IBMとMetaが立ち上げた「AI Alliance」は、OpenAIやMicrosoft、GoogleやAmazonが先行する生成AIを巡る勢力争いにおける「第三勢力」になり得るだろうか。記者会見の発言から考察する。
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IBMとMeta Platforms(旧Facebook)が発起人となり、世界の100以上の企業や大学などがメンバーとして参加する国際的なAI推進コミュニティー「AI Alliance」(注)が2024年5月15日、公開シンポジウム「AI Open Innovation Day」を都内で開催した。2023年12月に発足した同コミュニティーの目的は、オープンで信頼できるAIを開発し推進することにある。とりわけ、生成AIのオープンな基盤モデルの実現を目指している。
2023年から急速に利用が広がった生成AIを巡る勢力争いは、「ChatGPT」で先行したOpenAIやMicrosoft陣営がリードし、GoogleやAmazonが対抗する構図になりつつある。そうした中で、IBMとMetaにはAI Allianceによって、「オープンであること」を旗頭に「第三勢力」として存在感を発揮しようとする思惑がありそうだ。果たして、その思惑は実現するのか。参加メンバーはそうした勢力構図の中で、AI Allianceに何を期待しているのか。シンポジウムのキーノートと、その後に開催された参加メンバーによる記者会見から探った。
同シンポジウムではまず、日本IBM副社長 執行役員 最高技術責任者(CTO)兼研究開発担当の森本典繁氏が挨拶に立ち、AI Allianceについて次のように話した。
「AIが進化を遂げているのはAIそのものの技術とともに、膨大なデジタルデータを活用できるようになってきたことや、半導体をはじめとしたハードウェアの発展がある。一方で、これからAIを健全に進化させるには、信頼性や安全性を確保するためのガバナンスやルール作りを進めなければならない。そうした技術革新とガバナンスやルール作りの両面における議論や協力をオープンに進めようというのが、AI Allianceの主旨だ」
続いて、IBMでAI Allianceディレクターを務めるアンソニー・アナンジアット(Anthony Annunziata)氏がキーノートで、AI Allianceの活動について次のように説明した。
「2023年12月に発足したAI Allianceは当初、50超のメンバーでスタートしたが、その数はおよそ半年で2倍になった。今後、AIにおけるオープンイノベーションをどんどん実現したい。そのために技術ベースで重要になるのがオープンソースソフトウェア(OSS)の活用だ。OSSの開発力を生かしたAI活用のエコシステムを広げたい」
図1が、AI Allianceの参加メンバーを世界地図にプロットしたものだ。日本からは東京大学や慶応義塾大学、日立製作所、パナソニック、NEC、ソニー、東京エレクトロン、ソフトバンクなどが名を連ねている。
図2は、AI Allianceの活動における6つのフォーカスエリアと現在取り組んでいるプロジェクトを記している。6つのフォーカスエリアの内容は次の通りだ。
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