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» 2001年01月12日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン(19):「次世代」は実現するか?〜21世紀、IT業界の俯瞰図〜

[磯和春美(毎日新聞社),@IT]

<今回の内容>

■ ブロードバンドというけれど

■ セキュリティはますます重要に

■ ビジネスはIT依存型に


 新世紀の幕が開き、IT関連業界でも、2000年にもてはやされたさまざまな「次世代」がいよいよ実現する。高速広帯域通信インフラの普及、IPv6の本格稼働、次世代携帯電話のサービス・イン、デジタル放送の本格化……話題に事欠かない21世紀のIT業界、何が進んで何が次の課題となってくるのか、年の初めに俯瞰してみた。

ブロードバンドというけれど

 2000年に始まった「高速広帯域通信」の実現は、2001年になってより本格的に進みそうだ。その象徴となるのが、光ファイバの開放とデータ通信の低価格化だろう。NTTが光ファイバを利用したブロードバンドの通信サービスを2000年12月26日から一部で提供を開始し、さらに光ファイバをほかの通信事業者にも開放することから、一気にブロードバンド通信時代がやってくることが期待されている。

 とはいえ、まだまだ悩みは多い。2000年7月に本格スタートしたNTTのISDN・IP接続サービス「フレッツ・ISDN」は工事に5カ月も待たされる利用者がいたり、サーバのトラブルが続いたりと、「本格サービス開始」というにはお粗末な印象だ。

 いまのところ多くの利用者は「フレッツ・ISDN」に関心を寄せている様子。それというのも、xDSLサービスが2000年末に本格的にサービスを開始したが、一般への認知はまだまだで、すでにインターネットを利用しているケースの多くが「ISDN+テレホーダイ」、あるいは「アナログ回線+テレホーダイ」であり、専用モデムが必要になるなど、新たな設備投資を要求されるCATVインターネット接続よりも、NTTへの申し込みだけで済む「フレッツ・ISDN」の方が利用しやすいからだろう。

 今後、ブロードバンドサービスは確実に普及していくと思われるが、一般家庭での利用を促進するためには、豊富なコンテンツだけでなく、設定・利用が簡便であることがますます重要になってくる。

 同じことが、FWAを利用した高速無線インターネット接続にもいえる。まだ価格も高く、一般家庭向けというよりは企業やオフィスビル向けの無線技術。ブレイクスルーとして注目されているのが、情報家電製品を結ぶ無線技術を制御するプロトコル、Bluetoothだ。2000年末にはヘッドセットなど、具体的な製品も出てきて、今後は携帯電話やPDAなどへの搭載が期待されている。

 一方、2000年8月に利用者が1000万人を突破した「iモ―ド」。携帯電話でのインターネット接続普及は日本独自の流れだが、さらに秋からはデジタルカメラ搭載機器や、メモリをパソコンと共有でき、音楽再生機能などを備えた携帯電話が続々と登場した。2001年はJava搭載のiモ―ドや、5月以降に投入される「IMT-2000」が新たなサービスを提供してくれるはずである。

 ネットワークでは、2000年3月に次世代インターネット接続プロトコルであるIPv6の試験サービスが始まった。数年後の枯渇が予測されている現状のアドレス空間を広げ、マルチメディア・コンテンツも幅広くフォローするもので、「次世代」の技術やシステムは、新世紀とともに矢継ぎ早に現実のものとなっていく。

セキュリティはますます重要に

 多くの利用者が流入してきたインターネットでは、メールによるウイルスばらまきや、Webサイトへの不正侵入がこれまでになく増えた。中でも「ラブレターウイルス」、「MTX」というメール添付型コンピュータ・ウイルスは、全世界で多くの被害を出した。

 日本では2000年1月に官公庁のWebサイトの内容が書き換えられるという事件が続発し、日本のセキュリティ意識の甘さを露呈してしまった。政府は高度情報化社会推進を旗印にIT基本法などを次々に制定しているが、ファイアウォールの設置や組織内部でのメンバー教育の徹底など、今後は企業や政府内でのセキュリティへの対応がより厳しく問われるようになるだろう。

 一般のインターネット利用者も、知らなかったでは済まされない個人情報の流出や個人のパソコンへの被害を防ぐために、さまざまなメディア・リテラシー教育が要求されていることを知る必要がありそうだ。

 「教育」という観点からいえば、デジタル・デバイド解消は政府の役目となってくるだろう。特に国内では高齢者、障害者向けの対策が、また国際的には開発途上国での教育普及がこの1年は大きな課題となってくる。

 政府は2000年12月31日からインターネット利用促進のための「インターネット博覧会(インパク)」を実施しているが、こうしたイベントにどれほどの効果があるのかは分かりづらい。地道な教育促進政策が手厚く行われることがますます重要になってくるだろう。

ビジネスはIT依存型に

 インターネットを利用した電子商取引(EC)は当初、米国でクリスマスシーズンなどに驚異的な売り上げを記録したオンライン・ショップが相次ぎ、「BtoC」こそが主役と見られてきた。しかし、それも2000年からは様変わりし、米国の「eクリスマス」が伸び悩む中、企業間の「BtoB」取引は着実にインターネット上に舞台を移しつつあるようだ。

 特に、2000年5月にオラクル、サンなどが提唱して日本でもインターネット・データセンター(iDC)普及が始まり、ハードウェアだけでなくネットワーク監視、サーバでのWeb運用管理などのソフトウェア面でのサポートも含めた、トータルサービスを提供するビジネスが急速に立ち上がった。

 IT業界は、ドッグイヤーといわれるようにほんの半年で大きく市場が変化する。例えば2000年6月に米マイクロソフトが打ち出した「.NET構想」は、半年前には想像もできなかったビジネスの転換だ。にもかかわらず、それから3カ月後にはIT業界では当たり前のようにソフトウェアをサービスとしてネットで提供する動きが進み、さまざまな企業が複合的なサービスを提供するために合従連衡を繰り返している。

 2000年、日本のビジネスマンの20%、1300万人がインターネットを利用し、インターネットを業務に導入した企業は約94万8830社、全体の9.3%に上ったという(イーシーリサーチ調べ)。2001年はこれまで導入が遅れていた製造業、小売・サービス業でもインターネットを利用したビジネスの効率化が進むだろう。経済の枠組みはますますIT依存型になり、ボーダーレス、タイムレスな企業活動が当たり前になっていく。

 政府はこれまで決められなかった国際間のインターネット決済や税金の問題に決着をつけなければならなくなるだろう。

Profile

磯和 春美(いそわ はるみ)

1963年生まれ、東京都出身。お茶の水女子大大学院修了、理学修士。毎日新聞社に入社、浦和支局、経済部を経て1998年10月から総合メディア事業局サイバー編集部で電気通信、インターネット、IT関連の取材に携わる。毎日イ ンタラクティブのデジタル・トゥデイに執筆するほか、経済誌、専門誌などにIT関連の寄稿を続けている。

メールアドレスはisowa@mainichi.co.jp


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