Microsoftの「AIの民主化」に込められた意味Microsoft Focus(1/2 ページ)

ロンドンで開催されたイベント「The AI Summit」にて、Microsoftは「AI for Earth」という新たなプログラムを発表した。同社は近年さまざまな場で「AIの民主化」をうたっているが、ここでの発表内容も踏まえ、そこに込められた意味を考えてみよう。

» 2017年07月29日 07時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 米Microsoftが、「AI for Earth」という新たなプログラムを発表した。

AI for Earth AI for EarthのWebサイト

 これは、2017年7月12日(現地時間)に、同社が英国ロンドンで開催した、AIに関するイベント「The AI Summit」において発表したものだ。ちなみにこのイベントは、Microsoftの英国ケンブリッジ研究所の創立20周年を祝うイベントでもあった。

 このプログラムでは、Microsoftが200万ドルを投資して、クラウドとAI関連のコンピューティングリソース、テクノロジートレーニング、先駆的プロジェクトへのアクセス環境を提供する。またMicrosoft Researchで、計算生態学の主任研究員を務めてきたルーカス・ジョッパ氏を、主任環境サイエンティストに任命。今後Microsoftは、環境問題の解決に、AIの力を活用することを示した。

 Microsoftのプレジデント兼最高法務責任者、ブラッド・スミス氏は「Microsoftは、地球の持続可能性に、深くコミットしたテクノロジー企業である。自社の業務だけではなく、より良い健全な未来に向けた広範なイノベーションを行うことに責任を負っている」とし、「物理的な世界や自然界における変化の規模とスピードは、新たなソリューションを求めているが、最新の革新的テクノロジーは高額であり、コンピュータに関する専門知識も要求される。そのため、多くの研究者や非政府組織には、手が届かないものとなっていた。Microsoftは、AIを、研究者や組織に提供することで、水資源や農業、生物学的多様性、気候変動に関連した重要課題の解決を支援できる、新たなデータ洞察を獲得できる可能性に大きな期待を寄せている」と話した。

 具体的には、研究者などがクラウドおよびAIのコンピューティングリソースにアクセスするため、補助金による新たな出資制度を設ける「アクセス」、どのようなAIツールが利用可能か、それらのツールをどのように使えるか、特定のニーズにどのように対応できるかといった点にフォーカスした教育の機会を提供する「教育」、AIの能力と潜在性に基づいたイノベーションを行うための支援を行い、先駆的プロジェクトを推進する「イノベーション」の3つの観点から同プログラムを実行する。

 AI for Earthでは、すでに3つのプロジェクトが進行している。

 1つは、正確な環境保護活動を支援するための土地被覆マッピングを実現するプロジェクト。2つ目は、センサーやドローン、データ、ブロードバンドネットワークを活用して、スマートアグリカルチャーを実現するプロジェクト。そして3つ目が、リモート追跡と種の健康の監視をするために、Microsoftにおいて、スマート蚊取り装置の有効性をテストするプロジェクトだ。

AI for Earth Webサイトでも公開されている3つのプロジェクト

 スミス氏は、「地球のために、より健全で持続可能な未来を作るためにやるべき仕事はあふれている。だが、時間は限られており、リスクは高まっている」と指摘。そして、「AI for Earth は、長い取り組みの最初のステップにすぎないことを、Microsoftは認識している。だが、今までの経過を見れば、未来に関して安心できそうだ。この信念を現実のものとするために、現在そして将来のパートナーと協業していけることを楽しみにしている」としている。

 Microsoftでは、今回の取り組みを、持続可能性を世界的に推進するという同社のコミットメントを拡張する活動の1つに位置付けている。

 先進的なAIを開発することができる企業は限られている。その1社であるMicrosoftが、自らが持つAI技術を、地球の環境維持のために提供する意義は大きいといえる。

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