アイデアのシーズとニーズを探そうWebビジネスの立ち上げ、ステップバイステップ(2)(1/2 ページ)

新規事業を考えるときは、2つの考え方がある。1つは、事業化の種となるいわゆるシーズに基づくものであり、もう1つは顧客のニーズに基づくものだ。

» 2007年12月04日 12時00分 公開
[大川敏彦,ウルシステムズ]

2つの始まり方

 朝会社について、途中で買ったコーヒーをすすりながら、PCを開くと、平松からメールが入っていた。


平松 いよいよ事業計画策定に入るころだろうと思うのですが、老婆心ですが、最初のアイデア出しで苦労するんじゃないかなと思ってメールしてしまいました。さて、実は、新規事業を考えるときは、2つの考え方があります。1つは、事業化の種となるいわゆるシーズに基づくものであり、もう1つは顧客のニーズに基づくものです。

 シーズに基づくものは、ネット関連でいっても、いまや当たり前となっているWebページや電子メールであったり、ブログやSNSであったり、検索の仕組みであったり、XMLの技術であったり、Ajaxであったりとさまざまなものがあります。ASP、SaaSといったサーバサイドでのサービスの提供形態などもこれに当てはまります。これらを利用して何を実現するかを考えることがシーズベースで新規事業の考えることになります。

 ニーズに基づくものもさまざまがありますが、例えば、飲食店情報を集めたぐるなび、家電の最低価格情報が知りたいという要望を実現する価格.comや、ホテル予約の一休.com、デリバリ情報を集めた出前館など枚挙にいとまがありません。僕の友達は最近独立してスポーツクラブ情報を集めたプレスポなんてものを始めました。どれも自分が欲しいと思っているもの、あったらいいなと思っているものをまとめたようなものです。

 実際に事業・サービスのアイデアは、これらのシーズとニーズを行き来しながら行っていくこともあるでしょう。

 また、前提条件や制約条件というものもあって、今回の例でいけば、マンションなどの不動産の付加価値付けという位置付けなので、全くマンションに関係ないようなサービスを考えるということは意味がなく、事業アイデアを考える前提・制約条件にマンション販売に関係する事業・サービスであるということが当てはまります。この前提条件の下、北尾さんの周りにはどんなシーズやニーズがあるでしょうね。最初のアイデア出しはやはり自分で行うものであり、私からはこれくらいまでしかお手伝いできませんが、頑張ってください。


 平松のいうとおり北尾にとって、いきなり新規事業といわれてもそう簡単に思い付くものではなかった。コンサルタントの平松も最初のアイデアばかりは自分で出さないといけないといっている。それから、平松のアドバイスをヒントに、数日間考えに考えた北尾は、相当に煮詰まってしまったので、ある日の夕方、同期の吉岡を飲みに誘った。

 「企画部門なんてかっこいいよな……。お前、同期の中じゃ一番の出世頭だものなあ」

 設備部門に勤める吉岡は、嫌みのない笑顔でいった。

 「そんなことないよ……。いやあ、実はいま、とっても困っていてさあ、部長から新しいサービスを考えろとかいわれていて、どう考えたらいいか分からないんだよ」

 大してビールも進んでいないうちに、同期ということもあって、素直に自分の悩みをいった。

 「そうか、大変だなあ、新サービスっていったって、そんなすぐに考え付くものじゃないよなあ」

 吉岡は、また屈託のない笑顔を見せた。

 「ところで、吉岡、お前、そろそろ結婚するんだったよな」

 北尾は、湿った話をしても仕方がないと思い、話題を変えた。

 「あ、ああ。まあそうだけど」

 「同じ部署にいる角田さんって娘だろう。いつの間にかって感じだな。でも、お前以前さやかさんのことがどうのこうのとかいってなかったっけ。まあ、さやかさんは無理だけどなあ。あんな美人なかなかいないよ」

 北尾は、社内で1、2を争うさやかのまぶしいワンピース姿を思い出し、ビールをぐいと飲み干した。

 「まあ、理想と現実は……。それで数カ月前にマンションを買って、先月からそこに住み始めたんだけど」

 吉岡は照れ笑いを浮かべながらいった。

 「それ、うちの?」

 北尾はそうだろうなとは思いつつ聞いてみた。

 「まあ、そうだけど。それがさ、マンションを買うと賃貸と違ってさあ、管理組合って結構面倒くさいんだよ。くじ引きで理事長とかを引いてしまったものだから、理事会を開かないといけないし、古い土地柄だから、近くの自治会との会合とか……、あってさあ」

 「へえ……、そうなのか……」

 マンション販売の会社にいてこういうのもなんだが、賃貸マンションに住んでいる北尾は実感がなかった。

 「理事会なんて誰もやりたくないし、仕事が忙しいのに、水曜の夜とかに開くものだから、出席率は悪いし、別に集まらなくても、議論だったらネット掲示板とかでやればいいし、投票とかもそこでしてしまえは十分じゃないのか」

 何気なくいった吉岡の言葉に北尾ははっとした。

 「吉岡、お前、その話もう少し聞かせてくれよ」

 北尾は何かしらの光明を見いだしたような気がした。

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