全国の不動産情報をブロックチェーンで共有へ――前代未聞のプロジェクトが動き出した理由希望と課題が山積み?(1/2 ページ)

日本の不動産業界に変革を起こそうとしている6社がある。これまで各企業が蓄積してきた「物件の間取り」「入居状態」「築年数」といった情報をブロックチェーンで共有し、リアルタイムで正確に更新しようというのだ。参加企業は、一体なぜこんな挑戦に打って出たのか?

» 2018年08月07日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
photo 会場に集まった参加企業の代表者たち。左から右へ、全保連の中村大輔氏、ゼンリンの高木和之氏、ネットプロテクションズの高木大輔氏、LIFULLの松坂維大氏、NTTデータ先端技術のシタル・セウェカリ氏

 「ネットで見つけて気に入った“空家情報”にコンタクトしたら、実はもう借りられていた」「同じ物件の広告を複数見たけれど、どうも情報がかみ合わない」といった経験はないだろうか? 不動産業界でたびたび起こる、こうした“情報の混在”をブロックチェーン(分散型台帳技術)で解決し、最新の不動産情報を複数の企業や団体で共有しようと始まった試みがある。それが「不動産共有プラットフォーム(仮称)」だ。

 同プラットフォームは、ブロックチェーンを使って各不動産物件の「住所」「建物名」「部屋番号」「築年数」「間取り」「入居状態」「賃料」「修復履歴」などの情報を共有。いつどこで誰が何の情報を加えたか明確化し、“業界横断型で中立かつ公的なプラットフォーム”として商用化を目指すという。

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 不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULLを旗振り役に、NTTデータ経営研究所およびNTTデータ先端技術、全保連(家賃保証事業)、ネットプロテクションズ(デジタル決済事業)、ゼンリン(地図情報提供事業)の6社が参加する。

 NTTデータ経営研究所は、傘下企業でつくる「不動産情報コンソーシアム(仮称)」の事務局として戦略立案やコンサルティングを担い、NTTデータ先端技術はブロックチェーン技術の検討支援を担当。残りの4社は、それぞれ異なる業務や情報のニーズを基にした試験的なデータ活用を進める。また、不動産関連や電気、ガスなどのインフラ、物流、金融などの各業界から参加企業を募る予定だ。

なぜ、不動産にブロックチェーン?

photo NTTデータ経営研究所の桜井駿氏

 なぜ、こうした試みが始まったのか。2018年7月30日の説明会に登壇したNTTデータ経営研究所の桜井駿氏は、「個々の土地と建物は、それぞれ世界に1つしかない。にもかかわらず、不動産情報は複数の企業に分散し、正確性や網羅性に欠けている。情報をコピーしやすいからこそ、重複した情報もあちこちに散見される。こうした問題をテクノロジーで解決し、さまざまな企業が正確な情報をリアルタイムで手に入れられるようにしたい」と語った。

 情報の更新履歴を鎖のようにつなげていくブロックチェーンでは、一度更新した情報の改ざんや消去が不可能だ。その点が情報の正確性を担保したい企業のニーズに合うことから、活用に至ったという。

 実際の詳しい運用ルールや仕組みは、専門の分科会で検討している段階だ。現在のところ、各物件の情報を一元管理するためのID発行をはじめ、データの更新頻度や連携方法の統一、フォーマットの標準化といったルール策定の取り組みが始まっている。

 NTTデータ先端技術から参加したシタル・セウェカリ氏は、「ブロックチェーンの場合、参加企業が持っているシステムを特に変えなくても、入力用のインタフェースなどを整備すれば情報を共有する仕組みが作れる。また(まだ実現していないが)将来的にはスマートコントラクト(契約の自動化)などの技術を使って情報共有作業そのものを自動化できるといったメリットがある」と語った。

 ただし、メリットが大きい一方、山積みの課題も浮かび上がった。

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