鍵はリーダーの力量と気になるお姉さまの魅力(第4話)目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(4)(3/4 ページ)

» 2007年02月28日 12時00分 公開
[三木裕美子(シスアド達人倶楽部),@IT]

第1回進ちょく会議はめちゃくちゃに

坂口 「以上が次回の進ちょく会議の内容です」

 翌週に行われる第1回進ちょく会議の内容について、坂口はIT企画推進室長である名間瀬への説明を終えた。

名間瀬 「うむ、内容は大体いいだろう。が、少し付け加えてほしいことがある。実は今回のプロジェクトの計画の件だが……。佐藤さんからの指示で、リリースは1年後だ。ただし、ある程度の額までは予算は気にしなくていいそうだ」

 名間瀬の口から出た思わぬ発言に坂口は思わず反発した。

坂口 「1年ですって!? そんな話が、何でいまいきなり出てきているんですか!? そんな短期間に仮に出来上がったとしても、業務に耐え得る品質かどうか……。第一、現場が混乱しますし、当社にとってリスクが大き過ぎます!!」

名間瀬 「佐藤さんからの指示なんだよ。それだけじゃない、西田さんも同じ意見だ。それにいまはスピード開発の時代というじゃないか。重要なビジネスインフラであるシステムの構築に長い時間をかけることの方が会社にとって損失とはいえないか?」

坂口 「それはそうですが……。西田副社長も同じご意見なのですね?」

名間瀬 「とにかく、次回の進ちょく報告では、その辺も加味する形で資料を修正しておけよ」

 坂口はあぜんとした。いくら指示とはいえ名間瀬らしからぬ強引さだ。ため息をつきながら自席に戻った坂口は、無言のままパソコンに向かって資料の修正を始めた。

 そして翌週。

 朝9時の本社20Fの会議室には、事務局の坂口と伊東、天海部長を除く新生産管理システム構築プロジェクトのメンバー、総勢5名がテーブルに着いていた。

坂口 「天海部長は、やはり出席しないことになったのか……」

伊東 「は、はい……。後で内容の報告に来てくれとのことでした」

坂口 「やれやれ……」

 会議が始まった。名間瀬がこれまでの経過説明をした後、いきなり口火を切った。

名間瀬 「1つ、追加で申し上げます。本プロジェクトは1年後の新システムリリースを目指すものであり、そのために、ある程度の投資は惜しまないというのが、プロジェクトオーナーの意向です。皆さんのご協力をお願いしたい」

 続いて坂口は伊東の整理した課題シートを用いて、ヒアリング結果および次回会議までのタスク概略、マイルストーンの説明を行った。

坂口 「以上、私がご説明したとおり、当社の生産管理業務は課題が山積みです。具体的なシステム化の範囲や重点投資分野は、今後検討を進めていく予定ですが、その際には各部署のご協力をお願いいたします。なお、先ほど名間瀬室長より話のあった1年後のリリースの件については、現在検討中でありますが、現時点での課題のボリュームやプロジェクトの推進体制における人的リソースなどを考慮すると、時間的な猶予が必要だと私は認識しております」

名間瀬 「おい、坂口。これはプロジェクトオーナーの意向なんだぞ!」

佐藤 「坂口君、君の意見はつまり、1年では無理、ということかね?」

坂口 「いまの時点ではそう認識しています」

 佐藤は渋い顔をしていた。そして追い打ちを掛けるように坂口に質問する。

佐藤 「無理と簡単にいうが、何か根拠はあるのか?」

坂口 「いえ……。いまの時点で明確な根拠はありませんが……」

 そんな主張が通らないのは坂口も重々承知であった。しかし、上層部以外のメンバーである岸谷や藤木、八島たちにプロジェクトがどのような立場に置かれているのかを理解してもらうため、あえて私見を出したのだ。

岸谷 「しかし、リリースを延長するということは、先日のヒアリングで要請した内容が実現するのが、大分先になるということですか?」

藤木 「製造部としても、早く新システムをリリースして欲しいですねぇ」

坂口 「実現の可否も含めたスケジュールは、今後詳細を詰めることになります」

八島 「情報システム部の要員は、現在でも不足しているくらいで、新システム構築に人手を回せる状況では……」

坂口 「その点も認識しています」

 会議はその後も意見が相次いだ。しかしそれらはどれも課題提起や不満ばかりで、具体的な解決策を提示できる者は誰一人としていなかった。

 伊東は議事録用のメモを取るのに必死で、坂口のフォローをできる状態ではない。2時間に及んだ会議は、何の結論も出せないまま、結局タイムアップを迎えた。

佐藤 「名間瀬くん、いったいどうなっているんだ!? 君がプロジェクトマネージャだろ!」

名間瀬 「申し訳ありません。本日は完全に事務局側の不手際です。次回以降は、室内できちんと認識の擦り合わせをしたうえで会議に臨みますので」

 そんな会話を横目に、坂口は無言で会議室を後にする。

伊東 「坂口さん、お疲れさまでした」

坂口 「あぁ……。あ、議事録よろしくな」

 そういって坂口はその場を去っていった……。

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