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» 2007年01月17日 12時00分 UPDATE

ビジネス刑事の捜査技術(12):御社のナレッジマネジメントが役立たない理由―捜査技術の第7条「探索の原点は仮説の立案と検証にあり」 (1/2)

「失敗は成功のもと」と昔からいわれているように、失敗から学ぶことは多い。その良い例がナレッジマネジメントだ。今回は、捜査の技術第7条「探索の原点は仮説の立案と検証にあり」について、原因と結果の関係を探ることの重要性を考える。

[杉浦司,杉浦システムコンサルティング,Inc]

失敗から学ぶ人は限られている

 「失敗は成功のもと」と昔からいわれている。しかし、実際には失敗の連続や連戦連敗といったケースも珍しくない。

 「分かっていても直らないし変えられない」とか、「どう説明しても伝わらない」といった事態は日常茶飯事だ。人はどうしても自分自身の思い込み(よくいえば信念)を固く守ろうとし、人の忠告も目の前の現実も、自分に都合よく意味を変えて理解してしまう傾向がある。こうした執着心がある限り、たとえ目の前に真理があったとしても気が付くことは難しい。昨今の事件で、警察が目の前にいる犯人に気が付かずに見逃してしまったことも同じ理由だろう。

 思い込みにとらわれている捜査ほど、危険なものはない。真実を見抜ける人とは、事実を事実のまま受け入れることができる人だ。失敗は失敗として受け入れて素直に軌道修正できれば、ゴールは見えてくる。仕事も一緒だ。失敗を3度も経験すれば、最後には良い仕事ができるはずである。失敗からは成功するための貴重なメッセージが発信されている。問題はそれを受信しようという意思を持っているかどうかなのだ。

学習は失敗したときに行われる

 われわれが学ぶあらゆるものは、先人が獲得した知恵や知識を体系化したものだ。その知恵や知識もまた、先人が失敗から得た教訓である。人はうまくいっているときからは、何も得ることができない。うまくいったときであっても、反省点を振り返ってみて初めて、教訓を得ることができるのだ。

 思っていたとおりに計画が進まなかったとき、人は修正すべき点を教訓として学ぶのである。もちろん、「初めに計画ありき」であり、何も考えずに行動した人に教訓はもたらされないのは当然である。

 問題は、計画や目標を初めだけ立てて、途中で見直したり修正したりする人が少ない点である。計画や目標は外れたり失敗するためにあるのだ。外れるから修正できるのであり、そこに教訓という学習が生まれる。

 しかし、現実には計画や目標が狂ったり達成できないことを良しとせず、言い訳したり、隠そうとさえする人がいる。計画や目標は仮説の立案であり、仮説が外れた原因を分析することによって、目指すべきゴールの位置を知ることができるのである。先人の知恵とは、過去から現代人のわれわれに向かって発信し続けられているゴールの位置情報といえる。「急がば回れ」などのことわざは、先人の失敗から出てきた真実ではないだろうか。

原点を見失う人に成長はない

 通販やネットショップを展開する事業者の中には、ダイレクトメールや値引き、プレゼントなど、ありとあらゆる集客手段を同時に使ってしまい、売り上げが増えたのはいいものの、何が効いて売り上げが増えたのかが分からなくなっているケースがある。

 この場合、どの集客手段も止められず、結局あきられてしまう事業者が結構多いのだ。新着ニュースもまめに送ってくれるのだが、しょっちゅう送られてくるので飽きてしまい、見なくなったものも少なくない。

 物事には因果関係があり、その因果関係を探ることが捜査の目的だ。因果関係を見失うような無謀な行為は、ビジネスの世界においても日常生活においても、決して幸せな結果を生み出せない。常に「自分が元の位置から、どのあたりまで移動したのか?」を思い描けるように、自分にとっての原点を見失わないようにしなければいけない。

ナレッジマネジメントが役に立たない理由

 企業で導入が進むナレッジマネジメントもまた、失敗から得た教訓を集めたものだといえる。

 ところが、実際には失敗を報告したがらない社員が多いため、役に立つ教訓がなかなか集まらない企業が多いのではないだろうか。それどころか、客観的事実に基づく教訓としてのナレッジを押しやって、自分の思い込みをまき散らすような人すらいるため、蓄積されたナレッジを信頼しない人が増えてしまい、「ナレッジマネジメントは役に立たない」と思ってしまっている経営者も少なくない。

 ナレッジマネジメントを成功させるには、「ナレッジとは客観的事実に基づく教訓であること」「教訓は失敗のときこそ獲得するチャンスがあること」「計画あるいは目標が、失敗という客観的事実としての結果と、どのように違っていたのかを仮説検証することによって教訓が得られるということ」の3点を、全社員に理解させなければならない。

 例えば、「新商品を紹介するダイレクトメールを既存顧客に送信したのに、資料請求率が目標より低かった」という客観的事実があったとすれば、新商品に対する需要が目標より小さかった、あるいはダイレクトメールのアピール力が計画より弱かったという仮説が考えられる。この仮説をヒアリングやアンケートなどで反響分析(検証)することによって、ダイレクトメールの広告表現に問題があったということが分かれば、「今後はそのような表現はしない方がよい」というナレッジが手に入る。

 信用できないWebサイトなどの発信源から入手した“えせナレッジ”を、まじめに苦労して獲得したナレッジとまぜこぜにしてしまう愚かな行為をやめさせなければ、えせナレッジに振り回されて衰退していく企業も出てくるかもしれない。

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