国内ブロックチェーン関連市場、2021年に300億円規模へ――IDC予測

IDC Japanが、国内ブロックチェーン関連ソリューション市場予測を発表。2021年に市場は298億円規模に成長すると見る。

» 2017年06月14日 11時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 IDC Japanは6月13日、国内ブロックチェーン関連ソリューション市場予測を発表した。市場規模は、2016年〜2021年まで年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)133.0%で伸び、2021年には298億円に達すると予測している。

Photo 「国内ブロックチェーン関連ソリューション市場 支出額予測:2016年〜2021年」 ※2016年は実績値、2017年以降は予測 (出典:IDC Japan, 6/2017)

 市場の構成要素は、ブロックチェーンを基盤にしたシステム構築や、運用のためのクラウド基盤、ネットワーク、ハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービスを想定。ブロックチェーンに関連する現在の支出額を産業分野別にみると、多くの金融機関がPoC(Proof of Concept:概念実証)を行っていることなどから、金融機関の支出額が非金融企業を上回っていると説明する。

 今後は、ブロックチェーンの活用がさまざまな分野へと広がることから、中長期的には非金融企業が金融機関を上回ると予測している。

 ブロックチェーンの主な用途として挙げられるのは、金融の変革のほかに、ポイントやトークン、資産管理、サプライチェーン管理、契約管理、各種の認証、当事者間の直接取引など。例えば、自動車メーカーが部品や製造プロセスをブロックチェーンに記録することによって、販売する車の価値について、より確かな情報を買い手に提供できるという。

 また、車のオーナーが車の利用や修理の履歴をブロックチェーンに記録することで、これを中古車市場で販売する際に、その価値をより正確に伝えることが可能になる。このようなブロックチェーンによる“信用できる価値情報の共有”は、市場における取引活性化や商品価値向上につながるという。

ブロックチェーンの課題は

 一方でレポートでは、ブロックチェーンをビジネス領域に適用するには、まだ多くの課題があることも指摘している。

 仮想通貨の基盤技術として生まれたブロックチェーンには、「処理速度やスケーラビリティ不足」「決済がリアルタイムに確定できない」「データを柔軟に扱えない」といった機能、性能面での課題がある。

 こうした課題については、代替的なアルゴリズムの導入といった取り組みが進んでいるという。また、大規模な運用や長期的なライフサイクルに関する議論が不足していることも課題の1つだという。

 ただし、ブロックチェーンに関する課題の多くは、R&D活動や知見の蓄積によって、今後、急速に解決される見込みだという。

 さらに、ブロックチェーンは、IoTやAIシステムと並び、DX(デジタルトランスフォーメーション)エコノミーやデータ中心社会の中核技術の1つになっていくと予測。ブロックチェーンの活用は、企業の中核システムよりも、周辺システムや新規分野から始まると分析する。

 IDC Japanコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏によると、その理由として、ブロックチェーンは企業内よりも企業間の情報共有でメリットを最大限生かせることや、既存システムのブロックチェーンによるリプレースには高いハードルがあり、現段階では処理速度やスケーラビリティが必ずしも十分とはいえないことなどが挙げられるという。

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