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» 2009年03月16日 12時00分 公開

進化するCIO像(7):CIOは、ITをものにすべく努めよ (1/3)

料理に例えればIT技術は素材である。一流のシェフが顧客の好みやオーダー、さらには季節や体調を考えて料理を作るように、CIOは自社や市場の状況を見据えつつ「素材」を選び抜き、真に効果的で誰にでも扱いやすい“システム”を組み上げることが大切だ

[碓井誠(フューチャーアーキテクト),@IT]

効果的で、誰もが扱いやすシステムを組み上げる

 第1回『「CIO」という固定観念から、自らを解き放て!』では、CIOの重要な役割の1つとして「IT獲得手法と活用能力」を挙げた。その理由は、「ITは“素材”のままでは使えない」ためである。システムの形へと組み上げて、業務に使えるようにすることはもちろん、自らの企業戦略や現場の問題解決に役立つよう、最適化する能力もいる。

 また、第2回『時代の変化から、CIOとしての役割を知る』で述べたように、「売れ筋は外にある」という考えを持って外部の革新を見出し、効果的に内部に取り込むことも重要である。そして、IT活用の目的が業務改革にあることを考えれば、人間系とシステム系の連動によって、初めて効果が出ることも重要なポイントである。

 さらには、IT活用が社会や生活にくまなく広がっていることを考えると、IT活用が現代の基本的能力として誰の身にも定着するよう、「IT活用能力」に標準的、汎用的な広がりを持たせることも重要である。

この「IT活用能力」とは、IT機器の操作を中心に語られる、いわゆる「ITリテラシー」のことではない。逆に、「ITリテラシーを不要とするシステムデザイン能力」のことをいっている。つまり「使う側に、使いやすさと、効果、効率を提供できるITをデザインする能力」が重要であり、そうした能力によって作られたシステムが企業、社会に広く浸透していくことが大切だ。

 私は、CIOとはレストランのシェフと同じだと思っている。シェフはさまざまな素材の中から顧客の好みを考え、顧客のオーダーに応じて、また、ときには自ら旬の味覚や新作料理を調理して提供する。新たな素材や旬の食材を見極めるとともに、顧客の顔を思い浮かべ、体調や季節を考え、ときどきのもてなしを込めて調理に腕を振るう。

 つまり、「素材」とはITそのものであり、「顧客」とはビジネスであり、「シェフ」とはCIOおよびシステム構築に携わるわれわれである。

 こう考えると「ITをものにする」とは、素材探しやその見極めをする能力を基に、ビジネスの成功に向けて、いかに効果的なシステムを「ソリューションとして提供するか」であり、IT活用とは「ITとシステム、ビジネスを一体で考える中で、もっとも扱いやすく効果的な形で、ユーザーに浸透していくべきもの」だと理解できる。

セブン-イレブンが「ITをものにした」取り組み

 では「ITをものにする」とは具体的にはどういうことなのか、セブン-イレブンの事例を紹介しよう。

 図1は、1978年から2001年までのセブン-イレブンでの5次にわたるシステム再構築の流れを整理したものである。2004〜2006年には第6次システムが導入されているが、これは仕入れ伝票の廃止と電子マネー、ポイントサービスを除けば、アプリケーション機能は第5次システムを引き継いでおり、光ブロードバンドや店内無線LANなどでシステムインフラを大幅に強化したシステムへと発展させたものである。

セブン-イレブンが「ITをものに」してきた軌跡 表 セブン-イレブンではシステムの再構築を繰り返し、継続的に「ITをものに」してきた。単に、革新的な技術、機能を積極的に取り入れてきただけではなく、ビジネス、システム、ITを常にひも付けて考え、ビジネスの場で「誰もが使いやすいシステム」を目指してきたことが最大の特徴だ(クリックで拡大)

 表は、横軸が「店舗システムの再構築を中心としたシステム再構築の流れ」を示している。第1次、第2次再構築では、発注、物流の改善と情報活用の始まりを中心に、いずれも日本初の本格的オンライン発注と、全店POSシステムの導入を行っている。第3次システムでは情報活用の本格化と取引先との生産・物流体制の改革を進めるため

に、店舗用16bitパソコンの開発や、取引先総合システムの開発に力を注いだ。また、第2世代のPOSレジスターの開発では、レジカウンターでのカウンター越しの顧客とのコミュニケーションの邪魔にならぬよう、レジの高さを徹底的に低くするデザインを行っている。

 第4次システムでは、売り場発注端末であるGOT(グラフィックオーダーターミナル)や、バーコードスキャナターミナルを開発し、発注時の売り場での情報活用や、納品された商品の検品、返品、廃棄、価格変更などをバーコードスキャンで行い、正確性と省力化を高める仕組みを導入、店舗の情報化と省力化を大きく進展させた。

 そして、第5次システムでは、“オープン・リアルタイム経営”に向けたシステムインフラの整備が整い、ATMサービスやeコマースなど、ITを活用したビジネスによる新たな成長の道が開けている。店舗システムやATM、クライアントPCはWindows OSに統一し、24時間安定稼働の実現、オンラインメンテナンス、マルチメディアサービスなどを支えるミドルウェアやアプリケーションも各システムで共有されている。

 一方、図1の縦軸は、「ビジネスとシステム、ITが一体で推進されている」ことを示している。前述のように、「ITをものにする」とは、新しいITの開発や組み合わせにより、「誰にでも使いやすいシステムを組み上げること」である。図1下段のIT・技術開発の欄には、そうした“扱いやすさ”を確保すべく、それぞれの再構築の際に新たに開発したITシステムや、日本で初めて本格的に活用した事例をまとめている。

 店舗システムについては、第1次システムの当時から、ハードウェアも含めて、すべてオリジナル機器として開発し、最適化を図ってきた。パートナーメーカーに支えられ、「ないものは作る」精神で開発を進めてきたが、幸いこれらの新技術は流通業界の標準的なシステムとして、その後幅広く活用されて行った。

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