「この結婚は成功する」――Lenovoと富士通が夢見る世界

富士通が、PC子会社「富士通クライアントコンピューティング」の株式56%を中国Lenovoと日本政策投資銀行に譲渡すると正式に発表した。

» 2017年11月03日 08時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

新生FCCLはLenovoと富士通、日本政策投資銀行の合弁会社に

 2017年11月2日、富士通がPC事業を行う富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の株式51%を中国Lenovo(Lenovo Group Limited)に、5%を日本政策投資銀行(DBJ)に譲渡し、FCCLを3社の合弁会社にすると発表した。株式の譲渡は2018年4月〜6月(2018年度第1四半期)をめどに行い、経営の主導権を引き渡す。株式の譲渡価額は、合計280億円(レノボ255億、DBJ25億)になる見込み。

 合弁会社設立後も社名は変更せず、富士通ブランドや開発・製造体制も維持するとのことで、現代表取締役社長の齋藤邦彰氏が引き続き同職にとどまる。

photo 発表会ではLenovoや富士通の代表者が集結した。左からLenovo Group Limited シニアバイスプレジデント 兼 アジアパシフィック地域プレジデント ケン・ウォン氏、富士通 代表取締役副社長 CFO 塚野英博氏、Lenovo Group Limited 会長兼CEO ヤンチン・ヤン氏、富士通 代表取締役社長 田中達也氏、Lenovo Group Limited エグゼクティブバイスプレジデント 兼 CFO ワイミン・ウォン氏、富士通クライアントコンピューティング 代表取締役社長 齋藤邦彰氏

 富士通のPC事業は、2015年にVAIOと東芝との統合報道、2016年10月にはLenovoとの提携を検討しているとの報道を経て、ようやく一つの区切りが付いた形だ。

photo 今回行われたパートナーシップの概要

 同日、東京都内で行われた発表会では、Lenovo Group Limited 会長兼CEOのヤンチン・ヤン氏が「PCは私たちのビジネスで原点にあたり、世界で3番目となる日本市場において、信頼されるブランドとの提携になる。Lenovoの調達力と効率性を、富士通の成長に活用できる。富士通は特にヨーロッパで実績があり、Lenovoにとってもシナジーがある」とした。

photo 合弁会社設立に至った背景と目指すところ

交渉が長期化した理由

 また、交渉が長期化した点について、中国のことわざ「好事多磨」(良いことには、とかく困難がつきものであるということ)を引用して「良い結婚を望むなら、少し待った方がいい。合弁会社はとかく難しく、事前にデータを収集したり考えたりする必要があるが、両社はこの合意に関して満足している。この結婚は成功する」と力を込めた。

 富士通 代表取締役社長 田中達也氏も「お客さまの視点で何が最適か、両社のシナジーが最も効果的になるスキームを両社が本音で議論したから時間がかかった。この提携は、これからが長い」と語った。

photo 両社の強みと、パートナーシップによる創出価値

 さらに田中氏は「富士通はPC部品の調達力や規模の面で課題があったが、長年培ってきた自前の製品開発力と製造体制に加え、世界屈指の調達力を持つLenovoのスケールメリットを活用することで、富士通ブランドのPCを強化し、国内だけでなくグローバルのお客さまに魅力的な製品を届けることが可能になる。最高のコラボと考えており、富士通グループ全体にとっても実に有意義なことになると確信している。また、日本政策投資銀行が持つファイナンスの知見を活用し、ビジネスを一緒に育てることができると考えている」と今回の背景を説明した。

photo 富士通クライアントコンピューティングの強み

 製品の供給体制について、法人向け製品はこれまで通り、富士通から販売パートナーを経由した形と、直販部門による形となり、サポートやサービスも富士通が提供する。逆に個人向けPCは、FCCLから量販店経由か直販によって供給され、サポートやサービスはFCCLが行う。

photo 新体制でのビジネススキーム

 Lenovo Group Limited エグゼクティブバイスプレジデント 兼 CFO ワイミン・ウォン氏は「今回の契約では、両社の有益な協力関係の維持のみ目指しており、数年後に出資比率を変更したり、合意事項の見直したりすることは一切ない」とし、国内の製造拠点は維持していく考えを示した。

 「日本のPC市場は今後もまだまだ伸びるので、新生FCCLではそれを上回る形で実績を残したい」(富士通クライアントコンピューティング 代表取締役社長 齋藤邦彰氏)

photo Lenovo Group Limited ニアバイスプレジデント 兼 アジアパシフィック地域プレジデント ケン・ウォン氏(左)と、富士通クライアントコンピューティング 代表取締役社長 齋藤邦彰氏(右)

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