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» 2008年05月29日 00時00分 UPDATE

解決するにはキャリアグレードのNATが必要:2010年の冬には日本のIPv4アドレスがなくなる

[大津心,@IT]

 ジュニパーネットワークスは5月28日、タイ・バンコクにて「APAC J-Tech Forum」を開催。ユーザー提言として、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com) 先端IPアーキテクチャセンタ/担当部長の宮川晋氏が「IPv4アドレスの枯渇問題」に関しての講演を行った。

2010年の冬には日本のIPv4アドレスがなくなる

 宮川氏は、まず日本のネットワーク事情やNTTグループを紹介。NTTグループは、売り上げ920億ドルで、米ベライゾンに次いで世界2位の通信事業者。NTT Comは、運営するプロバイダOCNのバックボーンとして国内に160Gbpsのバックボーンを有し、日本―米国間は160Gbps、米国―欧州は29Gbps、アジア―オセアニアに52Gbpsの国際バックボーンを保有しているという。

 日本全体のインターネット事情では、ここ数年ADSL/FTTH加入者が爆発的に増加したため、世界一のブロードバンド大国になったと紹介。2007年5月にはFTTH加入者が880万人を超え、2010年にはFTTHが2000万人、ADSLが1000万人にまで増加するとした。宮川氏は、「月額50ドル程度で100Mbpsが使える。これはネットワークベンダにとっては、まさにクレイジーな状態だ。しかも、まだ毎年70万人づつ増えていっている。このような勢いでユーザーが増加していけば、常時接続が基本となるブロードバンド回線においてIPv4アドレスが枯渇するのは当然ともいえる」と説明した。

IPv4アドレスの推移グラフ IPv4アドレス数の推移グラフ。2010年後半には枯渇する計算だ

 宮川氏は、「現在の勢いから考えると日本国内のIPv4アドレスがなくなるのは2010年。2010年の冬には確実に深刻な問題になる」と予測した。

IPv4アドレス枯渇問題を解決するためにはキャリアグレードNATが必須

 以前からIPv4アドレスの枯渇を懸念していた日本のキャリアは、すでにIPv6に対応できるインフラを用意している。しかし、現実的に考えると、IPv4アドレスが枯渇するからといって、今後2年間で純粋なIPv6環境に移行するのはユーザーの負担を考えると難しい。

宮川氏案 宮川氏が提案するNATを使ったIPv4環境の概念図

 そこで、宮川氏はIPv4環境をユーザーに提供し続けるための方法として、アクセスコントロールの部分でNATを利用し、エンドユーザーにプライベートなIPv4アドレスを与える仕組みが必要だとした。

宮川氏写真 NTT Com 先端IPアーキテクチャセンタ/担当部長 宮川晋氏

 しかし、この場合、1つのグローバルIPv4アドレスを複数ユーザーで共有しなければならないため、ポート数に限界がある。なぜなら、6万5535個のポートをユーザーで共有しなければならないからだ。もし、2000ユーザーで共有すると、一人当たり25〜30個のTCPセッションしか利用できなくなってしまうという。

 これは厳しい数字だ。例えばGoogle Mapsで米サンフランシスコ周辺を表示した場合、30セッション利用できる状況であれば普通に表示できるが、15セッションだと半分程度しか画像が表示されず、5セッションだと「サーバが見つかりませんでした」というエラーが出てしまう。そのほかの例だと、Yahoo!のトップページで10〜20セッション、iTunesで230〜270セッション、YouTubeで90セッション、楽天で50〜60セッション程度だという。

 宮川氏はこの点について、「画像は画像ごとにセッションを使うので、画像が多いとセッション数も多く必要になってしまう。また、Ajaxを利用している場合も同様だ。iTunesはiTunes Storeでアーティスト画像が大量に使われているため、必要なセッション数が多いのだ。また、写真共有サイトなども同様に多くのセッション数を必要とする。また、昨今はiTunesやAcrobatなどの各種アプリケーションがオンラインアップデートのためにセッションを利用しているので、PCを立ち上げただけでセッションを数多く利用している」と説明した。

 この問題を解決するためには、「キャリアグレードなNAT」が必要だと宮川氏はいう。同氏のいうキャリアグレードNATに必要な要件は、「1万ユーザー以上対応し、1ユーザー当たり100セッション利用可能」「SOHOで利用しているルータのように、基本的にアプリケーションを妨害しないオープンな仕様」「高い可用性」の3点。このようなNATはまだ市場に存在しないという。

 宮川氏は、「早急に作ってほしい。一般的にNATは閉塞的で、余計な通信やアプリケーションを防ぐ傾向にあるが、キャリアで利用する場合、そのような仕様だと「○○のアプリケーションが利用できない」といったユーザーからの問い合わせ対応が大変だ。だから、基本的にすべてオープンなNATにしてほしい」と語った。

 ただし、この宮川氏の提唱するNATを利用した場合でも、Googleのキャッシュがうまく利用できないなど、まだいくつかの問題点が残されているとした。

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