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» 2005年01月22日 12時00分 UPDATE

システム部門Q&A(17):健全なEUC推進に適した組織とは? (1/3)

本連載ではこれまで、いく度となくEUC(エンドユーザー・コンピューティング)による情報検索系システムの普及が重要であると説いてきた。今回は、実際にEUCの導入や展開する際に注意しなければならない点にはどのようなものがあるか考え、対策を紹介する。

[木暮 仁,@IT]

質問1

EUCを普及させるためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか?

このシリーズでは、いろいろなところでEUC(エンドユーザー・コンピューティング)による情報検索系システムの普及が重要だと主張されています。当社でもそれを普及させたいのですが、導入や展開の段階でどのようなことに留意すればよいのでしょうか。


質問2

効果のあるEUCにするには、どうすればよいでしょうか?

当社ではかなりEUCが普及しているのですが、業務改善やコストダウンなどにつながるクリーンヒットが出てきません。効果のあるEUCにするには、どうすればよいでしょうか。



定義・効果・留意点

 EUCによる情報検索系システムの普及に関しては、このシリーズのいろいろなところで取り上げてきました。その概要をまとめます。

(1)情報検索系システムとここでのEUC 

 販売システムや会計システムなどの基幹業務系システムで収集蓄積したデータを、ユーザーが使いやすい形式に整理したデータベースとして公開し、ユーザーが任意の切り口で検索加工できるようにした利用形態を情報検索系システムといいます。その代表的なものがデータウェアハウスです。

  EUC(エンドユーザー・コンピューティング)とは、ユーザーが自主的にコンピュータを利用して、自分や自部門の業務に役立てる利用形態です。EUCには、パソコンの利用やグループウェアの利用など、多くの分野がありますが、ここでは情報検索系システムの利用に限定します。

 すなわち、ここでは情報検索系システムとEUCは同義語だとします。これを推進することの効果や留意点については、これまでにも、いろいろな場面で言及しましたが、それを列挙すると、次のようになります。

  (2)EUC推進の効果   

  • 必要な人が、必要なときに、必要な情報を得ることができ、業務の改善・改革に役立たせることができる
  • 情報システム部門への要求が少なくなって情報システム部門に余裕ができ、戦略部門としての業務に集中できる
  • 利用部門の情報システムに関するリテラシーが向上し、情報システムの効果的な活用ができるようになる
  • 情報検索系システムを前提にして基幹業務系システムを設計すれば、基幹業務系システムを小規模に簡素化することが可能なため、開発が容易になるだけでなく、保守改訂も容易なシステムにすることができる
  • 公開ファイル提供方式による情報検索系システムは、データウェアハウスに発展する。これにより、自然と縦割りシステムから統合システムへと移行できる
  • データ体系やデータ構造が明確になり、情報システムが「見える」ようになる。これにより、経営と結び付いたシステム運営ができるようになる

  (3)EUC推進での留意点  

  • 効果を明確に示すことができず、全社的な活動にならない
  • ユーザーが消極的である。情報システム部門の努力が空回りする
  • ユーザーの過度依存症と情報システム部門の没我的な傾向により、個別帳票メニュー提供方式が通常となり、情報システム部門の負荷が増大する
  • ユーザーの過度体裁愛好症が問題。情報を活用することよりも、キレイな図表を作ることに関心が向いてしまう。そして、パソコンを使うことが目的となってしまうなど、目的と手段が混同してしまう
  • 結果として、役に立っているのかどうか分からない

EUCの発展段階

EUCに限らず、新しいことを導入して定着させるには、教祖の時代、使徒の時代、実務者の時代の各時代で成功しなければなりません。

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  (1)教祖の時代  

 EUCはコンピュータ利用の認識革命です。革命を成就させるには、その重要性を認識して、高い知識能力があり、自社への導入について強い使命感を持ち、周囲に強烈なアピールをする教祖の存在が求められます。

 このような教祖を生み出す文化のない環境では、EUCを導入しても、大した効果は期待できません。どうせEUCは時代の流れでいつかはそれなりに普及するのですから、放っておけばよいでしょう。

  (2)使徒の時代  

 1人の教祖が荒野で叫んでいるだけでは、教祖が挫折したり人事異動になったりすると改革そのものが消滅してしまいます。教祖としては、自分の教えに共鳴した者を探し出し、徹底した討論により、使徒に育て上げることが肝心です。

 教祖が重要だと考えている部門から数人を使徒にして、その分野でのEUC利用環境を整備し、使徒が効果的に利用できるようにします。そのプロセスで利用方法を検討することにより、さらに充実した環境を作り出します。この成果を使徒が実感すると、使徒が教祖の教えを伝道するようになり、次第に信者が増大してきます。

 このときに重要なのは使途の数です。使徒の数が少ないと、認知されるだけの勢力にならず、その後の実務者の時代に移ることができません。逆に大勢になると、教祖の教えが伝わらなくなり、教祖が期待していたのと異なるEUCになってしまいます。実現対象にも企業規模にも関係なく、使徒の人数は12が最適だという意見がありますが、どうでしょうか?

  (3)実務者の時代  

 教祖や使徒の活躍により、次第に福音の信者が増大します。すると、経営者や各部門と折衝してEUC推進をオーソライズし、組織化を図ることが必要になります。ところが、とかく教祖や使徒は高邁(こうまい)な理念や革新的な言動が多く、このような古い伝統の信奉者との折衝には向いていません。マネジメントにたけた実務者にバトンタッチする必要があります。その移行が適切に行われると、EUCは急速に全社的に展開します。

 この移行にはタイミングが重要です。あまり長い間、教祖や使徒が中心になっていると秘密結社のようになり、かえって全社的な展開を阻害してしまいます。逆に時期尚早だと、実務者によって表面的な発展はしますが、教祖たちが目的とした教義が忘れ去られ、堕落した利用になってしまいます。これは、使徒の数が少なかったとか、使徒がまだ教義を十分に理解せず、それに沿った布教活動をしなかったなどが原因です。

 また、長い間実務者の時代が続くと、EUCが形がい化してきます。それを打破するには新しい教祖の出現が期待されます。

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