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» 2006年11月21日 12時00分 UPDATE

現地からお届け!中国オフショア最新事情(5):中国ベンダには“嫌いだ”とはっきりいおう (1/3)

オフショア開発に携わっていると、さまざまなトラブルに直面するだろう。今回は、日本人なりのやり方で、そんなトラブルを解決する方法を、現場の最前線の声を基に紹介する。

[幸地司,アイコーチ有限会社]

 今回は筆者が主催するオフショア開発イベントで回収したアンケートの結果を基に、イベント参加者から出てきた現場の最前線の声を2回に分けて紹介します。今回は特に日本人から見たオフショア開発に関するトラブル解決策などを紹介します。

ALT 北京京倫飯店のランチの一品

 筆者がオフショア開発責任者を対象に、初めてセミナーを実施したのは2004年9月のことでした。それ以来、東京を中心に、大阪や名古屋、上海の各都市でオフショア開発関係者を集めたイベントを定期的に開催しています。

 これまでのセミナー受講者は延べ1000名を超えますが、アンケート用紙はすべて筆者の手元に集まる仕掛けになっています。セミナーでは、たまにユニークな意見が出てきます。例えば、かつて上海で活躍していたオフショア開発マネージャに、「日本側が約束を忘れたとき、どうやって催促するのか」と問い掛けた際、その中国人マネージャの回答が会場を爆笑の渦に巻き込みました。

 日本側が約束を忘れたとき、こちらも同じように忘れたふりをします。そして、「こちらが間違っているかもしれませんが……」と、とぼけながら約束の証拠となる議事録を送り付けます。

 今回は、こういったオフショア開発関係者の生の声を、ほんの一部ですがお届けします。これを読むことで、あなたと同じような環境にいる、多くの関係者の本音に触れることができるでしょう。

オフショア開発を始める前の期待値は大き過ぎる?

日本側の期待度は……

 セミナー内で筆者は、日本と中国でオフショア開発の推進に携わっている担当者に現在の課題を聞いてみました。

 例えば、日本側の担当者に「そもそも、なぜオフショア開発が必要なのか?」と聞いたところ、いまでも「コスト削減/原価低減」という答えが大部分を占めます。一方で、「開発要員の確保がオフショア開発の緊急課題」と答える会社も急増しています。組み込み系ソフトなどの専門性の高い分野では、「国内価格より高くなければ、積極的にオフショア発注したい」という意見も珍しくありません。

 ここからさらに突っ込んだ話を聞いてみると、ソフトウェア開発のプロセス改善と設計能力の向上という、日本企業が昔から抱える2つの課題を再認識させられます。こういった意見からは、「オフショア開発をきっかけに自社の体質改善を図りたい」という思惑が見え隠れします。

中国側も頑張っているんです!!

 次に受託側である中国の担当者が日本に期待する声に耳を傾けてみましょう。日本では、オフショア開発の失敗事例ばかりが目立っていますが、実際には、中国側の絶え間ない努力のかいもあって、オフショア開発の成功数は着実に増えています。

 筆者と接する機会の多いオフショア営業担当者は、「中国側がどれほど苦労しているのかを日本人に理解してもらいたい」と口をそろえます。しかし、先ほどオフショア開発の成功が増えていると書きましたが、必ずしもバラ色の世界が約束されているわけではありません。現実には、国内開発と比べて「最高品質でコスト半分」とはいかないのです。

 例えば、本来ならプロジェクト原価に加算されるべき出張費や諸費用が、本社部門に付け替えられているケースがあります。これによって、プロジェクト単体の収支が見かけ上では大幅に向上します。また、いくら中国側の技術力が増したとはいえ、納品されるドキュメントがすべて完ぺきな日本語で書かれているわけではありません。オフショアベンダに完ぺきな日本語ドキュメントを要求すると、製造過程のコストメリットが帳消しされてしまうほど多額な追加費用が発生します。良心的な中国ベンダは、海外発注に不慣れな日本企業に対して、オフショア開発に過度な期待を寄せないようあらかじめ警告します。

着実に自力を付けつつも、二極化する

 ここ1?2年、中国ベンダの組織化が進んできました。オフショア先進国のインドと比べると、まだ足元にも及びませんが、日本の地方ベンダでは到底こなせないような大規模な開発案件でも楽々とこなせる体力も付いてきています。いまでは開発要員1000名を超すオフショア開発ベンダも珍しくありません。その半面、オフショアベンダの二極化も進行しています。

 この連載では、以前から中国人技術者の流動性の激しさを指摘しています。最近では、人材が定着して巨大化する会社と、そうでない会社との差がますます拡大しています。前者は既存顧客との関係を維持し、クチコミによる社内展開だけで年率30%以上の成長を続けています。一方の後者は、新規顧客の開拓に明け暮れます。彼らの最大の関心事は、日本から安定して仕事が流れる仕組みをいかに構築するかに尽きます。従業員数が50名に満たない小規模オフショアベンダでは、社長の個人的な人脈に頼った営業活動に極度に依存しているため、今後の先細りを常に心配しています。

 また、中国に自前の開発拠点を持つ日本企業は、現地スタッフの人事・労務管理に頭を悩ませています。人件費の高騰が最たる要因の1つです。初級プログラマの人件費は大したことはありませんが、対日オフショア開発を経験した中堅以上プログラマの人件費高騰は、日系ベンダの経営を圧迫しているようです。

 人材の長期雇用を前提とした日本企業では、中国人社員の流動性の高さにいまでも苦慮しています。若手プログラマだけならまだしも、幹部候補の流出は日系ベンダ各社をかなり悩ませています。「中国人社員のモチベーション維持・向上」は、日系ベンダに共通する課題です。

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