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» 2017年07月06日 08時00分 UPDATE

真説・人工知能に関する12の誤解(2):人工知能に「仕事を奪われる」ことの何がいけないのか? (2/3)

[松本健太郎,ITmedia]

「仕事」が奪われると、なぜ私たちは困るのか?

 私たちが「人工知能」を恐れる理由の1つは、あらゆる自動化によって、仕事に人間を必要としなくなる状況が考えられるからでしょう。私たちは「仕事をする」という労働力の対価として賃金をもらいます。仕事がなくなるということは、労働力を提供する先がなくなるわけで、その対価としての賃金も発生しません。

 お金がもらえなければ私たちはどうやって暮らせばいいの? という疑問に対する答えがないために、人工知能が私たちの仕事を奪う“脅威”に見えるのではないでしょうか。

 しかし、人類の歴史上、これまでなくならなかった職業などごくまれです。鉄道改札員は自動改札機械に代わり、港湾労働者はコンテナに代わりました。機械の誕生により、人が就く職業自体がなくなった例を挙げればきりがありません。機械化で生産性が大幅に向上したのも事実でしょう。

 人間は約200万年前の「石器」という道具の誕生以来、イノベーションとカイゼンが繰り返されるたび、職業は無くなるか、人手が大幅に不要になるか、そういう歴史を繰り返してきたのです。では、彼らが完全に失業してしまったかと言うと、そうではありません。同時に、新たな仕事とそれを網羅する職業が誕生したわけです。

 以下のグラフを見てください。これは総務省統計局が毎月公表している労働力調査の結果で、1953年から2010年までの職業別就業者数を表しています。最新のデータはありませんが、これは2009年に職能の改定が行われて比較ができなくなったことが理由です。

photo 総務省統計局が毎月公表している労働力調査 ※年数の*は沖縄県を含んでいないことを意味しています

 グラフからは「農林漁業関係者」は1961年ごろから大幅に減少したこと、そして「製造・制作・機械運転及び建設作業者」は1998年ごろから緩やかな減少を続けていることが分かります。一方で「専門的・技術的職業従事者」や「保安職業、サービス職業従事者」は増加を続けています。

 つまり、歴史的に異なる産業間(職業間)の労働移動はあったわけで、「仕事を奪われたくないから人工知能には反対だ」と考えるよりも、「人工知能という武器を身につけて仕事に就く」という方が自然な流れだと思います。人工知能によって、今の仕事が“進化”すると捉えることもできるでしょう。

 最近では、勤労しているかどうかにかかわらず、政府(行政)が全ての個人に無条件で一定の所得を支給する「ベーシックインカム(Basic Income=最低所得保障)」という制度の実証実験を行う動きが世界中で起こっています。ある程度の時間はかかると思いますが、AIによって、必要とされる人間の労働力が減ったとしても、それに合わせた職業や社会システムが新たに構築されるわけです。

 そういう時代を迎えるためにも、政府(特に厚生労働省や経済産業省)は雇用調整や社会人教育などに力を入れるべきだと考えます。内閣府主導の未来投資戦略の一環として、「人工知能技術戦略会議」が開催されていますが、議事録を読む限り、雇用問題にはまだ触れられていないようです。

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