連載
» 2008年06月11日 12時00分 公開

Web 2.0マーケティング・イノベーション(2):クチコミ・マーケティングの秘めた効果とジレンマ (1/2)

ブログやSNSなどを通じた口コミで広がる評判を利用したマーケティング手法、いわゆる「口コミ・マーケティング」が注目を集めている。企業マーケティングでもこれを取り入れた例が増えているというが、果たして本当に有効なものなのだろうか?

[森田進,ストラテジック・リサーチ]

脚光を浴びる「口コミ・マーケティング」

消費者自ら生成するメディア、「CGM」

 インターネットが一般市民・消費者の生活に普及し始めてから、10年前後が経過した。一般消費者のこれまでのWebに対する接し方は、従来のテレビ、雑誌といった情報メディアのインターネット版といった程度のものであり、コンテンツやポータルサイトを丹念に閲覧することである程度その目的は満たされていた(電子メールは用途と技術の点で、別のインターネット技術である)。

 それが、2005年ごろを境にブログなどのWeb2.0関連技法が浸透し始めて以来、一般市民・消費者でも気軽にWebサイト(ブログページ)を立ち上げたり、メールマガジンを発信できるようになった。それにより、一般市民・消費者自ら生成するメディア、いわゆるCGM(Consumer Generated Media)というカテゴリが確立されるようになってきた。

 CGMにはさまざまな可能性が感じらる。1つには個々のブログをネットワーク化し、コミュニティをオンライン上に形成できることである。ブログは情報発信の手段であると同時に、特定のテーマや関心度合いに沿ってコミュニケーションを組織化するための機能を兼ね備え、マスメディア主導のオピニオン〜世論形成とはかなり異なる特性を持った草の根的なメディアとして発展している。

 SNSの場合はネットワークに参加するために紹介が必要な場合が多く、ちょうど昆虫や植物のコミュニティが形成されていくように、親密度が高く、あるテーマについての意識喚起を促しながらコミュニティを形成するため、CGMの発展形といえるかもしれない。現時点でのSNSはまだ完成形ではなく、これからもおそらくコミュニティの新しいモデルを提示し続けていくに違いない。そして、このSNSがもたらしたアイデアの1つが「バズ・マーケティング」や、これと似た概念を持つ「バイラル・マーケティング」である。

バズ・マーケティング

 バズ・マーケティングの「バズ」(Buzz)とは、“ブーン”というハチの羽音でザワついている様子を表す擬声語として生まれた表現だ。転じて、うわさ話が人の口から口へと伝わっていき、ざわめきが感じられるような状況を指している。また、英語のスラングで“Buzz-Ability”とは、アイデアやネタそのものが持つ話題性といった意味を持つ。そして、バズ・マーケティングとは特定の企業や商品・サービスなどについて、ある時点で集積されたうわさやコメントを誘発するマーケティング手法を指している。

 いま、このバズ・マーケティングが業界の垣根を越えて注目を集めている。ビジネスと一般市民・消費者の日常生活(もしくはライフスタイル)の間に橋を架けて、それぞれの領域で発信された情報がマス広告以上の効果でもって伝播(でんぱ)するバズ・マーケティングは、しばらく話題の中心となるだろう。

バイラル・マーケティング

 一方、同様の用語(手法)としてバイラル・マーケティングというものがある。バイラル(Viral=ウイルス性の)という言葉が示すように、ウイルスが次から次へと転移・感染し、拡散していくありさまを模した手法のことである。情報を受け取った人がその情報を紹介・推奨することで、情報がウイルス感染のような勢いで広まっていく仕掛けを目指していることから、「口コミ・マーケティング」と同じものと理解して構わないだろう。

 口コミ伝播といえば昔からごく身近な現象といえなくもないが、かつての口コミではせいぜいが知り合いの輪だけで収束していた。ところがインターネットやメールというツールもしくはメディアが駆使されるようになってからは、不特定多数に一挙に伝播される。こうした伝播増幅への期待感から、さまざまな層で注目を集めており、最近ちょっとしたブームになっているようだ。

 ブームになる前までは、ブランドステイタスを守る意識が強い大企業よりは、どちらかといえば資金に余裕がない中小企業や迅速な意思決定と行動を強みとするベンチャー企業が手軽に取り組める宣伝手法ぐらいにしか思われていなかった。しかし、インターネットなどを通してより正確な情報が入手しやすくなった現在、消費者は一昔前と比べて格段に「賢く」なりつつあり、ネット上の口コミ効果が予想以上の効果を上げてきている。

企業マーケティングにおける口コミ効果

口コミ効果を取り入れ始めた企業マーケティング

 こうした現実を前に、企業もこれまでの認識を改めつつある。すでに情報の流動化と迅速な顧客対応がマーケティングの命となっている以上、企業のマーケティング活動においてもネット上の口コミ効果の効果的な導入が重要な課題となってきている。すでに一部の大手企業では、バイラル・マーケティングや口コミ・マーケティングを戦略の柱とするようになっている。

 これらのブームの背景として、テレビCMや新聞広告をはじめ、これまで主流とされてきた広告手法に限界が見え始めており、従来型のマーケティング手法の殻を破る斬新な手法に関心が向けられていることが挙げられるだろう。しかし、少し皮肉を込めていわせてもらえば、こうした口コミ・マーケティング自体が、Web 2.0の世界に早くから参加していたブロガーやアーリー・アダプター、インフルエンサーらの自作自薦による自己言及的な働きでバイラルに広まっていったという側面もあるだろう。

 広告代理店や広告プロバイダなどは、ブロガーやアーリー・アダプター、インフルエンサーらと連携を取りながら、口コミ現象に着目し、そこに意外性・話題性・情報性といった差別化された付加価値を得ようとしている。また出版社などでも、口コミで爆発的に広がった成功例をネタにした書籍を企画・発刊し、比較的良い売れ行きを上げている。

用語の定義に混同も

 ときにはバズ・マーケティングとバイラル・マーケティングとは意味・手法があまりに似通っているため、混同されて使われていることも多いようだ。特にWebマーケティングの世界では混同して理解されるケースが目立つ。本来のバズ(マーケティング)は、顧客・市民を引き付けるアイデアやネタそのものが持つ話題性の振る舞い方にフォーカスするものであり、一方のバイラル(マーケティング)の方は、アイデアやネタの種まきをした後で、それが多段階に渡ってどのように拡散していくか、あるいはその拡散を促進させるための仕組みを指している。

 ビジネスの世界では、こうした「言葉の定義」そのものが実際の適用・応用を試みる際に重要視されることが多い。たかが言葉の意味とはいえ、何となく理解したつもりのままあいまいな定義で周囲に伝播させていくと、ちょっとした違いがいつにまにか独り歩きして拡散し、余計な誤解や副作用をもたらしてしまうこともある。

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