ブロックチェーンのビジネス活用、そのカギは「仮想と現実の架け橋」にあるブロックチェーンの可能性と未来を語る(3/4 ページ)

» 2018年12月03日 08時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

ブロックチェーンのビジネス活用、カギを握るのは「仮想と現実の架け橋」

 まずは、インタビュー前編でも触れたスケーラビリティの問題だ。この問題を解決するために、今世界中でさまざまな研究が行われているという。

 例えば、スケールする新たなチェーンを作ろうと試みる「EOS(イオス)」や「Zilliqa(ジリカ)」、そして「DFINITY(ディフィニティ)」などの動きがある一方、ビットコインでも、送金処理を速くする技術「ライトニングネットワーク」の実装を模索している。この他にも、チェーンを分割したり、処理速度の速いチェーンを作ってつなげるなど、さまざまなアプローチがあるそうだ。

 「スケーラビリティに関しては、世界全体で優秀なエンジニアが注力している状況で、まだどれが主導権を握るのかは分かりません。ただ、今後2、3年で大きく勢力図は変わると考えています」(榎本さん)

 2つ目のカギは、法定通貨と連動し、価格が安定している仮想通貨「ステーブルコイン(安定したコイン)」だ。海外ではドルと1対1で交換できるコインなど、いろいろなプロジェクトでステーブルコインが発行されている。その代表的な仕組みは単純で、発行した仮想通貨と同じ量のドル(などの通貨)が証券の保管機関に預けられているというものだ。価値の担保を中央が行うという、ある意味でブロックチェーンらしくない形ではある。

 これに対して、自律分散型の仕組みも複数提案されているという。例えば、スマートコントラクトを利用し、基準の価格から離れた際に、自動でトークンを発行したり、減らしたり(買い上げる)することでコインの価格を調整する、分散型の中央銀行のような方法なども開発されているという。このように、さまざまなアプローチがあるのも、ニーズが高く、業界内で注目されているからだと榎本さんは言う。

 「仮に自分が何かを販売していたとして、ビットコインで料金を支払われたとしましょう。でもその価値は安定しないので、普通の人は受け取りたくないし、支払いにも使いたくないですよね。しかし、それが実質1円という価値が保証されたら、安心して受け取れて、支払いにも使える。

 私たちは、ステーブルコインがブロックチェーン上の資産やアプリケーションへのゲートウェイになると考えています。法定通貨での支払いが、裏側でステーブルコインに変換され、ブロックチェーン上の支払いに使われたり、さらに裏側のDEX(分散型取引所)を通して他のトークンに変換されたりするような世界です。

 これまでDApps(ダップス:ブロックチェーン上のアプリケーション)を利用するためには、仮想通貨の取引所でトークンを購入し、送金する必要があるなど、ユーザー体験に大きな課題がありました。ステーブルコインをゲートウェイにすることで、ユーザーが特に意識せずにブロックチェーンの世界にアクセスできるようになるとしたら、一気に普及の道筋が見えてくるかもしれません」(榎本さん)

 こうした取り組みについてはまだ始まったばかりで、ある程度の検証期間が必要とのことだが、現状、ドルと対応する「Tether(USDT)」や「TrueUSD(TUSD)」「DAI」といった仮想通貨については、安定した価値が維持されているようだ。

photo ステーブルコインといわれている「Tether(USDT)」の1年間のチャート。多少のぶれはあるものの、ほぼ1ドル付近を保っている(出典:CoinMarketCap)

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