コンタクトセンター改善では、対応品質よりマネジメントを疑えプロシード、COPC2000の啓蒙・拡大に注力

» 2008年05月15日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 コンタクトセンター市場が年々活性化する一方、センター運用を課題と考える傾向はますます強まっている。IDCジャパンが5月8日に発表した「国内IPコンタクトセンター市場規模」によると、2007年は前年比9.6%増の385億円、2012年には627億円に達すると見られている。この活況の背景にはコンタクトセンターの戦略的活用に対する企業の期待があるが、その効果が思うように現れていないセンターが多いこともまた一方の現実となっている。

 こうした状況を受けて、コンタクトセンターの改善、運用支援を行うプロシードでは、センターのパフォーマンス・マネジメントシステム「COPC2000」の啓蒙に、以前に増して力を入れている。

 COPC2000は、顧客満足度(CS)向上に効果的なオペレーションを行うためのマネジメント手法や指標策定、測定方法などをまとめたフレームワーク。マイクロソフトやインテル、アメリカン・エキスプレスなど、各種顧客サービス、テクニカルサポート、受注管理などのセンター業務を重視してきた企業によって1996年に策定された。

 最終的にセンター業務の効率と品質の両立、売り上げ増大、コスト削減を狙うもので、グローバルでは1400社が活用している。日本国内では東京海上日動コミュニケーションズ、ソニーマーケティングなどが認証を取得している。

米COPC CEOのアルトン・マーチン(Alton Martin)氏

 今回、来日したプロシードのパートナーで、COPC2000規格を管理・運営している米COPC社のCEO、アルトン・マーチン(Alton Martin)氏は、投資対効果が思わしくないセンターが多いことについて、「クオリティ管理の観点を間違えているケースが多いのではないか」と指摘する。

 「顧客満足度や投資対効果が伸びない場合、コミュニケータの対応品質といった表面的な部分を疑いがちだ。しかし真の原因は、コミュニケータの力を生かせない、業務プロセスやマネジメント面にあるケースが多い。センター業務のポイントは大きく分けて、問い合わせ内容を確実に解決する、親身ある対応をする、最終的な解決までスピーディに処理する──の3点にある。これらを実現できる体制になっているか、まずはマネジメントの現状を把握することが大切だ」

 3つのポイントとはすなわち、品質と効率を両立することといえる。一見、これらは相反するものとして捉えられがちだが、マーチン氏は「正しいマネジメントを行っていれば、トレードオフの関係になるものではない」と話す。例えば、確実な対応ができていれば電話応対は1回で済み、余計な時間・コストがかからない。顧客側はストレスなく問題を解決でき、センター側は次の対応にスピーディに移れる。

 「もちろん高度な対応を行うためには、ITツールなどのインフラ、人材、両面において、スムーズかつ効果的に業務を行うためのマネジメント体制が不可欠となる。COPC2000は、そうした根本的な問題解決に対する気づきを促し、改善への具体的な指針を示すものだ。センターの戦略的活用への期待があるなら、自社におけるセンターの目的、位置づけを明確化し、経営に対してどう役立てていくのか、センター運営を単独で考えるのではなく、戦略の一環として再考しなければならない」

 一方、現在はセンター業務のアウトソースも盛んだが、センター業務を「丸投げ」してしまう例も数多く見られる。COPC2000では、アウトソース先の管理業務における重要なプロセス、評価指標などをまとめたベンダマネジメントのためのフレームワークである「COPC2000 VMO(Vendor Management Organizations)規格」も用意しているが、マーチン氏は「インハウスにせよアウトソースにせよ、明確な目標と評価指標を持ち、合理的にコントロールできなければ、利益は期待できない」と強調する。

 こうした姿勢は、ITインフラが進展するほど重要になるだろう。現在、店舗・小売業を中心に、Web、メール、電話など、センターのマルチチャネル化が進んでいるほか、IP化の波を受け、ユニファイドコミュニケーションをはじめとする新技術も登場している。しかしインフラにいくら投資したところで、使いこなせなければ意味がない。企業の窓口が増え、顧客との距離も縮まった分、対応品質の悪さが逆マーケティング効果を招くリスクはむしろ拡大しているといえる。

 マーチン氏は「顧客満足は、いったん失うと取り戻すのが非常に難しい。ITインフラの進展が著しいいまこそ、まずセンターに対する認識を改めたうえで、マネジメントを根本から見直すべきだ」と話す。

 また、COPC2000の特徴として、マネジメントの指標を示すだけではなく、多数のセンター監査経験から得たデータを基に、さまざまなタイプのセンターにおける、運営のベンチマークを示せる点も挙げる。「方法論を示すだけでは理想論に終わりがちだが、ベンチマークを参考にすれば、センター運営の現実的な目標、指標を立てることができる。あらゆるレベルのセンターが着実に改善を狙える」

 マーチン氏はこう述べた上で、「COPC2000を1社でも多くの企業に活用してほしい。コンタクトセンターの重要性が本格的に認知され始めたいま、適切なマネジメントによってセンターのパフォーマンスや、そこで働く人々の地位向上が実現すれば、センターの可能性はさらに広がるだろう」とまとめた。

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