データセンターにおける熱対策を考える間違いだらけのデータセンター選択(7)(2/3 ページ)

» 2007年01月26日 12時00分 公開
[近藤 邦昭まほろば工房]

データセンターレベルでの熱対策

 さて、ラック当たりの冷却能力という話が出ましたので、データセンターでの熱管理についてもう少しお話をしておきましょう。

 データセンターの熱管理においては、冒頭でお話ししたようにさまざまな熱源を対象に、総合的な発生熱量を計算し、排熱設計をします。電灯や作業員による熱も計算の上では重要ですが、これらはデータセンター全体としてみた場合に非常に小さいため、ある程度固定的に考えることができます。一方、最大の熱源はいうまでもなくIT機器です。また厄介なことに、この熱はラックごとに発生しますので、「とりあえず全体を冷やす」という形ではうまくいきません。

 データセンターはこれらの問題への対処で2つのことを考慮します。1つは、ラックの中の熱をどうラックの外に排気するか、そしてもう1つはラックから排気された熱をどうやって処理するかです。

 ラックからの熱の排気は、実に大きな問題です。これはラックの利用者がどのようにラックに機器を設置するかにも大きく依存します。

 ラックからの排気の方法には大きく2種類の方法があります。

 1つは冷風をラック下から噴出し、その圧力でラック上部に熱を送り、ラック上部のファンによって熱を排気する方法。もう1つは、ラックの前面、または背面に取り付けられたファンによって、横方向の風によって熱を排気する方法です。

ALT 図1 冷風をラック下から噴出させる方法では上側に熱がこもりがち

 この2つには、それぞれいくつかの問題があります。ラック下から冷風を噴出する方法の場合、冷風は下から上に流れます。多くのサーバでは、サーバ固有のエアフロー(空気の流れる方向)は前面から背面に設定されています。つまり、ラックの背面側に熱がこもることになります。このような状態で冷風を下から噴出した場合には、ラック前面は熱がこもらないためある程度冷えますが、背面は排出された熱はその部分でこもり、下から押し上げられてくる冷風が十分でない場合に熱はその場でとどまり、行き場所を失った熱はラックの側面を抜けて前面に漏れます。当然、下から噴出する冷風はラック上部で勢いが弱くなりますので、冷風が十分上まで到達しないくらいラックに機器を設置するとラック上部に大量の熱がこもる結果になります。この様子を図1に示します。

 ラックの前面または背面のファンによって熱を排気する場合、エアフローは、ラックの前面から背面、または背面から前面という具合にラック外部から吸入した冷風は一定方向に流れます。一般的に、サーバなどの多くの機器が採用している前面から背面という方向のエアフローが採用されています。

ALT 図2 データセンター内でのラックの配置による熱効果

 この場合、ラック全体として考えると、ラック内部は下部、上部に関係なく一定の冷却能力を示します。しかし、このときデータセンターに設置されているラックがすべて同じ向きに設置されている場合、前列のラックの排熱をその後ろの列のラックが吸い込むということになり、データセンターの部屋全体として考えた場合、一番後列のラックは熱風を吸い込み、熱風を排気するということになってしまいます。この様子を図2に示します。

 このため、このような方式で熱を排気している場合は、排熱するための通路である「ホットアイル」と冷風を吸い込むための通路である「コールドアイル」というように、ラックとラックの間の通路を使い分け、ホットアイルにたまった熱を集中的に処理するという構造をとります。

 もちろん、ここで挙げたものは一般的な例に過ぎません。ケージ(部屋)タイプで提供されるデータセンターの場合は、これらの排熱方法を基本として、さらにデータセンター全体としてどう熱を処理するかを検討しています。これら熱対策は各データセンターごとに独自に検証するなどして設備を敷設していますので、データセンターの担当者から説明を受けてみるとよいでしょう。

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