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» 2018年05月24日 08時00分 公開

【追補編】真説・人工知能に関する12の誤解(19):人工知能が絶対にできないこと――AI研究の難問「フレーム問題」を考える (1/3)

「データがあれば人工知能は正しい判断をしてくれる」。そう思う人は多いですが、一方で人工知能ができないこと、苦手とすることもあるのです。今回は、人工知能を扱う上で重要な難問である「フレーム問題」についてお話しします。

[松本健太郎,ITmedia]

 ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・M・クリステンセン教授が書いた『ジョブ理論』(現訳は『Competing Against Luck』。日本語訳は2017年に刊行)には、私のような“ひよっこデータサイエンティスト”が仕事をする上で忘れてはならない教訓が記されています。

データは、顧客が「なぜ」ある選択をするのかについては、何も教えてくれない

 教授は自身の身長や家族構成などのデモグラフィックを例に挙げ、「今朝、ニューヨーク・タイムズを買うという行動を私に選択させたのは、こうした特徴のせいではない」として、相関関係と因果関係を取り違えてはならないと強く訴えます。

photo さまざまなデータがあっても、それがもとでニューヨーク・タイムズを買ったかどうかは分からない――とクレイトン・M・クリステンセン教授は主張します(写真はイメージです)

 この話を思い出すたびに、「手元にあるデータが世界の全て」だと思い込んで分析するとロクな結果にならないと、身につまされる思いでいっぱいになります。

 苦労してたどり着いたダンジョンの奥にある宝箱には、絶対に強い武器や防具が入っていると考えるのと同じように、データをこね回しているといつの間にか「これが答えだ!」と錯覚してしまった経験は、誰しも一度ぐらいはあるでしょう。「安易に答えを見つけ過ぎだ」という批判はごもっともなのですが……。

 私たちが暮らしている世界は、Excelで表現できる程度のデータ量では説明できません。ビッグデータといわれるようなデータ量でも無理なはず。それなのに、どうして膨大なデータさえあれば、人工知能が正しく判断してくれると考えてしまうのでしょうか? 今回は人工知能が「できないこと」についてお話しします。

人工知能が「できない」こととは?

 そもそも、人工知能はどんな問題を解くのが得意で、何が不得意なのでしょうか。

 東ロボくんプロジェクトを主導した新井紀子教授の著書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』や田中潤氏の『誤解だらけの人工知能』では、人工知能の“弱点”について、「意味が分かっていない」という点を主張しています。

 例えば画像認識の場合、人工知能がトイプードルを認識しても、それが“生きている”とは理解していません。少し角度を変えたトイプードルの写真を「物」であるぬいぐるみと認識することもあります。この2つは命が宿っているか否かという点で大きく異なるものですが、そもそも「命」という概念を教え込まなければ、その両者の違いを理解できないのです。

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