どうしたら、しこりなくローテーションができるのか?システム部門Q&A(40)(2/3 ページ)

» 2007年04月16日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]

戦力ダウンをさせない仕組み=転出の主導権を握れ

 このような事態にならないようにするためには、一体どうすればよいのでしょうか? IT部長が課長にローテーションの重要性を説得するというのでは解決にはなりません。その重要性は課長も十分に理解しているのですから。

 優秀なIT部員を失うのですから、戦力ダウンするのは仕方ありません。それを少しでも和らげることが必要です。その点について考えましょう。

 業務が個人に固定しているのがベテランの転出を困難にしている原因です。それを防ぐためには、業務の標準化・可視化が重要であることはいうまでもありません。これについては省略します。

 ある日突然に転出を打診されたのでは、準備ができていないので大打撃になります。これでは、総論としてローテーションに賛成であるにせよ、反対せざるを得ないことになります。

 つまり、「IT部門として、誰をいつどこへ転出させるかを検討しておくこと」が必要なのです。適切な準備期間があれば、業務の後継者を育成することもできますし、当人を転出先に適応しやすい業務に就かせることもできます。

 このような準備ができるならば、誰をどこに転出させる計画があるので、それと引き換えに誰をIT部門に欲しいと人事部に相談でき、IT部門がローテーションでの主導権を持てるようになります。

 1970年代末ころの古い話ですが、筆者はこれに成功した経験があります。私は、部下のAくんを流通部に異動させようと思いました。Aくんもそれを希望していました。当時は、事務処理としての流通システムは整備されていたのですが、いまだに流通コストの削減に結び付く活用までには至っていませんでした。

 そこで、Aくんを半年程度、現行の流通システムの担当にさせて、システムを理解させました。それからAくんは、データを多様に分析し、コスト削減に役立つ資料を作成しては流通部に提出するようになりました。流通部もそれに大きな関心を持ち、共同作業を重ねるうちに、いくつかの有効な対策も出てくるようになりました。

 そして、次の人事異動時には流通部の方からAくんを欲しいと申し入れがあり、第2のAくんを育成するために、優秀なBくんとバーターすることができました。

転出の機会を創出せよ

受入先のニーズを創出する

 Aくんの例では、データの分析加工が流通コストの削減という流通部の最大の課題に効果があることを流通部に認識させ、それができる人材が欲しいというニーズを作り出すことができました。

 企業活動の大部分は情報システムになっており、そのデータをIT部門はよく知っています。IT部門は多くの利用部門と接触しているので、部門をまたがった問題点を検討するのには適した部門です。この特徴に着眼すれば、第3回「社内から必要とされるITスタッフを育成するには」で、IT部門は人材育成部門になるべきだといいましたが、多くの部門に多様なニーズを創出するのは、それほど困難ではないでしょう。

 よく「提案のできるIT部門になれ」といわれますが、何か目的がなければなかなか真剣には取り組みません。具体的なローテーション戦略を掲げると、当人の動機付けにもなり、いろいろなアイデアが出てくるものです。

プロジェクトこそローテーションの機会

 上記の例は平常時でのローテーションでしたが、絶好の機会はITプロジェクトの開始時と完了時です。

 プロジェクトはIT部門と利用部門から編成されますので、互いに他部門の理解が進みます。また、その期間中は元の職場を離れているので、そのまま転出しても元の職場への打撃を和らげる機会でもあります。

 プロジェクトメンバーの編成時には、ローテーションを意図した人選を行うのが適切です。プロジェクトでの計画では、完了のときに利用部門に渡すべき業務を明確にしておきましょう。そして完了時には、単に転出させるだけでなく、転入を考えましょう。

 単にプロジェクトの成功を考えるだけでなく、それをローテーションの機会でもあると考えて対策を講じることも大切です。

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