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» 2005年04月26日 00時00分 UPDATE

情報マネジメント用語辞典:インフルエンス・ダイアグラム(いんふるえんす・だいあぐらむ)

influence diagram / ID / 影響図 / 影響ダイアグラム

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 意思決定項目と不確定要素、価値基準(評価指標)の相互の関係を矢印で連結した図。各要素間の連鎖的影響関係を示す思考・ビジュアル化ツールとして使われる場合と、各要素に確率分布を与えて定量分析・シミュレーションを行うツールとして使われる場合がある。

 思考・ビジュアル化ツールとしてのインフルエンス・ダイアグラムは、ビジネスや経営などの課題を意思決定項目、不確定要素、価値基準の諸要素に分解して、それぞれの関係を明らかにするもので、課題の構造を分析・把握したり、ビジネスモデルを分析的に記述して関係者間で意識共有を図ったりということに使われる。シナリオ・プランニングにおいて、段階的な意思決定を含むシナリオ構築・分析を行う場合などに利用される。日本のITコーディネータ・プロセスにおいては“ビジネスモデルの図式化”ツールとして利用される。

ALT 簡単なインフルエンス・ダイアグラムの例

 一方、定量分析ツールとしてのインフルエンス・ダイアグラムは、多重決定問題の数理モデルであり、多変量確率分布を有向グラフ表現したものである。ベイジアンネットワークの特殊形――意思決定ネットワーク(信念ネットワーク)に意思決定ノードと確率ノードを付け加えたものと見なすことができ、ベイジアンネットワーク機能を搭載した意思決定支援ソフトでは、ノードに確率変数を与え、厳密な数理モデルを構築することで意思決定シミュレーションを行うことができる。

 インフルエンス・ダイアグラムはもともと、ディシジョンツリーによるモデリングと分析を簡素に行うためのツールとして、1970年代からSRI(スタンフォード研究所)で研究が行われ、研究メンバーのスタンフォード大学のロナルド・A・ハワード(Ronald A. Howard)教授とジェイムズ・E・マセソン(James E. Matheson)博士が1984年に発表した論文「Influence diagrams」で知られるようになった。

 インフルエンス・ダイアグラムとディシジョンツリーは、構造的に“同型”のモデルを示す別の表現形式であり、インフルエンス・ダイアグラムが要素間の構造を示し、ディシジョンツリーはそのディティールを示すものだといえる。意思決定支援ソフトなどでは、これを相互に切り替えて表示することができる。

 伝統的なインフルエンス・ダイアグラムでは3つの記号を使用する。

r5influence_d.gif
意思決定ノード(decision node)
意思決定者が可能な範囲で行為の選択を行う項目を表す。通常、四角形または長方形で描かれる。

r5influence_c.gif

確率ノード不確定ノード(chance node)
意思決定者が直接コントロールできない不確実な要因・事象を表す。通常、円または長円形で描かれる。数理モデルの場合、ベイジアン・ネットワークのノードと同様に確率変数を持つ。


r5influence_u.gif

効用ノード(utility node)、価値ノード(value node)
利益や顧客満足といった意思決定の判断基準・尺度を示す。通常、六角形か八辺形またはひし形で描かれる。数理モデルの場合、親ノードを入力とする効用関数もしくは価値関数を持つ。



 インフルエンス・ダイアグラムはこれら各ノード間の影響関係を矢印で表す。直接的に影響を与えるもの(親ノード)から影響を受けるもの(子ノード)へ矢印を引き、最終的に価値ノードにつなげていく。AがBに影響するというのは、Bの価値に関する信念あるいは期待にAが直接的に影響するだろうということを知っていることを意味する。従って、この矢印は必ずしも因果関係、あるいは材料やデータ、金銭の流れを意味しない。

 なお、提唱者であるハワードは1990年に「インフルエンス・ダイアグラムという名称は誤解を招く」として、確定的ノード(deterministic node)を加えるなどしたディシジョン・ダイアグラムと、レリバンス・ダイアグラムを提唱している。

 定量分析ツールとしてのインフルエンス・ダイアグラムは、最も高い期待利得を示す経路を見いだすことだが、思考ツールとしてのインフルエンス・ダイアグラムは企業や事業の収益構造を理解し、どの要素が収益に影響を及ぼしているのかを把握することだといえる。

 思考ツールとしてのインフルエンス・ダイアグラムを作成するには、まずは価値ノードから描き始め、矢印の流れとは逆向きに要因を加えていく。このとき要因は最初は大まかなものとして描き、単純な図を作っていく方法が分かりやすい。いったん描けたら大まかな要因をさらに分解して、詳細な図を仕上げていく。

 伝統的な(定量分析ツールとしての)インフルエンス・ダイアグラムでは、ティシジョンツリーの変形なので当然だが、フィードバックは認められていない。しかし、思考ツールとしてビジネスモデル分析やシナリオプランニングで使われる場合、システム思考における因果ループ図のような表記を行い、正のフィードバックを探索するという手法が取り入れられている。

 ITコーディネータのITCプロセスにおいてもインフルエンス・ダイアグラムは“正の左回り”に作図するよう指導されている。ITC版インフルエンス・ダイアグラムでは、「意思決定記号」「変動要素記号(確率ノードの相当)」「事業価値記号(効用ノードに相当)」のほかに、「コアコンピタンス記号」(角の丸い四角形で示される)が用意されている。

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