連載
» 2008年04月03日 12時00分 UPDATE

内部統制時代の会計ソフト(1):会計ソフトが業務改善に効く理由 (1/3)

4月1日、ついに内部統制報告制度がスタートした。これは財務報告の適正性を求めるものだけに、それに対応した会計ソフトも多くの製品が出回っている。だが耳慣れた「内部統制対応」とは具体的にどういうことなのか? 最適なソフトを選んで有効活用するためにも、内部統制と会計ソフトの意義を再確認しておきたい。

[山口 邦夫 (経済ジャーナリスト),@IT]

「内部統制対応」とは何か?

 4月1日、ついに内部統制報告制度がスタートした。対象企業は上場企業とその連結子会社。2009年3月期決算分から内部統制報告書を作成し、内部統制の整備・運用状況について、監査法人による監査を受けることが義務付けられる。

 対象外とはいえ、従業員100人前後の中堅・中小企業も傍観しているわけにはいかない。上場企業から業務を受託している場合、何らかの内部統制整備が求められるといわれており、それも含めると法律の影響範囲はおよそ5万社。現在、これらの企業はすでに内部統制の構築を完了しているか、総仕上げの段階にあるようだ。

 しかし積極的に内部統制に取り組んでいる会社は少ない。大企業の7割は法律を「義務」として受け止め、中堅・中小に至っては、受託先から求められない限り、内部統制に関心すら示さない会社も多いという。

 そもそも、具体的な手続きを示す最終基準が公表されたのは昨年2月のこと。対応方法の分かりにくさや準備期間の短さ、それに各種メディアの喧伝もあって、「日本版SOX法」、「内部統制」という言葉だけが独り歩きしてしまった。進んで取り組む会社が少ないのも、肝心の「意義」が置き去りにされてしまったということなのだろう。

 会計ソフトもこうした状況の影響を受けている。日本版SOX法は財務の適正性を求めるもの。それだけに会計ソフトとの関連性は理解しやすいし、「内部統制対応」といううたい文句も違和感なく受け入れることができる。しかし、「内部統制対応」とは具体的にどんな機能があって、どう有効なのか、きちんと説明できる人は少ない。これも、そもそも内部統制とは何か、きちんと理解している人が少ないゆえだろう。

 そこでこの連載では、まず内部統制の意義を確認しておきたい。それを把握しておけば内部統制とは具体的に何をし、会計ソフトはどう役立つのか、おのずと理解しやすくなるはずだ。ポイントが分かれば、数ある会計ソフトの選択基準ともなろう。

 今回は公認会計士でITコーディネータの資格を持つ仰星監査法人の南成人氏と、長年会計ソフト開発に携わってきた税理士、田中利征氏の2人のプロに話を聞いた。内部統制という観点から、あらためて会計ソフトの意義や有効な使い方を考えてみたい。

内部統制が必要なわけ

 ではまず、内部統制が必要な理由から確認してみよう。そもそも内部統制とは、企業などの内部において、違法行為や不正、ミスやエラーなどが行われることなく、組織が健全かつ有効・効率的に運営されるよう、各業務で所定の基準や手続きを定め、それらのルールに基づいて管理・監視・保証を行うことを指す。

 企業が存続するうえで、こうした内部統制がなぜ必要なのか? 理由は2つある。1つは企業活動に社会的責任を持つため。これは昨今の社会情勢を考えればすぐに理解できよう。

 ここ数年、建設業界の耐震偽装問題、食品の偽装問題など、企業の不祥事が相次いでいる。経営トップが責任を問われ、刑事事件に発展するなど、業務上のミスや不法行為の代償が、かつてないほど大きな時代になっている。最低限こうした事態を防ぎ、企業活動を継続するためには、やはり内部統制の確立が不可欠なのだ。

ALT ピクシス 管理部 取締役/税理士 田中利征氏

もう1つは、自社の経営改善に役立てるため。近年は市場変化のスピードが速く、企業競争も激化している。商品・サービスそのものの魅力はもちろんだが、その実力が拮抗(きっこう)している分、会社の信頼性、効率性といった基礎体力面で差がつくケースも見られるようになった。

その一例として、田中氏は「内部統制を行うと、融資が有利になる可能性が高い」と指摘する。「融資は信用が裏付けとなるもの。特に融資条件が厳しくなっている今、財務の適正性や業務プロセスを客観的に説明できる体制を築いておくことは非常に有効だ。信用力という基盤整備は生き残りの条件でもある」

業務改善に、法対象かどうかは関係ない

内部統制の必要性は逆説的に考えても分かりやすい。田中氏は次のような事態を目の当たりにしたことがあるという。

 ある建設会社の営業担当者が、工期の途中で強度の高い角材に変更するよう発注元から連絡を受けた。ところがその情報が購買部門に伝達されず、当初の角材を使ったまま工事を終了してしまった。その結果、工事を最初からやり直す羽目になり、数千万円単位の損失が発生したというのである。これも内部統制の不備がもたらした失敗例にほかならない。

 企業の規模を問わず、報告・連絡・相談を確実に行っているかどうかが業務の質を決定する。業務フローを精査する内部統制とは、こうした「報・連・相」を徹底させ、継続的な業務改善、利益増加を実現するための「手段」なのだ。

ALT 仰星監査法人 理事代表社員 公認会計士/ITコーディネータ 南成人氏

 一方、南氏は「内部統制とは業務改善そのもの」といい切る。

 「内部統制では、基本的に会計基準に沿った経理処理を行うことが求められている。それは財務の観点から業務フローを精査することにほかならない。現状の業務フローを把握できれば、業務改善ひいては業績を伸ばす大きな足掛かりとなる」

  注目したいのは、まさしくこの2点目だ。社外から融資を受けられるだけの信用力、業績向上を狙うための業務改善。これらは規模に関係なく、すべての企業にとって重要なテーマだ。内部統制はこれらに貢献するものと理解していれば、「直接の法対象か否か」といった基準がナンセンスであることにも、素直にうなずけるのではないだろうか。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -