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» 2008年06月20日 00時00分 UPDATE

ベリングポイントが自社プロセスを紹介:“とりあえず”が通用しなくなる「工事進行基準」の世界

[垣内郁栄,@IT]

 システム構築や受託ソフトウェア開発などのITサービス業界は「とりあえず」が通用する業界だ。要件が明確でなくても「とりあえず」開発を始め、要員が足りなくても「とりあえず」プロジェクトは続く、ユーザー企業への請求額が決まっていなくても「とりあえず」、納品する。しかし、このような「とりあえず」を許す業界の一部の体質は2009年4月以降、変わらざるを得ないだろう。開発の進捗管理が厳密に求められる工事進行基準の原則適用が始まるからだ。

 工事進行基準の基礎や影響、対応については以下記事を参考。

 ベリングポイントのシニアマネジャーで公認会計士の山田和延氏は6月20日の説明会で、ITサービス企業が進行基準を適用する上での課題と対応策を説明した。ITサービス企業にとっての課題は「プロジェクト管理」「原価管理」「契約形態」の3つのポイントで説明できる。

poc01.jpg ベリングポイントのシニアマネジャーで公認会計士の山田和延氏

 プロジェクト管理では、成果物の最終形が目に見えないソフトウェア開発の難しさが課題になる。目に見えないために進捗を正確に見積もることができず、進行基準の適用が揺らぐ可能性がある。山田氏はプロジェクト開始前にITサービス企業側とユーザー側がどのような成果物を作るのかきちんと合意することの重要性を説明した。「とりあえず作ってしまう」は通用しないのだ。どうしても成果物を決定できない場合は、「少なくとも要件定義契約と開発契約を分離して進捗度を分かるようにする」ことが重要と指摘した。

 進捗度をきちんと把握するにはそれぞれの工程の品質管理が重要になる。山田氏はWBS(work breakdown structure)の作成と、可能なら、EVMS(earned value management system)などのプロジェクト管理手法を用いることを勧める。プロジェクト管理を厳密に行うことで、「プロジェクト・マネージャによって当たり外れがあるということがなくなる」という。

赤字プロジェクトが減る

 原価管理では、標準化がポイントになる。各ITサービス企業はこれまでの経験をもとに、小さな開発単位ごとにノウハウを標準化することが重要になる。この標準化されたノウハウがたまってくれば、新しいプロジェクトを行う場合でも、工数の見積もりが容易になる。後々に大幅に修正される「とりあえず見積もり」では、進捗の正確な把握はできない。また、進行基準では開発途中の収益総額、原価総額の見直しが必要になることもあるため、修正方法や社内の承認体制の整備が必要になる。

 原価管理では赤字プロジェクトへの対応も必要だ。厳密なプロジェクト管理が求められる進行基準では、赤字プロジェクトが減ることが予測される。山田氏は「赤字プロジェクトの大きな要因は計画をきちんと作っていないこと」と指摘し、原価見積もり、収益率について社内で承認体制を構築することが求められると話した。

とりあえず開発スタートは「まずい」

 契約形態はITサービス業界で「とりあえず」が多い分野だ。山田氏は「金額や納期が事後的に決定される」「ハードウェアやソフトウェア開発、保守サポートの一式契約」「正式契約前にプロジェクトをスタートさせる」などの「とりあえず」を指摘した。しかし、決算期ごとに売り上げを計上する進行基準では契約が鍵になる。契約をしっかりと結ばないとユーザー企業からの支払いが確実にならないからだ。そのため、このような「とりあえず」は「今後はまずい」(山田氏)ということになる。

 契約についてはテンプレートを作成して契約締結に必要な条件を明確にすることが重要という。また、ハードウェアやソフトウェア開発、保守サポートと売り上げ計上のタイミングがばらばらになる一式契約は基本的には行わず、それぞれの契約を分ける必要がある。正式契約前のプロジェクト開始もNGだ。どうしても契約前にプロジェクトを始めるには社内の厳格な承認を得る必要がある。

進行基準はユーザーにもメリット

 進行基準はユーザー側の「とりあえず」も通用しなくなる。契約を行う前の「とりあえずスタート」ができないのはもちろん、要件定義を含めた“丸投げ ”も不可。進捗度合いに合わせてITサービス企業側から支払いを要求される可能性が高くなり、事前の金額決定も不可欠だ。ただ、進行基準の適用は、プロジェクトの進捗が分かったり、成果物についてイメージが明確になる、納期が明らか、契約金額が適正になるなど、ユーザー側のメリットが多いのも事実だ。

 「とりあえず」を徹底して排したシステム開発とはどのような内容か。その1つの例がベリングポイントが社内で行っている管理プロセスだ。米国本社が上場しているベリングポイントは日本法人も進行基準で開発を行っている。山田氏よるとプロジェクト提案前から管理のサイクルはスタートする。提案前の要員確保や受注前の社内審査、契約書の審査など社内の承認体制が整備されている。開発が始まっても月2回の工数報告のほか、月1回の損益見通しの報告などがある。ユーザーへの請求は毎月行うという。

poc02.jpg 工事進行基準に対応したベリングポイントの管理プロセス(クリックで拡大します)

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