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» 2005年03月22日 00時00分 UPDATE

情報システム用語事典:リアルオプション(りあるおぷしょん)

real option

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 不確実性の高い事業環境下において、経営やプロジェクトが持っている意思決定の選択権や自由度のこと。意思決定者の将来における意思決定や企業の行動変更によって創出されるキャッシュフローを原資産としたオプションである。

 金融工学で使われるオプション価格付け理論を実物資産やプロジェクトの価値評価に適用したもので、実物資産の売却・買収、投資機会における投資の実施・延期・中止といった将来の意思決定(可能性や選択権)、および市場参入・成長の機会、ビジネス環境に対応する企業能力、経営者の判断の多様性や戦略的配慮などが含まれる。

 こうした選択肢の存在や自由度を経済的な価値と見なし、将来の期待利益とリスクを加味して数値化することで、事業評価やリスクへッジ、取引条件の設定などに活用する。リアルオプションの考え方に基づく事業価値・投資評価をリアルオプション・アプローチあるいはリアルオプション価値(ROV)方法という。

 リアルオプションの種類は、いろいろな分類法が提唱されているが、概ね次のようなものがある。

リアルオプションの種類
オプションの種類 内容
延期(タイミング)オプション 環境の好転や意思決定材料の登場まで、意思決定を保留できる
段階(学習)オプション 一括投資するのではなく、段階的に意思決定ができ、状況に応じてプロジェクトの進ちょくをコントロールできる
オペレーティング(拡大・縮小・中断・再開)オプション 生産や販売などの規模を柔軟に変更できる
撤退・廃棄オプション 事業から撤退する自由や権利があり、事業資産の残存価値を受け取れる
柔軟性(転用)オプション 環境の変化に対して、商品の構成を変更したり、複数の供給源や原材料を柔軟に変更できる
成長オプション あるプロジェクトの初期投資が、将来の別の成長機会につながっているなど

 また、広い意味では、石油やトウモロコシ、電力、半導体など市場で取引されている商品オプション、気象(気温)や地震などの自然現象に関するオプション(天候デリバティブなど)、あるいは二酸化炭素の排出権などもリアルオプションに分類できる。これらは狭義のリアルオプションと区別して、コモディティオプションともいう。こうしたリアルオプションはビジネスのリスクへッジ手段として活用される。

 リアルオプションという言葉は、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローンスクールのスチュワート・C・マイヤーズ(Stewart C. Myers)教授が、「Determinants of Corporate Borrowing」(Journal of Financial Economics 5, No. 2, 1977)で最初に使った。1980年半ばごろから、米国で戦略的投資評価に対するリアルオプション・アプローチの研究が本格化し、1990年代から石油・鉱業や医薬品などの産業で利用されるようになってきた。

 日本では2000年前後のITバブルの時代に、IT・バイオベンチャーの高値説明のために援用されたことをきっかけに知られるようになった。

 今日、IT投資プロジェクトの価値評価へ適用する研究が進められている。

参考文献

▼『企業金融と国際競争――国際セミナー』 関西経済研究センター/1992年5月

▼『リアル・オプション――経営戦略の新しいアプローチ』 マーサ・アムラム、ナリン・クラティラカ=著/石原雅行、吉田二郎、中村康治、脇保修司=訳/東洋経済新報社/2001年12月(『Real Options: Managing Strategic Investment in an Uncertain World』の邦訳)


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