データセンターとして十分な排熱設計がされていても、無計画に機器を設置したのでは無駄になってしまいます。
特にラックの冷却能力を無視した機器の設置は、ラック内の温度上昇をもたらすだけでなく、ラックから排気される熱もデータセンターが想定する熱量を超えていますから、データセンターの一部、または全部の温度を上昇させてしまい、最悪の場合は隣接する無関係のラックに設置されている機器を熱暴走させるという事態を引き起こす可能性すらあります。
このようなことがないように、以下の点に考慮して機器を設置する必要があります。
1. ラックの冷却能力内で機器を設置する
データセンターでは、基準となるラックごとの冷却能力を必ず把握していますので、まずはこの値を把握し、対応できる熱量の範囲内で機器を設定してください。100V供給のラックで30Aまで使えるなら、おおむね3kWぐらいまで排熱が可能になっているはずです。詳しくは、データセンターの担当者に確認しておきましょう。ラックの設置スペースが空いているからといってむやみに設置すると、熱暴走などの思わぬしっぺ返しがきます。熱の処理はあくまで物理法則ですから、「そこを何とか……」といっても何とかならないのが実情です。
2. ラック内の配線を整える
ラック内に機器が多く設置されてくると、それらを接続するケーブル類も多くなり、どうしても配線が煩雑になってきます。そのケーブル類がラック内のエアフローを妨げる原因となることがあります。ケーブルは特に背面に集中する傾向がありますから、ラックの下から冷風が噴き出すような場合、ラック背面のケーブルを整理しておかないと、ケーブルが冷風を邪魔してラック上部背面が異常に高温になることがあります。
ケーブルはきちんと整理して配線し、左右のラックレールにまとめるなどしてラック中央は空気がきちんと流通するように整理しておきましょう。
3. 巻き込みを考慮する
最近のラックは配線を考慮し、左右のラックレールのさらに外側に少し空いている部分があります。このような部分とラックの機器が設置されていない部分は前面から背面に向けて素通しになっています。多くの機器のエアフローは前面から背面へと設定されているため、背面に熱がこもることになりますが、こもった熱は、このような素通しとなった部分から前面へと流れ出します。これが巻き込みです。
最良の方法としては、このような巻き込みをなくすために、前面と背面に素通しの部分をふさぐ板状のパネルを設置します。ただし、このような対策はほとんど場合行われていません。これは近年のラックの排熱効率がよくなってきているからですが、上記2つの対策をしても、まだ排熱問題が解決しない場合は、このようなエアフローを整える対策を考慮してみるのもよいでしょう。
これで電源やラックの利用方法などの設備関連の話が一段落しましたので、次回はデータセンターの各種サービスと上手な利用方法について話を進めることにしたいと思います。
▼著者名 近藤 邦昭(こんどう くにあき)
1970年北海道生まれ。神奈川工科大学・情報工学科修了。1992年に某ソフトハウスに入社、主に通信系ソフトウエアの設計・開発に従事。
1995年ドリーム・トレイン・インターネットに入社し、バックボーンネットワークの設計を行う。
1997年株式会社インターネットイニシアティブに入社、BGP4の監視・運用ツールの作成、新規プロトコル開発を行う。
2002年インテック・ネットコアに入社。2006年独立、現在に至る。
日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)の会長も務める 。
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