CIOの仕事が経営的なものへ変化してきている〜IBM米IBMのCIOが同社のITビジョンを説明

» 2008年10月29日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 日本IBMは10月29日、報道関係者向けの説明会を開催し、米IBMのバイスプレジデント兼CIOであるマーク・ヘネシー(Mark Hennessy)氏が同社のITビジョンについて説明した。

CIOには“CEOの戦略を支える役割”というチャンスが訪れている

 ヘネシー氏はIBM入社以来販売やマーケティングなどビジネス分野を歴任、日本にも2年ほど勤務していたという。そして、2007年7月から現職だ。

ヘネシー氏写真 米IBM CIO マーク・ヘネシー氏

 ヘネシー氏は、「まさかいままでビジネス分野を歩んできた自分がCIOになるとは思っていなかった。しかし、いまの時代は、CIOに求められる役割がユーティリティマネージャから戦略的な人員へと変化してきている。そのため、自分のような経歴の者が選ばれたようだ」と分析した。

 また、同社がCEOを対象に行った調査によると、「経営戦略とITの融合」について80%が重要だと回答したものの、実際に「融合できている」と答えたのは50%以下だったという。また、「CIOは経営層の一角である」という認識も強くあるとした。この点についてヘネシー氏は「いまやCIOには『CEOの戦略を支える役割』という大きなチャンスが訪れている」とコメントした。

データセンターを155個所から5個所へ、3900台のサーバを30台に集約

 実際、米IBM CEOのサミュエル・パルミサーノ(Samuel J. Palmisano)氏は、今後のCIOが目指すべき目標について、「企業統合の実現」「長期的な売上成長をけん引」「イノベーションの活性化」「将来を担うリーダーの育成」の4点を挙げたという。

 ヘネシー氏はこれらの4点のポイントを説明。まず、「企業統合の実現」と「長期的な売上成長をけん引」については、同氏やIBMの取り組みを例に解説した。IBMが企業統合に向けてまず行ったのは「CIO機能を集約し、ビジネスプロセス変革をリードすること」だという。実際同社では10年前に、全世界128個所や事業所に分かれていたCIO機能を米国本社に集約した。

 そして、IT機能を統合するために、データセンターを155個所から5個所へ、レガシーアプリケーションを1万6600個から4700個へ、そしてネットワークも合理化し、管理会社を1社に絞ったという。この結果、5年間でITコストを26%削減できたとした。また、ヘネシー氏がCIO就任後の2007年8月には仮想化を推進することを決め、IBMが保有するサーバの25%に当たる3900台のサーバを仮想化を利用することで30台に集約した。

 アプリケーションサービスも再定義し、アプリケーションポートフォリオを合理化したほか、アプリケーションファクトリーを構築した。アプリケーションファクトリーとはアプリケーション構築手法の1つで、大きなプロセスを小さな複数のプロセスに分けることで迅速な開発を実現。従来と比較して開発期間が20〜50%短くなったほか、欠陥やバグの発生数も10〜20%削減できたという。

 「イノベーションの活性化」では、社員を年代別に「伝統主義者(Traditionalists)」「ベビーブーマー(Baby Boomers)」「X世代」「Y世代」の4世代に分類。それぞれに合ったワークスタイルを提唱しているという。また、Web 2.0技術を利用したさまざまなツールを用意。アイデア募集やコラボレーションなどに役立てているとした。ヘネシー氏は、「社内Wikiは20万人以上が利用している。コラボレーションツールはまずは社内で活用し、現在ではパートナーも交えたコラボレーションを実現している」とした。

 「将来を担うリーダーの育成」について、ヘネシー氏は「ビジネスとテクノロジの両方を理解していることが重要」と強調。実際IBMでは、技術重視だったエンジニアをビジネス部門へ行かせることでビジネスの難しさやニーズを理解させたり、逆に営業マンにIT部門を経験させることもあるという。「そうすることで、ビジネスとテクノロジの両方の感性を持った人材を育成できるようになってきている」(ヘネシー氏)と述べた。

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