ザックマンフレームワーク(ざっくまんふれーむわーく)情報システム用語事典

Zachman framework

» 2007年05月14日 00時00分 公開

 エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)(注1)を考えるためのフレームワークで、組織(enterprise)という複雑な構造物を体系的に記述・観測できるように、各要素の範囲や関係を分類・整理したもの。IBMのコンサルタントだったジョン・A・ザックマン(John A. Zachman)が考案したことから、この名が付いた。

 EAにおけるフレームワークとは、EAを設計・構築・評価するためのガイドラインとなるもので、ここに実際の組織の構成要素をあてはめていくことで、構造の整理・分析が行える枠組みをいう。ザックマンフレームワークは、企業階層(関与者)の観点を縦軸、5W1Hの観点を横軸に取った6行6列※のマトリクスで表現される。

※ 最終行の「実際の企業」(functional enterprise)は関与者の視点ではなく、モデルや成果物も例示されていないので、これは数に入れずに「5行6列」と解説される場合もある。

 IBMでビジネスシステム・プランニング(データ中心アプローチの方法論)のコンサルタントをしていたザックマンは、1987年にIBM System Journal誌に「A framework for information systems architecture」という論文を掲載した。ここでザックマンは、建築物や航空機といった大規模かつ複雑な工学的製造物が作り出される工程を引き合いに、情報システムの構築においても戦略策定からシステム開発までの各工程における関与者ごとに“アーキテクチャ”を記述することが必要だと主張した。また、モノを作るには材料(データ)、機能(プロセス)、所在(ネットワーク)の視点で対象を記述することが重要であると指摘、この2つのアイデアを組み合わせた6行3列のマトリクスを示した(上図の左半分に相当)。

 1992年にザックマンは、同じIBM System Journal誌に「Extending and formalizing the framework for information systems architecture」を発表、人員/時間/動機の列を追加してマトリクスを6行6列に拡張した(この文書の中では「Six-column ISA framework=6列情報システムアーキテクチャ・フレームワーク」と名付けられている。なお、追加された3視点については1987年の論文でも簡単に触れられている)。ここまでの段階では、ザックマンフレームワークは論文の表題の通り、「情報システム・アーキテクチャのためのフレームワーク」であり、情報システムの開発と運用を支援するツールであった。

 ザックマンフレームワークは論文発表後、すぐに話題になったわけではなく、1990年代の半ばごろに米国の連邦政府や各省庁、州政府でEAへの取り組みが活発になってから、その“源流”として注目されるようになった。初期のEAはシステム投資のムダを省く手法として登場するが、やがて「組織における戦略とITを連動させる」全体最適の手法へと発展する。その中でザックマンフレームワークも「EAのためのフレームワーク」と位置付けられるようになっている。

(注1)エンタープライズ・アーキテクチャEA

参考文献

▼「A framework for information systems architecture」 John A. Zachman=著/IBM Systems Journal, vol. 26, no. 3/1987年

▼「Extending and formalizing the framework for information systems architecture」 J.F. Sowa、J. A. Zachman=著/IBM Systems Journal, vol. 31, no. 3/1992年


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