エキスパートシステム」として成果を上げることになります。

 しかし、ルールを記述するのは人間であり、世の中のあらゆる事象を記述することはできず、汎用性を持たせることはできないままにブームの終息を迎えます。

 その後、コンピュータの性能は「ムーアの法則」に従うように急激な向上を果たします。また、1990年代に始まるインターネットや2007年のiPhoneの登場をきっかけとしたスマートフォンの普及により、データの流通量が爆発的に増大、これらを背景に「機械学習」の時代を迎えます。

 2011年には米国の人気クイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」にてIBMの「Watson」がクイズチャンピオンに勝利し、2012年には画像認識のコンテストでカナダのトロント大学のチームがディープランニングで圧倒的な勝利を収めるなどの出来事が注目されました。その後、実用面での応用が急速に拡大、いまの「第3次AIブーム」に至っています。

 今後、IoTの普及によるデータ流通量のさらなる増大、「ムーアの法則」に支えられたコンピュータに変わる新たなテクノロジーの登場により、人工知能の新たな発展の可能性が模索されています。

著者プロフィール:斎藤昌義

book 未来を味方にする技術

 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィールはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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