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» 2005年12月28日 12時00分 UPDATE

オフショア開発時代の「開発コーディネータ」(15):中国オフショア開発で日報を書かせる秘訣は? (1/3)

ビジネスの基本ともいえる「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」。しかし、「中国企業はほうれんそうが大の苦手」というのが一般的な見解だ。また、中国人と日本人では「報告」に対する認識の違いなども存在する。今回は、中国人と上手にコミュニケーションを取り、報告させる方法などを紹介する。

[幸地司,アイコーチ有限会社]

中国現地法人では全社員に日報提出を義務付けている?

 先日、筆者のセミナーを受講された方の会社を訪問して、同社の中国オフショア開発の取り組みについて取材しました。日本への留学経験を持つ中国人が経営するこの会社では、かなり前から自社製品を中国の現地法人で開発してきたといいます。

 同社の営業マネージャに中国オフショア開発の課題を伺ったところ、真っ先に「属人性の弊害」を挙げました。

  • 現状の中国オフショア開発は、優秀なブリッジSEに過度に依存せざるを得ないこと
  • 中国人の離職率の高さ
  • 品質管理が難しく、人によって品質意識がバラバラ

 さらに詳しく突っ込んでみると、この会社ではブリッジSEへの過度な依存を避けるために、自社開発した工程管理ツールを用いて工程管理(プロセスマネジメント)を細部まで徹底していることが判明しました。

 また、長年にわたる中国オフショア開発の実績から、中国における労務管理や人事評価のノウハウも充実しているようでした。その中でも特に印象に残っているのが、中国現地法人の全社員に「日報」の提出を義務付けている点です。取材の手を休め、一瞬「えっ?」と思ったものです。なぜなら、筆者は「中国企業は“ほうれんそう(報告・連絡・相談)”が大の苦手」という思い込みを持っていたからです。

 しかし、こちらの会社では工程管理の習慣が全社員に浸透しているため、中国側から不満の声は上がることはないといいます。しかも、日報を提出しないと直ちに人事評価に影響するほどの徹底ぶり。このような話を聞くと、並の日系企業では、中国人ローカルスタッフのモチベーション管理はかなり難しいことが分かります。

 この会社では、日報を書く時間は平均して3分間。これなら社員への負担も小さいでしょう。企業文化にマッチした見事な工程管理ツール導入の成功事例です。

日報を求めたらアクティビティのみが返ってきた

 ところが、すべてのオフショア開発の現場で「ほうれんそう」がうまく機能しているとは限らないのが現実です。

-----Original Message-----

中国拠点の技術者に日報を書かせていますが、中堅スタッフも含め、ほぼ全員が“今日のToDoリスト”を提出しておしまいです。

中には、「昨日の続き」とだけ書かれた日報もあります。

(欧米系企業/中国駐在の日本人マネージャ)

-----Original Message-----

 この連載では、過去に何度か中国オフショア開発の“ほうれんそう”に関する問題を取り上げてきました。先述した日本人マネージャの気持ちを代弁してみましょう。

一流のビジネスパーソンたるもの、

  1. 頭の中は常にプロジェクトの目標を意識すべきだ
  2. ポートには、計画と実態の差異分析、現状評価、対策が必要だ
  3. 日常業務しか記述されない日報は寂しい、不満だ

 日報提出は、一歩間違えると管理コストの増大につながります。そのため、現状では週報を採用する中国オフショア開発の現場が圧倒的に多いのです。ある多国籍企業の日本人経営者は、「レポートは必要ない。レポートに書いてくるようなことは、こっちは頭に入っているからだ。仕事に反映してくれ。ピンと来ないやつは自動的に消滅する」と豪語します。企業文化によって、“ほうれんそう”の在り方は千差万別ですね。

 無駄な管理業務は減らしたいが、かといって、中国の「できました」「レビューしました」「すべて見直しました」を、盲目的に信じるのは避けるべきでしょう。昨今の通信インフラの発達に加え、専用ツールが充実してきたことによって、中国オフショア開発でも“ほうれんそう”の大部分を、ツール化することができるようになりました。成功の鍵は、結果だけではなく途中の作業工程までも正確に把握することです。

  • 現物主義、すなわち言葉による報告をうのみにしない
  • 数値目標や開発基準に基づく定量評価
  • 日中両方に作業履歴を残す
  • 類似見直しの徹底
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