連載
» 2007年10月10日 12時00分 UPDATE

新発想の業務フローチャート作成術(5):日本版SOX法対応コストを将来への投資に変える (1/4)

業務フローチャートは日本版SOX法対応にしか使えないものではない。本質を踏まえたフローチャートは、内部統制一般に利用できるほか、業務プロセスの見直しと改善にも非常に有効なツールとなる。連載の最終回として、こうした使い方を解説する。

[松浦剛志(プロセス・ラボ),@IT]

 2009年3月期の日本版SOX法対応に向けて、日本中の上場会社やその関連会社で、大量のドキュメント作成作業が行われている。NRIセキュアテクノロジーズは今年6月、従業員300人以上の企業等を対象にアンケート調査を実施した。その「内部統制に関するアンケート調査結果」によると、有効回答386社のうち83.7%の企業が、今年度に完了を目標とする実施プロセスとして、「業務プロセスの概要把握(業務フロー、関連規程・マニュアルの整理等)」と回答している。

 一方、2004年からSOX法が実施されたアメリカでは、同法404条対応のためのコストや時間の負担が重いという批判が、企業から上がっている。CFOや財務担当上級管理職の協会であるFEI(Financial Executives International)の調査結果によると、SOX法対応のコストは、初年度(2004年)で平均約436万ドル、2年目(2005年)で平均380万ドルであった。(※)

※出典:日本IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社「プロジェクト現場から見た内部統制」(2006年、日経BP社)。そのほか、アメリカにおけるSOX法対応のコスト、その背景については下記を参照していただきたい。

 日本では、アメリカでの試行錯誤に学んだ方策が取られているものの、法対応のためのコストとしては決して小さな額ではないというのが企業の本音だろう。しかしその一方で、一部の企業からは、これを機に業務の標準化、効率化を進めることにより、コストに見合う成果を上げ得るという声も聞かれる。つまり、「法対応のためのコスト」という意識ではなく、投資としてその効果を生み出し得るということだろう。

 アメリカでもSOX法施行後、時間が経過するにつれ、法対応のための文書やそれを利用した内部統制の整備の効果は「やはりあった」という論調も出始めたという。

 実際に、アメリカでのSOX法対応に取り組んだ日本企業からも、既存の業務プロセスの検証、業務の標準化・効率化について効果があった、あるいはSOX法対応の成果を基に推進する方向にあるといった声が聞こえている。

膨大なコストを投資に転換したい

 そもそも、日本版SOX法対応は何のためか? その目的に立ち返って考えてみよう。金融庁企業会計審議会が2007年2月15日に公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(以下、それぞれ「基準」「実施基準」)においては、内部統制の目的として、以下の4つを挙げている。

  • 業務の有効性及び効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動に関わる法令等の遵守
  • 資産の保全

 この4つの目的のうち、特に財務報告の信頼性を確保するための内部統制に焦点を当てたものが、日本版SOX法である。より正確にいうと、日本版SOX法に基づき、経営者による評価・報告と監査人による監査が義務付けられているのが、主に財務報告の信頼性に係る内部統制ということである。

 それ以外の3つの目的は、財務報告の信頼性に関連してくる場合には対象になるが、関連性がない場合には対象外となる。しかし、「基準」「実施基準」においても、4つの目的は相互に密接に関連していることが明記されており、日本版SOX法対応でコストと時間の負担をするのであれば、財務報告以外の3つの目的も同時に実現し、内部統制全般に備えることが理想であろう。

 しかしながら、財務報告の信頼性に係る内部統制に絞っても、経営者による評価・報告、監査人の監査まで完了するまでには、膨大な作業が発生する。実際、先行するアメリカにおいては、前述のように重い負担が発生している。アメリカでは、SOX法以前から内部統制の仕組みが議論され、導入されていたにもかかわらず、である。内部統制の基本的枠組みについて、共通の理解すら浸透していなかった日本では、経営者による評価の前提となる、業務プロセスの文書化だけでも、一から始めることが多く、膨大な作業になるであろう。特に、事業分野、海外も含めた事業拠点数、連結対象子会社数が多い企業にとっては、気の遠くなるような作業といえるかもしれない。2009年3月期までは、内部統制の中でも日本版SOX対応が最優先になるのはやむを得ない面がある。

 筆者のヒアリングによる感触では、8割程度の企業が必要最小限のコストで急場をしのぎたいと考え、残り2割程度が内部統制全般など枠組みを広げて、投資に転換したいというスタンスで日本版SOX法対応をしているようだ。前述のNRIセキュアテクノロジーズの「内部統制に関するアンケート調査結果」によると、「評価範囲は絞る」「評価目的は財務報告の信頼性確保に絞る」という回答が7割になるという。調査対象を考慮すると、筆者の感触と大きなズレはないように思う。

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