SAPが日本で公共事業に注力し始めた。グローバルでのノウハウを活用すると言うが、裏を返せば日本ではこれまで公共分野で苦戦を強いられてきたようだ。果たして“反転攻勢”なるか。
「SAPジャパンはこれまで製造業やサービス業をはじめとした民間の事業が大半を占めてきたが、SAPグローバルでは公共事業がもう1つの大きな柱となっている。そうしたグローバルのノウハウを活用して、日本でも電子行政の取り組みを強力に支援していきたい」
SAPジャパンの内田士郎会長は、同社が先ごろ開いた公共事業への注力に関する記者説明会でこう語った。具体的には、官公庁・地方自治体、防衛業界、高等教育機関を担当する「公共統括本部」を7月1日に新設した。営業から開発まで総合的に対応できる体制とし、当初は15人規模でスタート。事業の拡大とともに増強していく計画だ(図1)。
公共事業として提供するソリューションは、図2のコンセプトに基づいて、「働き方改革」「業務プロセス改革」「データの有効活用」「認知と対応」の4つのキーワードに区分。それぞれに最適なSAPのソリューションとして、働き方改革にはタレントマネジメントシステムの「SAP SuccessFactors」、業務プロセス改革には調達ネットワークの「SAP Ariba」、データの有効活用にはクラウド基盤の「SAP HANA Cloud Platform」、認知と対応にはマーケティング支援の「SAP Hybris」を挙げ、中核にERP「S/4 HANA」を据えている。
また、同社は今回、公共事業として上記のようなソリューションを提供するだけでなく、現状における課題を浮き彫りにしてイノベーションへと導く新たな手法「デザインシンキング」や、これまで150カ国以上で実績を上げてきたSAPの「デジタルガバメント」構築技術もフル活用していく考えだ。
SAPジャパンの佐藤知成バイスプレジデント公共統括本部長は、とりわけデザインシンキングについて、「直近の課題にとどまらず、日本社会の5〜10年後を見据えて何をやるべきか。中長期の視点も踏まえて、公共分野のお客さまやパートナー企業と一緒に考えながら、デザインシンキングを発端にしたプロジェクトをいくつも進めていけるようにしていきたい」と説明した。
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